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守護する者たち 1
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「えーと、僕の言っていることわかります。」
セベクから唇を離した明良は恐る恐る聞いてみた。聞いてはみたが反応はない。
目の前のこの精悍な顔つきをした爬虫類系の人は表情というものがスッポリと抜け落ちている。
『えーと、いきなりこんな事しちゃったから怒ってるのかな?』
明良はセベクの瞳の紅い光彩のに怒りとは違う、だがそれ以上の焔が燃え上がりつつあるのに気づかなかった。
実は明良はmouth to mouthのキスの経験は飼い猫のカトリーヌとしかなく、今回のこの人選(?)も“一番人とかけ離れて”見えたからだった。
結果、ある意味最悪の人選をしてしまった訳だが本人は全く気付くことはできなかったのだ。
で、懲りない明良は次の獲物を求めてあとの4人に視線を据えた。
明良のこの行動は異世界トリップのお約束による言語の疎通を図るための行為だった。一体いつこのような知識を手にしていたのか。いささかマニアックな方法なのだが明良は微塵も疑問を持っていない。
それどころか片っ端から試してみようとしている。
次の対象はシリスに決まったようだ。
顎割れマッチョの彼の容貌は明良が知っているどの部族のアフリカンよりどちらかというと西洋人に近い。身長は2mを僅かに超えるくらいか。それでもここにいる5人のなかで一番背が低い。
シリスに向かって伸ばそうとしていた手を誰かに掴まれた。
今の今まで微動だにしなかったセベクがその顔に凶悪な笑みを浮かべてシリスを睨んでいる。
そして明良の小さな身体を肩に担ぎ上げると威嚇するかのような低い声で「これ、貰っていくわ。」と。
「冗談じゃない‼︎」
鳥人2人が動いた。いや、動こうとした。
黒っぽい何かが視界を横切ったかと思えば次の瞬間、自分が先程まで居た寝台と共に4人が壁際まで吹っ飛んでいた。『尻尾!』
強靭な鰐の尾がセベクの後ろでゆらゆら、揺れている。
踵を返すセベクになおも追い縋ろうとした2人を先程より大きさを増した尾が今度は天井に叩きつけた。
「うっ、うわぁーっ‼︎」
僕は思わず叫んでいた。肩に担がれて腹が苦しい。
「選ばれて嬉しいぜ?ちびっこ。」聞こえるかどうかという程の甘い囁きと一瞬の笑顔。
でも又、尾が空を切る。
遠ざかって行く僕達の後ろで鳥人2人は踞っていた。元々大して頑丈な建物ではなかったのだろう、客間は大破している。
落ちて来た天井をセテフひとりが支えている状態だった。
「ぼーっとしてないでさっさと出てくれ。」セテフは少々ムッとしていた。
“漆黒” それはセテフの為にある言葉だろう。
黒い肌に黒い瞳。僅かに青みがかった白眼の部分だけが浮き上がる。ワンレングスの髪は肩下で束ねられていて、見事な艶を放つ射千玉〈ぬばたま〉の髪。
他の者達より落ち着いた雰囲気を醸し出すのは年嵩故か。
2m半近くある体躯はしなやかな筋肉に包まれている。
「そこの2人もそろそろ起きてくれ。大したダメージは受けてないだろう?」
ばつが悪そうに起きあがったホルとトートは家から出て明良達が向かった方を見遣る。
セベクはちゃんと手加減していた。鳥人達の骨格を傷つけずに、打ち身程度で済むように払い飛ばしていたのだ。
「わかってる‼︎」
手加減されてプライドをズタズタにされ、明良を連れ去られた悔しさに語気が荒くなる。
それまで黙ったままだったシリスが宥めるようにホルの肩に手を置いた。
「堪えろ。ああ為ったセベクは誰にも止められん。それに、」
後の言葉をトートが引き継ぐ。
「ある意味、あそこが一番安全ですよ。あくまでも“ある意味”ですけどね。」
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