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「……なぜなのだ?」
「……エリック様、先程から何を悩まれているのです。」
朝からずっと悩んでいるエリック様に、見かねて声をかけた。
「それが、ルナに、愛していると、伝えたのだ。」
「はっ?!」
驚きすぎて、失礼な返し方をしてしまった。
しかし、エリック様はそれを気にすることなく続ける。
「その後から、避けられている。なぜだ?なぜなのだ?何が悪かった?」
「……つかぬ事をお聞きしますが、どのようにお伝えに?」
「……行為中に。」
「お言葉は?」
「ルナ、愛している、と。」
ああ、なるほど。
『ルナ』を愛している、と。
アリエル様はそう受け取ってしまわれたのだろう。
「側室に対してでは、戯れに聞こえたのだろうか……?」
本気で悩んでいるあたりを見ると、昔よりもずっと早く、エリック様は自分の気持ちに気づいたようだ。
「俺にとっては、正妻だろうと側室だろうと関係ないのだが……彼が彼でいれば、それでいいのだが……伝わらなかったのだろうか?」
なるほど、しかも『ルナ』様をというより、あのお方を、愛してらっしゃる。
記憶が無いだけで、『アリエル』様を愛しているも同然、というわけだ。
「もしかしたら、立場を気にしてらっしゃるのかもしれませんね。本日、外にお出かけになりますし、その時にそれとなく聞いてみます。」
「ああ、頼む。」
アリエル様と少し話してみよう。
もしかしたら、エリック様の記憶が戻る日も近いかもしれないし、もし万が一、記憶が戻らないとしても、この様子なら、しっかりとアリエル様を愛してくれそうだ。
あとは、ヴァネッサさえ、余計なことをしなければ。
私のそんな不安が、見事に的中してしまうことを、まだ誰も、気がついていなかった。
*
「なぜだ!!!なぜ!記憶をなくしても、愛すというのか?!」
ヴァネッサは、水晶玉を眺めながら叫んでいた。
アリエルを絶望させるという計画は、上手く進んでいない。
それどころか、側近達が記憶を取り戻し、むしろアリエルは穏やかな生活を送っている。
しまいにはエリックが再びアリエルを愛してしまう始末。
「こうなれば……強硬手段に出てやる……」
水晶玉を操り、国民の中から数名を選び出す。
そしてブツブツと魔法を唱えはじめた。
「これが上手くいくとも限るまい……さらなる手を打たねば。」
ヴァネッサはそう呟くと、東の塔に向かった。
今までは1度も手を出すことがなかった、東の塔へ。
「……これは。」
前はなかった望遠鏡。
「これも、使えるかもしれない。」
そしてヴァネッサは思いついた。
「愛していると、伝えたのなら……それが嘘だったと、思わせれば……!」
口元が緩む。
「ふふふふ……あーはっはっは!」
そして、勝利を確信して、高らかに笑った。
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