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砂漠の悪魔 24
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時はゆっくりと流れていた。
あの後すぐ、セテフはアヌビスへ帰郷し、アビスは中洲から駐屯地に通っている。
砂金の採取と鋳造、加工はアキラの尽力もあり軌道に乗っている。
従事しているのは鰐人、ジャッカル族、そして極々少数のヒト族。
彼らはアキラの婚儀の為のサンダルを仕上げた、ヒトの中でも特に手先の器用な者たちだ。
その彼らは嬉々としてアキラの身を飾る装飾品のみを製作している。
アキラはまず、暦を作った。
スマホのカレンダーを充電が出来なくなった時の為に、パピルス紙に書き写した。
充電器は落下荷物の中から奇跡的に無傷のソーラー充電器をみつけて使用している。
暦の作業をしていて気づいた事。
それは、今日は12月1日だということ。
アキラはふと…… 毎年の習慣を思い出した。
日本でも、アメリカでも、フランスでも、初日の出は見に行っていた。
…… 今年は?
New Year
アヌビスの領地と海の間には広大な砂漠地帯が横たわる。
海に向かう一本の道【ロード】から外れる、という事は即ち死を意味するのだが今日は少し様子が違う。
日没前から大隊規模のアヌビスの軍団が夜営の準備を始めていて、天幕の様子から身分の高い人物が訪れるようだ。
砂漠の民には今日の演習の事は事前に知らされていたが不可解さに首を捻る者も少なくなかった。
sideアビス
アキラが珍しく我が儘を言った。
叶えてやるために俺と叔父上は走り回る事になったのだが、愛しい妻の可愛いお願いだと思えば…
全然可愛くなかったが。
日の出が見たいと、出来れば海で。
と、言われた時俺は我が耳を疑った。
海がどれだけ遠いか、縦しんば砂漠に行くとしてもどれだけ危険かこんこんと説いたが言うことを聞かない。
そしてあろうことか俺が駄目なら鳥に頼むと言い出す始末。
叔父上に相談し、鰐王の許可をとり、軍を動かす算段をして今日を迎えた。
流石に大隊を動かすのは大袈裟かとも思ったが何があるか解らない土地だ。
念には念を入れて…ということで、鰐館からはアキラに付いて鰐王どころかハニを始め数人の護衛がやって来た。
鰐が砂漠に来るなどはっきり言って非常事態だ。
ジャッカル族の者でも初めて彼等を見た者が多くてその姿に仰天していた。
しかしこの砂漠で平気なのは相当な実力者の証だ。
アキラが薄手の布をすっぽりと被り鰐王に縦抱きされて手を振っている。
思わず振り返してやると嬉しそうに笑っていた。
で、俺はというと後で兵達に散々からかわれる事になる。
sideアポピス
夜明け前、鰐王一行が来ている事を報告された蛇の王が動いた。
夜営地から離れた岩場の影からそっと様子を伺う。
もうすぐ日の出という時、一際大きく立派な天幕から橡のアビスと射千玉のセテフが姿を現した。
珍しい。
アビスはともかくセテフが夜営地に足を運ぶなど一線を退いてから無かったこと。
続いて鰐王セベクが何かを大事そうに抱えて出て来た。
数人の護衛がそれに続く。
鰐人だ。
こんなところに鰐人がどうして?
sideアキラ
僕の我が儘が随分と大掛かりな事になってしまった。
アビスに今日の日の出をどうしても見たいのだと今日にこだわっていることを説明するのも大変だった。
この世界には暦はない。
だが、セベクのところの川の治水事業に使う表と僕のスマホに入っているカレンダーを照らし合わせて、今日が新年一月一日だということは随分前から解っていた。
ここの住人に新年の概念はない。
強いて言えば7月半ばの川の氾濫が始まる日か。
でも僕はHappy New Yearがしたかった。
もう帰れない世界だけど出来るだけ同じようにしたかったんだ。
涙がこみあげてくる。
今更ながら、元の世界に帰れない事を実感して……
「寒くないか? 」
セティの胸にしっかりと抱かれて、一瞬微睡んでいた僕は目を開けた。
目の前にはセティ……
頤を捉えられ、口づけられる。
長い舌が這入ってきて、咥内をひとまわりして出ていく。
それだけで僕の鼓動は高鳴り、血液が沸騰するかのようで……
寒いわけないじゃん。
スンと鼻を鳴らして抱き締め返すと旋毛に唇が落ちて来た。
セティは嬉しそう……
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