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撃沈 (やや総受け)
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ある日の事である。
その日ガッチマンは体に違和感を覚えていた。何というのだろうか、寝起きなどによくある、体に力が入らない現象。それがずっと続いていたのだ。不思議に思うガッチマンではあったが、特に気にも留めずカバンにものを詰めていた。なんでも、普段から仲の良い実況仲間である、キヨ、レトルト、牛沢に会うのだという。連休だということもあって泊まりらしい。
ちなみにレトルトの家である。なんで毎回レトルトの家なのだとかそういったメタい突っ込みをしてはならない。
さて、荷物を詰め終わったガッチマンは身支度を済ませ、誰もいない家内に、行ってきますと声をかけた。もちろんのこと返事はなかった。
「あのさあ、なんで毎回俺んちなの」
「れとさん、その突っ込みはしちゃダメだって言われてなかった?」
「誰に?」
「さぁ」
「お前らの存在そのものがメタいから今日はもう帰れよ」
「ここ俺んちだから。」
「訳わかんないこと言ってないで早くゲームしようよ?」
何事もなくレトルト宅にたどり着いたガッチマンは、早めについたのだというキヨ、牛沢に迎えられ、中に入った。
相変わらず家内は綺麗だった。
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「ガッチさん強すぎるよ! もうちょっと手加減してよ!」
「え? やだ。」
「即答! レトさん可哀想ー」
「そう言ってるけどキヨくん凄く棒読み!」
「うるせぇなぁ、ちょっと静かにして。」
ゲームを初めてから小一時間は経過しただろうか。四人がやっているのは、某赤と緑の帽子おじさんと愉快な仲間たちが出てくるパーティーゲームである。ホラーチックなものを主にやっているガッチマンではあるが、パーティーゲームも上手い。正直何をやらせても上手いのではと説があるとかないとか。
あまりの上手さにレトルトがぼやき、もう少し手加減をしろと言うのだ。まあ負けず嫌いのガッチマンは勿論のこと断るわけで。
ボヤくレトルト。笑うキヨ。キレる牛沢。
開始早々中々カオスなものである。
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「…?」
ガッチマンはまた異変に気づいた。
この部屋、暑い。どうしようもなく暑いのだ。
最近季節的にどんどん暑くなっているので、清涼器具をつける人の方が多くなってきているにも関わらず、この部屋は暑いのか。確かレトルトやキヨは暑がりだと聞いたことがある。おまけにクーラーだってある。
少し、さりげなく言ってみた。
「この部屋暑くない?」
と、言うと、ガッチマンが予想としていたものとは違う言葉が返ってきた。
「え?」
「本当にいってる?」
「えっ レトさんとうっしーは暑くないの?」
暑いというガッチマンに破顔したレトルトと牛沢は、顔を見合わせた。なにかおかしなことをいっただろうか。ガッチマンはそんな様子だった。
「ガッチさん」
今までゲームをやっていたキヨが口を開き、言った。
「クーラーついてるよ。 しかも二十三度で。」
シーンと静まる室内。ガッチマンは硬直している。ガッチマンは三人の視線を浴びながら、少し考える。なぜ、自分だけ熱いと感じるのか。
答えは既に出ていて、明確なものだった。
「そっか、俺自身が、熱いのか」
アンサー。『俺自身が熱い』
ガッチマンがそう言った瞬間が波乱だった。
走るレトルト。
飛びつくキヨと牛沢。
叫ぶガッチマン。
倒れるガッチマン。
投げるレトルト。
受け取る牛沢。
押さえるキヨ。
挿す牛沢。
落ち着いたガッチマン。
鳴る体温計。
表示された体温、39.0度。
キヨはその数字を見た瞬間、某ムンクのように叫んだ。つられて牛沢も叫んだ。レトルトは近所迷惑だから黙れと二人を押さえ込んだ。
ガッチマンの体温は高熱の域に達していて、ゲームをさせている場合ではない。
おそるおそる、押し倒したガッチマンを見ると、意識を失っていた。今度こそ三人は叫んだ。この後苦情が来たという。
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キヨは眠っているガッチマンを見た。
ゲームをしている時は何食わぬ顔をしていたというのに、今こうしてみると随分と苦痛の表情を浮かべていた。逆に、なぜ気づかなかったのか。キヨは疑問に思った。
「まつげ長いんだな」
ポツリと呟いた。普段眼鏡をしていたし、ちゃんとガッチマンの目元なんて見たことがなかった。そういえば顔だってまじまじ見たこともなかった。
まぁ、そんな場面なんて、全然滅多にないことだ。熱に侵されるガッチマンはこれまで見てきた、落ち着きがある雰囲気がひとかけらもなく、ただただ魘されているだけであった。しかし、熱がある中、ガッチマンはどれだけの無茶をしてきたのだろうか。レトルトの家だって、それなりに距離はあるだろうに、よほどゲームがしたかったのだろうか。
そんなことを考えながらキヨはガッチマンの冷却シートを取り換えた。
取り換えたそれは、熱を帯びていた。
新しいのをガッチマンの額にはってやった。冷たさからガッチマンは少し身じろぎをした。
「ガッチさん」
そうよんでも当然返事は返ってこない。
実はガッチマンに想いを寄せていることにキヨは気づいてない。しかし、今こうしてガッチマンの看病をしていることを嬉しく思っているのも事実だった。と、キヨは少し悪戯心がわいた。キヨは己の細い指を、ガッチマンの唇に、触れた。ほんの少しかさついていたが、思いの外柔らかかったそれに、キヨは体の奥底からなにかがドッとおしあげてくる感覚に襲われた。
ふにふにふに。
そんなことを暫くやっていたら、
「おいキヨ。 ガッチさんが体調崩してるのわかってるよね?」
「ア゛ーーーっ!!!」
急に入ってきた牛沢に、キヨは思いっきり大声をあげてしまった。
うるさいと牛沢にはたかれた。地味に痛かった。
「ガッチさんどう?」
「まだ寝てる。 かなりきつかったのかも。」
牛沢は夕飯をどうしようか、そのことでキヨを呼びに来たのだという。
なんせ料理があまり得意ではない3人だ。どこかで食べに行った方が妥当な案ではあるが、今の状況のガッチマンを放っておくわけにはいかないし、嫌だ。それは牛沢やレトルトも同じなようで、少し考える。
「まぁ、最悪なくても生きていけるし・・・。」
「ガッチさんはやばいだろ」
「そっか。」
弱っているガッチマンなど見たことは少ないが、この事実は変わりようがない。風邪なんて誰でもひくが、それでも弱っているガッチマンを見て動揺していた。
「ガッチさん大丈夫かなぁ。 熱とか上がるだろうなぁ。」
「そうだね、その時が不安だ」
いつまでも喋っていると起こしてしまうと思い、部屋を後にした。
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ガッチマンが目を覚ましたのはずいぶん夜遅くのことだった。起きた、というよりかは起こされた、と、言った方が良いだろう。
ガッチマンは熱に侵されぼんやりとする頭を覚醒させた。レトルトだろうか。名前を呼ばれているのだろうか。
「ガッチさん、起こしてごめんね。 一回、熱計ろう?」
体を起こし、ちらりと時計を見た。日を跨ごうとしている時間だった。
「レトさん・・・。 もしかしてこの時間まで見ててくれたの・・・?」
ごそごそと体温計を探すレトルトにガッチマンは問うた。するとこちらを振り向いた。
「俺とうっしーはね。 キヨ君は途中で寝ちゃったけど。」
「まじか、ごめんね。 迷惑かけて。」
ずっと看病をしていたというレトルトの言葉に、ガッチマンはちょっとした罪悪感で、謝罪の言葉を口にしてしまう。
「なにいってんの! まずは自分を心配しろ!」
言葉は強気なレトルトではあったが、その眼は心配の色をしていたのは、ガッチマンも見て取れた。そんなレトルトのやさしさに甘えて、もうひと眠りすることにした。それに、少し眠い。
ガッチマンが完全に寝た後、レトルトはガッチマンの、柔らかい髪の毛を撫でた。ガッチマンが心配で、ずっと看病していたというのはあるが、ガッチマンから褒められたい、といったちょっとした下心もあった。
まぁ、それくらいなら許されるだろう。
しかしこの先どうしようか。
体温計が示すのは、四十度という数字であった。
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牛沢が目を覚ましたのは、いわゆる丑三つ時と呼ばれる時刻だった。
それは、誰かの声だった。喋り声とか、そういうものではなくて、なにか異常を示すような声だった。レトルトは寝てしまっているようだった。
キヨと雑魚寝をする形だったので、足元に気を付けつつ、ガッチマンの様子を見に行ってみたが、その行動が吉を呼んだか。
「ガッチさん?!」
「・・・う、っしー・・・熱い」
ガッチマンは明らかなほど様子がおかしくて、半身がベッドからでていた。
牛沢は急いでガッチマンを抱き起した。ベッドから身が出ていたのは、熱さから逃げるためだった。
抱き起した体は驚くほど熱くて、夜の涼しさによって冷えた牛沢の体はすぐに温まりそうだ。
「ガッチさんすごい熱だよ・・・! もう病院行こ?」
「皆に迷惑かけたくない」
「そんなこと言わないの!! みんなガッチさんが大事なの!」
正直大声は病人には毒だとは思うのだが、このくらい言わないと聞いてくれないと思い、声を荒げてみた。当のガッチマンは目をぱちぱちさせていた。
思いもよらない、といった表情だった。
「うっしー」
「ん?」
「ありがとう」
ガッチマンは目を細めた。牛沢はなにかに胸が押しつぶされるような感覚に陥った。熱で潤む目と、紅潮した頬。その年齢にそぐわない表情だった。
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翌日、ほんの少し熱の下がったガッチマンを病院に連れて行った。
まあ、ただの風邪だそうだが、絶対安静だと医師に言われた。ゲームをしていましたとはいえない。
そして、レトルトは念願の、「ガッチマンに褒めてもらう」を無事達成し、牛沢はあの時見たガッチマンの表情が忘れられず、つい意識してしまっていた。キヨはというと、風邪をひいているガッチマンを妙に色っぽいと感じてしまい、ガッチマンを変な目で見てしまっていた。
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