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悪魔の恋情、死神の慕情 33
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暗紅色の目がキョドキョドと泳いでいる。
オリーブグリーンの歩脚が一瞬ブルブルと震え、3歩後ずさりした。
踵を返して立ち去ろうとしている大蠍を、アキラは大声で呼び止めた。
「待って ‼︎ お願い。待って! 」
裸足の足で駆けながら近づいて来るアキラを見つめる大蠍……ヘデデトは戸惑い、焦っていた。
よりによってこの姿で遭遇するとは……
ヘデデトは強い絶望感に囚われていた。
「待って! 待って! 行かないで。お願い! 」
大蠍はアキラと向かい合うと動きを止めた。
地面についた触肢がフルフルと揺れている。
「貴方は獣人さんなのでしょ? 」
大蠍がコクリと頷く。
「貴方は……僕の旦那様になるひと……? 」
後ずさりと前進を繰り返し、漸く大蠍は頷いた。
ヘデデトは、もう終わった……と。
始まる前にすべてが終わってしまったと、絶望した。
その視線は知らず知らずのうちに下がって、今は地面を見つめている。
「あの…… 」
戸惑いがちのアキラからかけられた言葉。
「僕、アキラと言います。
貴方のお名前は? 」
「我の名はヘデデト。
はじめまして、アキラ殿。」
大蠍がチラチラとアキラを見ている。
アキラの黄金色の髪が陽の光を弾いている。
色白の肌を白い衣に包み、その瞳と同じ蒼い帯を締めている。
薄手の衣からはその下の肌が透けて見えそうだ。
頬を薔薇色に染めたアキラがヘデデトを見つめ返してくる。
視線を下げたヘデデトは気づいていないがアキラの目は喜びに輝いている。
目の前の大蠍……ヘデデトの姿。
モスグリーンの身体にオリーブグリーンの肢脚。
暗紅色の目。
現代ではデスストーカーと呼ばれる、史上最強の毒蠍。
紛れもなくヘデデトはデスストーカーのプロトタイプだ。
……アキラは喜びに震える……
あまりにも毒が強く、あまりにも凶暴ゆえ個人が飼育する事が固く禁じられていた蠍。
憧れていたが手に入れられなかったデスストーカーが目の前にいる。
しかも、この蠍は自分のモノなのだ。
「触っても……いい? 」
「アキラ殿? 」
「触ってもいい……よね? 」
繊指が伸ばされて頭部に触れる。
ヘデデトの身体がピクリと震えた。
「嬉しい ‼︎ 」
突然抱きついて来た……
憧れてやまなかったあの子が自分に触れている。
……何かの間違いか?
絶望のあまり狂ってしまったのだろうか?
「旦那様。
これからよろしくお願いします。」
視界が遮られて、眉間に柔らかい感触を感じる。
アキラの唇が触れた場所から全身に熱が広がっていく。
アキラからの口づけを得たヘデデトの目が涙で潤んでいった。
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