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砂漠の悪魔 8
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眠るアキラをアビスは飽きもせずじっと見つめていた。
自分の腕の中で身じろぎもせずあどけない寝顔を晒す、愛しい妻。
金色の髪に指を絡め、撫でながら梳いている。
何度も、何度も頭を撫でる。
アビスは心地良さげに溜息をついてアキラの華奢な身体を抱き締めた。
「戻るの? 」
「ああ…… 」
見るからに落胆したアキラを膝に乗せてアビスは頷いた。
「アヌビスまで戻るわけじゃないから。
すぐに帰って来る。
大人しく待っててくれる? 」
「うん…… 」
アキラはアビスの胸に頭を押し付け、甘えた。
アキラの背中に両手を回して抱き締める。
アビスはこの上ない幸福を感じていた。
抱き合って別れを惜しむふたり。
それを見つめる二対の目。
「すっかり大人しくなって。
どうやって説得したのか…… 」
「貴殿にわからないものが他者に分かるはずがない。
まるでガキ同士の夫婦《めおと》だな。」
抱き合ったまま、口づけを交わし合い、囁き合う。
溢れ落ちた涙を拭い、頬に口づけてアビスは身体を離した。
「行ってくる。」
片膝をついてアキラの手を取ったアビスは繊手の先に口づけて、立ちあがり踵を返す。
黒獣に獣化したアビスが駆けていく。
見送って、しょんぼりしているアキラの元に集う二人。
「今日は大人しくしていろ。
昨日の朝から殆ど寝てないだろう?」
「うん…… 」
本当に眠ってしまった事に驚きを禁じ得ない二人。
この後、また一騒動起こす事など想像もしていなかった。
夕刻近くに起き出したアキラは、何かに導かれるように河岸へとやって来た。
ここの水際は遠浅になっていてアキラのお気に入りの場所だ。
膝を抱えて座り込むアキラ。
太陽が沈み西日が柔らかくなった空を見上げていた。
アキラの視界の端に動きを捉える。
黒っぽい猛禽が鋭い鍵爪のついた足に、何か白い紐状のものを絡みつかせている。
アキラはそれを目で追っていて蛇だということに気がついた。
それがーー落ちてくる。
ポチャンと水に落ちた……蛇。
小さな白い蛇はピクリともせずアキラに向かって流れてきた。
パシャパシャと躊躇せずに水に入ったアキラは両手に収まりきってしまうほどの子蛇を拾いあげた。
護衛(監視? )の鰐人が駆け寄ってくる。
樹木から飛び降りて来るものもいた。
ハニは河からあがってくる。
「アキラ様っ!
離して下さい! 早く‼︎ 」
え? といった顔をしたアキラから、子蛇をひったくるとナイフを抜く。
「わー‼︎ 何すんの? 駄目だよ殺しちゃ!」
「何仰ってるんですか?
コレはコブラですよ?
危険でしょうが‼︎ 」
ハニのたたみ掛けるような早口の怒号。
「コブラ? 尚更殺したら駄目‼︎
こんな珍しい子、僕が飼う! 」
監視もとい護衛の二人はギョっとする。
話には聞いていたが、この奥方様は相当なじゃじゃ馬だ。
その時、頭上での騒がしさに子蛇が目を覚ました。
黒い目がくるりと動き、先の割れた赤い舌が覗く。
「女神さま⁈ 」
アキラと子蛇はセベクの居間に移動していた。
言葉を理解する小蛇に危険性のない事が確かめられ、アキラは上機嫌だ。
「ぼく、お名前は? どこの子なのかな?
親御さんのお名前は? 」
卓の上に小さな塒を巻いて座っている小蛇。
浅い杯にアキラと同じ蜜水を貰って上機嫌で舐めている。
セベクとセテフが渋い顔をして座っていた。
彼らにはもうある程度の予想がついているのだろう。
「ぼくはコブラ族、族長ヴァジェトの第一子、ネフェルテムです。」
セベクから合図されたハニが部屋を出て行く。
「ぼく、獣人さんなの?
まだ人化できないんだよね?
で、そもそもどうしてあんなめに? 」
ネフェルテムが卓の上を滑るようにアキラの方へ向かってくる。
「ぼく……ぼく、どうしても女神さまにお会いしたくて……御無礼お許し下さい。」
「女神さまって、誰? 」
天然なアキラの呑気な一言。
「おまえの事だろうが。
コブラ族では“ 女神 ”と呼んでいるのだな。」
「鰐王様、ご迷惑おかけしてごめんなさい。」
「明日には迎えも来るだろう。
今宵は泊まって行けばよい。」
子蛇を抱きしめて“キャー”とか“やったー”とか言っているアキラを見て頭をかかえたくなるセベク。
“啼かせてやる”と決意するセベクだった。
「ん……ああ〜っ……セベク……」
艶やかな嬌声に目が覚めたネフェルテム。
アキラの寝所に寝床を設えて貰って、おやすみの口づけまで頂いて、眠りについたのはまだ早い時間だった。
それが……見てしまった……
鰐王と女神さまがまぐわっている。
白くて華奢な身体にグレーの鱗に覆われた身体がのしかかっている。
ネフェルテムはふたりの痴態から目が離せない。
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