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悪魔の恋情、死神の慕情 8
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「母上様……ははうえ……? 」
コブラの族長の居室に6〜7才の少年が入ってきた。
彼は先日、漸く人型をとれるようになった嫡子ネフェルテム。
いつもの卓に着き、立って出迎えたのはいつもの母ではなかった。
「ネフェルテム、どうした? 」
その声は心地よく響くのだが、低い。
レモンイエローの髪は結われずに下ろされている。
紅をひいていない。
だがその唇は緋色に濡れ光っている。
いつもは嫋やかな身体を長衣で包んでいるのだが、上半身は裸。
人型をとるときに形成される柔らかな胸の膨らみもない。
「あの……ははうえ?」
「ああ、すまない。
こちらへおいで。」
にこやかに笑んだ “ 美丈夫 ”がネフェルテムをいざなう。
「久し振りに “ 本体 ”に戻ってみたのだよ。
私は雌雄同体だが、本来は男性体をとるものだからな。」
衝撃のあまり、硬直してしまったネフェルテムになお追い打ちをかける。
「100年振り……くらいか?
館のものでこの姿を知るのは数人の老女くらいか……
仔を得る為に女性化していたが、お前も生まれた事だしな。」
唖然として “ 父 ”を見上げるネフェルテムは重要な事を思いだした。
「あの……はは……いえ、父上様。
中洲の……女神様のところへはどうなさるのですか? 」
“ 父 ”は一瞬で見慣れた “ 母 ”へと変わった。
「勿論、この姿で参りますよ。」
美しい “ 母 ”がにっこりと微笑んでいる。
「アビス…… 」
「アキラ! 」
ふたりが貪り合うように唇を重ねている。
褥を出て、沐浴中でもこの有様。
アビスとアキラは言葉だけでなく、唇でも、身体中を絡め合ってでも愛を確かめ合う。
夕闇が訪れるこの頃になって漸く、アビスの精神状態が落ち着いた。
ぴったりと密着して彼らは慈しみあう。
アヌビスの郷のセテフの館。
居室の隅に憶えのある気配を感じてセテフは顔をあげた。
彼は現在、非常にストイックに仕事をこなしていたのだが、突然場が凝縮するかのような感覚と共に、白蛇王アポピスが姿を顕した。
「突然、お邪魔する。」
彼は微かにアキラの薫りを纏っている。
「珍しい。どうなされた? 」
セテフは一応、立って出迎えて敬意を示す。
対してアポピスは勧められた椅子に座り、饗されたワインを嗜む。
「実は、提案があって参った。」
「アキラの事か? 」
「然り。」
セテフはアポピスを見つめた。
昨日まで共に過ごしただろうアキラの一体何を⁈
「私はアキラを砂漠とアヌビスの中間に館を建てて住まわせたいと思っている。」
一瞬、アポピスの言葉に心が揺れる。
セテフがくつくつと笑った。
「私がそれを考えなかったとでも?」
「では⁈ 」
「セベクを殺したら、永遠にアキラを失いますよ?
あの子は聡い。
すぐに私達の “ した事 ”に気づくでしょう。
そしてアキラは私達を絶対に許さない。」
僅かに頬を染めたアポピスと睨み合った。
「いつか……機会が廻ってくる事もあるでしょう。
それまで、今の話は胸に閉まっておきませんか? 」
セテフがうふふ……と、残虐な獣の目で嗤う。
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