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「へっ?」
突然腕を掴まれたことで、アリエル様は驚かれたようだった。
無礼な真似であると、わかっている。
けれど、それでもこの手は離せない。
「……お待ちください、『アリエル』様。」
その名を呼べば、アリエル様は固まり、目を見開いて、一雫だけ、涙をこぼした。
それはすぐに、キラキラと輝く宝石に変わる。
「……私が、また名前を呼ぶことを、喜んでくださるのですか?」
思わず、顔を歪めてしまう。
アリエル様に酷い仕打ちをし、無礼な態度をとった俺が、また『アリエル』様を呼ぶことを、許されていいはずがないのだ。
それでも俺は、知っている。
このお方は、それを許してくださる方だと。
「よろこぶに、っ、きまって……っ……」
堰を切ったように溢れてくる涙が、次々と煌めく宝石に変化していく。
「アリエル様……どうか、今までのご無礼を、お許しください。」
「っ、かお、上げてくださいっ……俺、謝って、欲しいわけじゃないっ、から……」
「しかしっ……!貴方様に辛い思いをさせ、1度誓った忠誠を覆すなどっ……」
「あなたは、俺に、仕えてくれたじゃないですか……ルナになっても、俺に。」
アリエル様が、涙を流しながらも、柔らかく微笑んだ。
あぁ、そうだ。
こういうお方だから、絶対忠誠を誓ったのだ。
俺は、こういうお方だから、仕えていきたいと、そう思ったんだ。
「アリエルっ、様っ……!」
「嬉しい……ディランに、また、呼んでもらえたっ……」
「アリエル様っ、あまり泣かないで。この宝石をどうしたらよいのです。」
そう言って苦笑すると、アリエル様はまた笑った。
「ごめんなさいっ、だって……嬉しくて、止まらないんです。」
「……アリエル様。敬語は、おやめください。もしも私を許してくださるのなら……前のように……接してくださいませ。」
「……うん、うんっ……ディラン、ディラン……っ!」
ガバッ、と飛びつかれて焦る。
エリック様に、嫉妬されてしまう。
「あ、アリエル様っ、それは困りますっ……私の首が飛びます!」
「……ふふっ、あはは!今は大丈夫だよ!」
いたずらっ子みたいに笑うアリエル様が、忘れてるエリックが悪い!なんて言う。
「クスッ……ふふっ、そうですね。忘れてるエリック様が、悪いですね!」
俺の主人は、このお方だ。王ではない。
アリエル様が望むのなら、たとえ王に、エリック様に歯向かうことでも、やると決めていた。
「アリエル様、思い切り抱きしめても?」
「ーーーーっ!うん、うん…!!!」
ギュッと抱きしめた細い体。
その肩が震えて、このお方はまた泣いているのだとわかった。
「……もう二度と、貴方様へ背くような真似は致しません。たとえ、私の命と引き換えにしても。」
「……死んだら、やだよ……?」
不安そうにこちらを見つめるアリエル様。
このお方は本当に、人の心を掴んで離さない。
このお方のためなら、死んでもいいとそう思ったけれど、やはり、隣で生きなければならないと思わされる。
「ええ。簡単には死んでやりません。私の名は、ディラン。海の神の意味ですから。貴方様をお守りする、貴方様だけの神となりましょう。」
アリエル様に、私の一生を。
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