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ヒトと獣と 22
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【原初の森】の入口で出迎えたのはトートだった。
ホルの監視は鳥人族の者が交代で行っているという。
ただ、ホルに抵抗の意思は無くセテフの提案を呑むつもりでいるようだ。
「トート、貴公はどうするつもりだ?
率直な考えを聞きたい。」
髪を束ねていない射千玉のセテフが目の前に佇んでいる。
壮絶な男の色気を醸し出して、目には獣の色を残し、そしてアキラの香りを纏っていて。
「私は…私の心はいつ何時もアキラの元に。
勿論、常時お側に侍れなくとも構いません。
皆様方にお任せ致します。」
恭順の意を露わにして鳥人は恭しく礼をとった。
満足そうな二人はこれからトートの背に乗り、ホルのツリーハウスへ向かう。
河向う派の二人をこちらに付ける事が出来るならこれからの仕事が容易くなるだろう。
つらつらと考えていたセベクは、先程セテフと交わしていた会話を思いだしていた。
『アキラは仔を孕めるのだろうか。』
賢人としても誉れだかいセテフの言葉とは思えない。
だが、アレは天人であって我々の常識は当てはまらないのかも…
「鰐王。」
セテフの声に我に返る。
「顔だけ出して退室してよいだろうか? 」
説明も受けているし、引き継ぎも行われている。
問題はないが…
「構いませんよ。
具合が悪いのですか? 」
勿論、アキラの事だ。
「忝ない。
出来れば、目覚めの時は傍にいてやりたいのだ。」
甘々の山犬王など必見ものだ。
軟禁状態のわりに午前中より小ざっぱりしたホルが、二人の姿を見ると素早く礼をとった。
これは…了承の返事ととれるのか。
「言葉遊びをするつもりはない。
貴公には我々の駒になる心算はあるのか?ないのか。
二つに一つ。
選んで欲しい。」
ばっさりと本題に入ったセテフの冷たい目。
「すべて追従致します。
アキラの側に居る事を許されるなら何事にも否はありません。」
慇懃に頷いたセテフが鰐王の肩を叩いて踵を返した。
「後はよろしく頼む。」
トートを伴って退室して行く。
「セテフ殿はどうなさったのです?」
まあ…気になるわな。
「今朝、アキラから話を聞こうとした。
貴公は中洲からアキラを拉致し監禁したと認めるな? 」
「はい。」
「アキラは自分からついて行ったと言い張って事実を認めようとしなかった。」
「それは… 」
ホルは混乱しているようだ。
「首の爪痕、手首の痣を見れば一目瞭然なのに、だ。」
「まさか。」
ホルの握りしめた手が小刻みに震えている。
「アキラは貴公を庇って口を割らなかった。
で、少々手荒な手を使ったようだ。
実際に行なったのはセテフ殿ゆえ、細かい事は知らん。」
「まさか、拷問? 」
ホルは真っ青になっている。
「縛ったり、傷をつけたりはしていない。
だが、意識はないな。」
「 ‼︎ 」
「そうまでして貴公を庇おうとしたアキラの純情、裏切りは許さぬ! 」
ホルは目を瞠った。
「わかっております。
…いつ会えますか? 」
名目のみだが彼は獣人族の長だ。
近年はその関係がヒト寄りになっていたがこれからは正常な形に戻るだろう。
「近々、アビスが戻って来てセテフ殿と交代する。
二人とも側から離さないだろうからそのあとだろうな。
文字通り“ 会う ”だけならいつでも会えると思うが。」
ホルの頬が紅潮している。
そういえば、彼はまだ若かったな。
意外と純情なのか…
「セテフ殿と私の意思を伝える。
貴公には今まで通り過ごして頂きたい。
シリスとの関係も今まで通り。
…【間者】だと思って貰ってよい。」
ホルの目に力が戻って来る。
「承りました。
アキラと共に居れるだけで本望。」
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