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悪魔の恋情、死神の慕情 53
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蛇族の身体能力で優れているのは嗅覚だけでは無い。
嗅覚と並んで、早くに獲物を感知する為に優れた熱探知能力を擁する。
今回はその能力でまだ部屋の外に居る段階から、アキラの異常を察知出来たのだが、彼は直前まで普段通り侍女たちと会話しており、一切の異常を感じさせなかったという。
突然の発熱は皆を慌てさせた。
まずはヴァジェト。
「ネクベト、至急クヌム殿と鰐王殿に連絡を!
それからデンウェン殿とアビス殿を呼び戻して ‼︎ 」
ネクベトが頷いてテラスへと飛び出していく。
珍しい……ネクベトが鳥化して離昇する。
禿鷲という種族の雌としてはかなり巨大な体長を誇るネクベトは、さほどの距離で無ければ成人の獣人を乗せて飛べるほどの持久力を持ち合わせている。
その彼女がクヌムを乗せて戻って来る前に現れたセベク。
どうやら中洲に居たようだ。
老女やハニらを引き連れ、血相変えて飛び込んで来た。
慌てふためく鰐王……
前回のネフェルテムの一件の時は事後報告だったのでこれほどの状態は……初めて見る。
「一体何事だ⁈ 」
取り乱しそうになるのを意思の力でギリギリ堪えている……セベク。
褥に近づいてみると、先ほどヴァジェトたちが入室した時には辛うじて有った意識が今は無く、多少荒い呼吸と高熱ゆえ上気した肌から異常を感じさせる。
触れてみると……熱い。
「アキラ……どうして? 」
「クヌム殿が参られてからでないと正確な事は申せませぬが……
どうやら私が失敗したようです。」
「ヴァジェト殿? 」
「微かにコブラ毒の香りがします……。
ネフェルテムの毒が特殊なのでしょう。
私の上書きが完璧では無かった……という事です。」
西の砂漠のオアシスでは、ヘデデトの負の感情に呼応して砂を巻きあげた竜巻と稲妻が荒れ狂う。
砂漠にはあり得ない、雨まで降り出した。
それはまるで……ヘデデトの涙のよう。
頭が真っ白になってしまったヘデデト。
実はそれには訳がある。
ヘデデトにはある恐れがあった。
アキラと結ばれて夢見心地で忘れがちだったのは、己の体液がアキラの身体に影響を及ぼさないか?……という事。
アキラの懇願に負けて、かなりの量の子種を注ぎ込んでしまった。
……蠍人の体液に毒が含まれているなどとは聞いた事も無いが、あの様な交わりをしてしまって考え無しだった。
もしも……もしも、この自分の毒が原因でアキラが苦しんでいるのだとしたら……?
「ヘデデト殿……
一刻も早くアキラの元に行きたいのなら、少し感情を抑えてもらえないかな?
こんな嵐の中、いくら俺でも飛ぶの無理。」
「す、すまない。」
ヘデデトは、一息吐いて目を閉じた。
そして次に目を開いたとき……今までの荒天が嘘のように晴れ渡っていた。
「じゃあ、行くよ。」
最大限に巨大化したデンウェンが飛翔する。
その掌の中で、ヘデデトは自分が果実の入った籠をしっかりと抱えていた事に初めて気がついた。
「デンウェン殿、わかっている事を出来る限り詳しく教えて欲しい。」
「俺も大して知ってる訳じゃない。
呼び出されてすぐに、最優先で貴殿を連れて来るように頼まれた。
あと、今朝まで……というか直前までピンピンしてたらしい。」
「ああ……アキラ……! 」
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