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悪魔の恋情、死神の慕情 13
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「アペ⁈ どうしてここへ? 」
抱きついて離れないアペデマクにアキラは戸惑う。
「それに前より大きくなってない?
あれからそれほど経ってないのにどうして……? 」
アペデマクの指が唇に触れ、言葉を止められた。
そして重なる唇……
アキラは吃驚して……只々吃驚して言葉はおろか、全身を硬直させて、されるがままだった。
“ ちゅっ ”
「天女さま?
もうすぐアペも天女さまの夫君になれます……修練も勉強も天女さまに相応しい雄になれるように頑張っています。
ああ……こんなに早くお逢い出来るなんて思ってもみなかった…… 」
アペデマクの唇が頬や頸に押しつけられた。
デンウェンが感慨深げに見つめている。
“ チビ獅子が大人への階段を駆け上がっている ”
「とりあえず、ちい姫は目立つんだからベールを取っちゃ駄目だよ。」
デンウェンは慎重に包み直すと、全員を四阿に誘った。
そのあとを注意深く風下からついて来ている一つの影に、誰一人気付く者はいなかった。
「どうして僕がここに来ている事がわかったの? アペ。」
己の横に座り、腰を抱き首筋に顔を埋めているアペデマクを押し退けるようにして言う。
代わりに多少呆れ返った表情のデンウェンが答えてくれる。
「ちい姫がひとりでチョロチョロするだろうから応援を頼んでおいたの。
思ったよりも遅かったね。」
「申し訳ない。」
女戦士《アマゾネス》が頭を下げた。
元々西の砂漠のオアシスは蠍人の領域だ。
だがここは通商の要となるため、各部族が入り乱れる治外法権のようになっていた。
しかし、真の領主は蠍王。
彼は今、姿はおろか気配すら感じさせず、この場に存在していた。
蠍王ヘデデトは永く、孤独だった。
蠍人族はこの世で最も忌み嫌われる種族だ。
その見た目、身の内に持つ毒。
たとえ完全に人化したとしても、今の様にオアシスで商業に携わっていたりしても、誰一人心を許そうとしない。
そういう意味では、先程から買い食いをしている “ 蛇竜 ”とその連れは異端だった。
蠍王は、この変わった二人連れから目が離せなかった。
己が他からどう思われて居るかは痛みを伴う程、わかりすぎる程わかっている。
蠍人族で、最も大きく、最も醜く、最も奇異で、最も毒が強い。
一族からも畏怖の目でしか見られない蠍王ヘデデト。
己は何も望んではいけない。
何も求めてはならない筈だった。
「我は…… 」
一行が四阿から出て来ても、アペデマクはアキラから離れようとしない。
肩を抱き、手を握り、アキラの白い肌に所有痕を残そうとしている。
そこに突然の旋風と砂の嵐。
ヘデデトの感情が爆発した。
砂漠の蠍王は悋気したのだ。
初めての砂嵐にあおられて、蹲った身体からアペデマクの手が離れる。
砂塵で視界が奪われたうえに、アキラの目には砂が入り、旋風に巻き込まれるようにして移動しているのにも気づかなかった。
「デンウェン! アペ! どこ⁈ 」
突然、大きな体に抱きすくめられ、動揺するアキラ。
「大丈夫か? 」
「だ、誰? 」
聞き覚えのない声は返事もせずにアキラの身体を砂から庇っていた。
「僕……目が……目に砂が…… 」
「もう少し我慢しろ。」
荒れ狂う砂の嵐のなか、男はアキラを己のマントの中に抱き込んだ。
風と砂のあたる音がますます激しくなる。
「チッ……あの野郎……
何を荒れてやがる。」
砂塵旋風は始まった時と同じように、突然終わりを迎えた。
ナイアーも素早くアキラの身体を離した。
「姫君……再びお目にかかれるのを……」
男の声は砂に紛れるようにして消えて行った。
「アキラっ‼︎ 」
デンウェンが……デンウェンの声が駆けつけてくる。
「デンウェン‼︎ ここ! 」
「天女さま! 目が⁈ 」
アペデマクがしっかりと抱き締めた。
「砂が入っただけ。
綺麗な水を用意してアペ。」
「デンウェン、セティのところに連れて行って。」
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