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不自然なアクマ
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朝の登校はかなり憂鬱だった。
昨日、そのまま飛び出して、教室で顔を合わせるのも嫌で早退してしまった訳であって。
あの後一度も赤川に会っていない。
あぁ、なんか言われんのかな。初めて命令を拒絶しちゃったし。
教室行った瞬間に連行されて、また林と三上にサンドバックにされて、...想像できてしまうのが怖い。
「...嫌だなぁ」
「何が嫌なの?」
とん、と突然肩に置かれた手に思わずびくりと跳ねてしまった。慌てて振り向けば、にっこりスマイルの蒼大。び、びっくりしたぁ...!!
「あ、お、おはよう!!」
「おはよー。なに、浮かない顔して」
つんつんと頬をつつかれて、思わず笑った。やっぱり蒼大といるとほっとする。
「ん、別に。もう元気でたからいーよ」
「そ?それなら良かったけど」
にっと笑った蒼大は俺の頭をぽんと軽く叩いて、「じゃ俺、朝練だから!」と走って玄関へと向かってしまった。
そういえば、蒼大ってバスケ部だっけ。いいよな、イケメンでスポーツもできるなんて。
走り去って行く後ろ姿を眺めて、そんなことを思った。
ーーーそんな、平和もつかの間。
「...平沢」
「ーーっ、」
昨日のフラッシュバック。
教室についたと同時、後ろから呼ばれた自分の名前に背筋が凍りついた。...ああ、やっぱりサンドバックか。
呼ばれたのを無視するほどの勇気はないので、ゆっくり振り向く。
「...はい」
小さく返事をする。怖くて顔を見れなくて、俯いたまま。
一体どんな顔で俺を見てるのかは分からないけど、多分、いつもの仏頂面なんだろう。
数秒なにも言わずに俺の前に立っていた赤川が、わしゃわしゃと自分の頭をかいたのが視界の端にわかった。
...あ、それ、赤川が困った時にする癖。...って俺、なんで赤川なんかの癖知っちゃってんだろ。
何に困ってるのか分からないけどとりあえず解放して欲しい。もう、早く鳴ってよチャイムーー
「...あの、さ。その、昨日は、ごめん」
...幻聴かと思った。
頭上から降ってきた言葉は、紛れもなく、“謝罪”。
怖いとかそういう感情なんか忘れて、思わず顔を上げてしまった。
ぽかんと目を見開く俺を、赤川はまっすぐに見下ろしていて。
...耳が赤いのは、なんでだ?
「えっと...?」
信じられない。あの、赤川が、俺に謝った?なんの前触れ?嵐でもくるの?
ぱちぱちと瞬きをしながら相手を見つめれば、赤川はふいとこちらから目をそらした。
「...小宮とも仲良くしてていいし、そのままでいいから」
これは夢か?夢なのか?
信じられない状況についていけず、「う、うん」と言いながら思わず何度も頭を振ってしまった。
「でも、」
そう続けた赤川はまっすぐに俺を見て。これ以上何を言うのかと恐る恐るその目を見つめ返した。
そして、続いた台詞は、信じられないもので。
「ーー放課後は、2人で帰りたい、」
「...え?」
「ぜ、ぜってー先に帰んなよ!」
何故だか最後は怒ったような顔でそう言って、赤川は教室の輪の中に入っていってしまった。
首まで赤かったのは、なんだったんだ?
というか、今、
「2人で帰りたい...?」
チャイムが鳴り響いた。
機械的なその音を聞きながら、俺は教室の入り口で呆然と立ち尽くしていた。
...一体、なんだったんだ、今のは。
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