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悪魔の恋情、死神の慕情 34
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「我が怖くないのか……? 」
ともすれば、嗚咽で掠れそうになる声で、ヘデデトはやっとのこと言葉を発した。
「どうして怖がらなきゃいけないの? 」
アキラが、訳がわからないといった表情で見つめ返してくる。
その手は、硬くもなく柔らかくもないヘデデトの頭部を撫で摩っていた。
「我は……こんな姿をしていて……皆は我を嫌う……。」
ヘデデトの低い頭部の位置に合わせて、地面にぺたりと座り込んでいるアキラが、蠍の下顎の下に手を差し入れて顎を挟み込む。
そのままヘデデトの顎を持ち上げ自分と視線を合わせた。
「そんなの皆の方がおかしいよね?
貴方はこんなに綺麗なんだもの……
僕は大好きだよ……。」
アキラはうっとりとした目で大蠍を見つめた。
目の前の歩脚のオリーブグリーンと頭腹部のモスグリーンのコントラストの美しいこと。
「我は…… 我は…… 」
「泣いてるの?」
アキラはヘデデトの暗紅色の硬質な目から涙が溢れ落ちるのを見逃さなかった。
衣の裾でそっと拭いてやる。
「我は厭われるもの、恐れられるものだ。
醜くて疎まれる…… 」
「僕は貴方のこと恐くないし、嫌じゃない。
貴方は僕が臥せっていた時、お見舞いの品を贈ってくれた優しいひと。
貴方の纏う色は蠍の中では最高に綺麗。
毒はしょうがないけど、僕に使ったりしないでしょ? 」
アキラがにっこりと笑む。
ヘデデトはあわてて頷いた。
アキラの唇がヘデデトの目元に触れる。
「僕が愛してあげる……。」
「アキラ殿っ ‼︎ 」
一瞬でヒトガタをとったヘデデトに抱きしめられる。
アキラの腕がヘデデトの背中に回される。
膝立ちになったふたりはしばらくの間そうしていた。
「ヘデデトさん…… 」
ヘデデトには、自分に何が起こったのか理解できなかった。
一瞬で頭の中が真っ白になってしまって……気づいてみたら、最愛の存在が自らの腕の中に……
「っ! すまない…… 」
バツが悪そうに離れようとする目の前の男の手を握り締めて、アキラはその容姿をしげしげと見つめていた。
頭腹部のモスグリーンと脚部のオリーブグリーンは、ほぼ半々のメッシュとなってその髪に現れていた。
纏められていない、腰のあたりまで伸びた髪はあまり手入れされていないのだろう、あちらこちらが跳ねている。
蠍の時には硬質な感じの否めなかった目は
暗紅色の柔らかい色を浮かべている。
褐色の肌は艶やかに光っている。
……このひとのどこが醜いって言うの?
思ったよりも随分と若い容貌の彼……ヘデデトはどうやらアキラとさほど歳が離れていなさそうだ。
身長も、膝立ちしている状態ではあまり変わらないように見受けられる。
アキラは、上目遣いでヘデデトの目を見つめた。
しっかりと筋肉はついているが、まだまだ少年体の域を出ないヘデデトの肩に手を置いて、片膝立ちになって伸び上がったアキラが顔を近づけていく。
“ ちゅっ、ちゅ ”とヘデデトの口角のあたりに啄ばむようなキスをして、最後にヘデデトの形の良い唇を食むようにして唇を重ねた……
ヘデデトは再び、世界が真っ白になって動けなくなる。
……アキラからの口づけ。
それはヘデデトにとって、生まれてはじめての “ 口づけ ”だった……
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