アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
26
-
「……おい、あいつはまだか?」
「もう少しお待ちください。」
準備を終えて門の前で待っているが、側室はなかなか来ない。
「ほら、自信もってください!大丈夫ですよ!」
「ーーーっ、でも……」
キャンディと話している声が聞こえる。
「来たようですね。」
カイがやたら楽しそうな顔でそう言うのとほぼ同時に、側室が姿を見せた。
「……あ、えっと……お待たせ、しました…」
顔を赤らめ、恥じらいながら言葉を紡ぐ。
海色のワンピースが風にヒラヒラと揺れた。
「エリック様?」
思わず見とれてしまった。
カイに呼ばれてハッとし、側室から目を逸らして歩き出した。
「エリック様。仮にも国王陛下と、その側室としてお出かけするのです。きちんとルナ様をエスコートしてください。」
慌ててついてきた側室を見やりながら、カイは呆れたように言ってきた。
まあ、誘ったのは確かに俺だし。
「……来い。」
「は、はいっ…」
隣に並ばせ、歩調を合わせる。
階段では手を差し伸べ、歩く時は道の内側を歩かせた。
側室は、一言も話さない。
黙って、俺に付き従う。
アリエルはよく俺に話しかけてくるのに、こいつはそうではない。
「……おい。」
「はい、国王陛下。」
俺が声をかければ返事をする。
けれど、自ら声をかけてくることはない。
今も、自ら話し出す様子はない。
「今日は、犬はどうした。」
「あ、サンディーのことですか?」
サンディー、そういえばそんな呼び方をしていたような。
「メイドさん達が見てくれています。」
メイド"さん"。
些細なことだが、気になった。
「犬……サンディーは、気に入ったのか。」
「はいっ、とても!ありがとうございます。」
まるで花が咲いたような笑顔を見せる。
俺の前でこんな顔をしたのは、初めてのように思う。
いつも、どこか悲しそうというか、翳りがあるというか。
「そうか。」
会話が終わる。
態度を見る限り、俺と話すのが嫌なのではないと思う。
だが、こいつが好む話題が分からない。
「……おい、ディラン。」
「はい、エリック様。」
後ろを歩くディランは、側室付きの執事。
ある程度、こいつの好みも知っているはず。
「……こいつは、何が好きなんだ。」
「は……?」
ポカン、とするディランと、ため息をつくカイ。一体なんだと言うのだ。
「……エリック様、ご本人がいるのに、執事に聞くとはどういうことですか……すぐ隣にいるルナ様本人に、尋ねればいいことでしょう。」
まったく、とさらに深くため息をつくカイと、苦笑するディラン、そして隣の側室までもがクスクスと笑う。
「構いませんよ。ディランさんに聞いて頂いて。」
「……いい。お前が直接教えろ。」
「かしこまりました。」
柔らかく微笑む側室に、心がむず痒くなった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
27 / 85