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「……はぁ…」
「ルナ様、またため息でございますか……?」
「っ、キャンディ、さん……申し訳ありません……」
城の書庫で本を手に取っていたところをメイドのキャンディに見つかった。
キャンディとはすごく仲が良かった。
俺がエリックに片想いをしていたとき、キャンディとディランはよく相談に乗ってくれた。
ドレスを着てみたりしたこともあるし、キャンディに頼んでメイクをしてもらったこともある。
エリックは女が好きだったから。
結局、その時は俺の事を好きでいてくれて、エリックは我慢するのに必死だったらしいけど。
「……ルナ様……あの、私……」
キャンディは最近、俺に何かを言おうとしては黙り込んでしまう。
「……どうかしましたか…?あ、敬語のことなら……大目に見てください。」
「あ……あの、そうではなくて……」
キャンディは、何かに迷っていた。
悩みでも、あるのか?
「……あの、何か悩みでも?俺でよければ……」
話を聞きますよ、と言おうとした時だった。
「キャンディ、何をしている。」
冷たい声が聞こえた。
「か、カイ執事長…!」
カイは、エリック付きの執事で、この城の使用人をまとめている。
「……アリエル様がお呼びだ、遊んでいる暇などないぞ。」
冷たい目を向けられたのは、俺だった。
「あっ、えっと……はい。今参ります。」
チラッ、とこちらを見たキャンディから逃げるように、書庫の奥に行く。
本を読んで忘れよう。
そう思い、無理に高いところに手を伸ばして、足を捻った。
「……痛い。」
ホコリだらけの床に座り込んで、俯く。
足首に涙がぽたりと垂れた。
痛みは、少しも残らなかった。
*
胸がざわざわする。
ルナ様の顔を見ていると、なにかを言いたくなる。
でも、それは言葉にならなくて、いつもいつも口ごもってしまう。
ルナ様は、エリック様の同情を誘って城に入り込んで、アリエル様を傷つけた。
けれどお優しいエリック様とアリエル様はルナ様を追い出すことはしなくて、そして側室という地位についている。
なんだろう、この違和感。
ルナ様と話していると、ルナ様がそんなことをするように思えない。
あれ?
アリエル様は、なんで傷ついたんだっけ……?
ルナ様に、なにを、されて。
アリエル様は、ルナ様に…なにを、されて?
モヤがかかったように思い出せない。
ルナ様が、誰かを傷つけるなんてこと、するように思えないのに、肝心なところが記憶にない。
私の、勘違い?
勘違いじゃないとしたら、なに?
「キャンディ。」
アリエル様に名前を呼ばれる。
今までの思考は、霧散した。
「あの子は、どこなの……?」
「ルナ様ですか?今は書庫にいらっしゃいましたが……」
「……そう。エリックの手前、あの子をそばに置いてあげてと、言ったけれど……」
目を潤ませるアリエル様。
その手は震えていた。
「やはり怖いわ……私ってダメね。」
無理やり微笑んだアリエル様。
頭の中にあった違和感は、吹き飛んだ。
「いいえ、アリエル様。あなたはお優しい方です。エリック様に相応しいお方です。自信をお持ちになってくださいませ。」
「……ありがとう、キャンディ。」
こうしてまた、『日常』が繰り返される。
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