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ドクン、と心臓が跳ねる。
ここ数日感じている、妙な違和感。
それが今も。
「……彼を、愛してる。」
目を伏せ、切なげな表情を浮かべたルナ様が、そっと言葉を紡ぐ。
「彼は、不器用で、けれどとても優しい。どんなにひどい態度を取られても、彼の本質は何も変わってない。それがわかるから、俺の気持ちも変わらない。」
なんだ、なんなんだ、この違和感。
まるで、ずっと昔から知っているような。
初めて聞く話とは、とても思えない。
「俺は、王子でも、王でも、夫でもなく、エリックというたった一人の男を、愛してるの。」
ズキン、ズキン、と頭が痛む。
おかしい。
何かが、おかしい。
俺は、何を間違えている?
何を、見逃している?
「人のためを思い、誰よりも自分に厳しく、自分の悲しみや辛さは、自分で抱え込んでしまう。」
まるで何かを愛しく思うかのような、そんな眼差しをする彼と、誰かが重なる。
これは、『誰』だ?
「彼が寄りかかれる、心の広いパートナーでありたいんです。だから、俺に態度が悪い時は、俺には甘えてくれてるって、そう考えれば……」
誰、だ。
この人は。
このお方は、『誰』なのだ。
「それでもやっぱり、辛いときはありますね。」
泣きそうな顔で笑うこのお方を見た時に、電流にでも打たれたかと思うような、衝撃が走った。
俺は、とても大事なことを、絶対に忘れてはならないことを、忘れていたのではないか?
そう、自分に問いかければ、自然と浮かび上がってくるものがあった。
そしてそれは、次々に頭の中に思い浮かんでくる。
【貴方様に忠誠を誓います。】
【貴方様を危険な目に合わせるなど、この私がさせません。】
【貴方様が笑っていてくださることが、私共の幸せでございます。】
自らが、心の底から紡いだ言葉が蘇ってくる。
【ディラン、どうしようっ!夜伽に誘われちゃった!】
【ディラン、ごめんね。たくさん、たくさん協力してくれたのに。】
【ディランのこと、信じてるよ。】
【エリック、えりっ、くっ……いやぁぁぁぁぁ!!!!】
このお方の様々なお言葉も、表情も
そしてあの日の、『アリエル』様の悲鳴も、鮮明に蘇った。
なぜ今まで、気が付かなかったのか。
自分が理解できないほど、はっきりと。
このお方こそ、俺が忠誠を誓い、一生お傍に付き従うと決めた、俺の主人。
「……あはは、変な話してごめんなさい。少し庭に出てきますね。」
立ち上がり、部屋を出ていこうとするこのお方を、行かせてはならない。
1人で涙を流してしまうのは、このお方の
『アリエル』様の悪い癖なのだから。
「お待ちください。」
思わず掴んだ腕は、俺の記憶よりもかなり、ほっそりとしていた。
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