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「力弱いな〜さすがだわ。お前どこの家?」
「あんま見た事ねえから、小せえとこの奴だろ。男か女かも分かんねえ」
「……犯して確かめっか?」
「ははっ、いいなそれ」
(やだ、やだ。やめて)
大人しくしてろよ、と言ってすぐに、七生は大理石の床に押し倒された。二人がかりで押さえつけられれば容易に身動きが取れなくなる。頭には恐怖しかなかった。いつしか声も出なくなっている。
「ゃ、め……ッ、やだ……」
七生の着ていたタキシードの裾から、布の裂ける音がした。自分は此処で終わるのかなんて変な想像をしたら、あっという間に涙が溢れた。
「何してんだお前ら」
その言葉に、声色に、どきっと心臓が鳴る。
覆いかぶさっていた男達も、明らかに顔が青ざめていった。
「俺の就任式で良くもまあ、そんなゲスい事出来んよなぁ。何処の家?」
何をやっているのかを理解すると、男の声音は一気に低くなる。影を背負ったその表情は酷く恐怖心を煽ったようだ。
聞き覚えがあった。
どこで聞いたのか、詳しくは思い出せない。けれどこの声は聞いた事があった。
「申し訳ありません太史さん!!」
「酔った勢いの事です!!どうかご容赦を!!」
あっという間の土下座だった。七生は呆気に取られたように、何も出来ずそれを見つめている。けれど男は、それを許そうという気になれなかったらしい。
乱暴に、頭に足を掛けて二人を蹴飛ばしたのだ。
——鉛を蹴ったような、音がした。
「城島の家に勝手に胡座かいて、泥塗りたくるような事してんじゃねえよ」
その一言を聞くと、男達は蹴られた頬を押さえつつ駆け足で去っていく。七生はただ、その後ろ姿を呆然と眺めるしかない。
数メートル離れたところにいる男と目が合った。漆黒の髪は細くサラリと揺れる。その合間から覗く碧色は、とても夜に映えるものだった。
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