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「サンディー、おいで。」
サンディーが来てから、ルナ様は随分明るくなられた。
よく笑うようになったし、サンディーと遊ぶために庭にも行くようになった。
それと対称的に、アリエル様は何か焦っているように見えることが増えた。
最近では、ルナ様がアリエル様を傷つけた、というのが我々の勘違いなのではないか、と思い始めている。
ディランやキャンディも同じように思っているらしく、違和感を感じていた。
ルナ様は優しい方のように思えた。
サンディーと遊んでいるところを見ると、特にそう感じた。
我々のことを拒むのも、我々を気遣ってのことのような気がする。
側室という立場でありながら質素な服装を好み、エリック様に会いに行こうとすることもない。
エリック様に何かを求めたこともなく、地位も望んでおられない。
この感じは、なんなんだろうか。
私の記憶が、どこかおかしいのだろうか。
アリエル様を傷つけた、というのは、記憶違いなのではないか。
でも、アリエル様は確かにルナ様を嫌がっておられる。
しかし動物というのは純粋だ。
あれほどまでにルナ様に懐いているということは、ルナ様は悪い人ではないのでは。
あぁ、わからない。
*
「サンディー。」
夕方、日が傾き始めた頃、庭の端、海が見える塀の上に腰掛けた。
サンディーは隣にお座りした。
「ワンっ、ワン!」
「……また歌うの?」
「ワンワンッ!」
サンディーは、俺の歌が好きなようだった。
ほんのり冷たい潮風を吸い込むと、両親を思い出した。
幼い頃に聞いて、エリックを助けた時にも歌った曲。
歌詞を知らず、ラララでしか歌えない曲。
柔らかい雰囲気がすごく好きな曲だ。
サンディーを撫でながら、口ずさむ。
びゅう、と風が吹いた。
*
エリック様の公務を終え、城に戻った。
そろそろルナ様に夕食をとってもらわなければと思い、その姿を探す。
部屋にはいらっしゃらない。
書庫にもいなかったし、まだサンディーと庭にいるのかもしれないと思い、そこに向かった。
庭の端、塀の上に腰掛けたルナ様。
サンディーが隣に座り、頭を撫でられていた。
「ルナ……」
名前を呼ぼうとしたが、聞こえてきた声に黙った。
美しい、透き通った歌声。
やかに聞き覚えのある、歌声。
聞き覚えのある、曲。
なぜ、私はこの曲を、この声を、知っている?
びゅう、と強い風が吹く。
ひらりと揺れたルナ様の髪と服。
足首にきらりと光る、貝殻のアンクレット。
あれは、『アリエル』様の……
突然襲ってきた、割れるような頭の痛み。
『アリエル』様、は。
アリエル様、ルナ様、『アリエル』、様?
【カイ、海に帰るよ。今まで、ありがとう。】
【カイ!エリックがこれくれた!みんなのおかげだよ、ありがとうっ!】
【カイ、俺がエリックのそばにいてもいい?】
【エリック、えりっ、くっ……いやぁぁぁぁぁ!!!!】
パキン、と何かが割れた気がした。
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