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悪魔の恋情、死神の慕情 56
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「一体、病で臥せっているものの枕辺で何をしている⁈ 」
怒りのオーラと、絶対的な存在感を醸し出して射千玉のセテフはそこに居た。
「叔父上…… 」
「セテフ殿 ⁈ 」
射千玉のセテフ……
アヌビスの……ジャッカル族の長。
【戦神】
刃を交えた事は無いが、剣歯虎の一件は伝え聞いている。
何が気に障ったのか知らないが、種族すべてを滅ぼしたその気性の激しさ……
その漆黒の瞳で睨めつけられると、さすがのヘデデトすら畏怖を覚える。
ヘデデトは出したままだった尾を収め、ナイフを鞘に戻した。
「暫くです。セテフ殿。」
「ヘデデト殿もお変わりなく。」
うわべだけの、感慨も何も無い、言葉がただ滑り落ちているだけのような挨拶。
次の瞬間、セテフは睨みつけるような視線を外して、褥に近づいていった。
枕辺に腰を降ろす。
怒りに吊り上がっていた眉が苦しげにひそめられてアキラの顔を覗き込んだ。
「ラー…… 」
掌が頬に触れて唇が額に押しつけられる。
「熱いな……前回よりも熱は高いようだが…… 」
振り返ったセテフは厳しい目をセベクに向けた。
「氷はどうなっている? 」
「とりあえず、第一便としてホルとトートを向かわせた。」
「俺もすぐに向かうよ。
ちい姫……待っててね? 」
デンウェンが、汗に濡れた髪を一撫でして出ていった。
「クヌムは何をしている? 」
「今は薬を取りに家に戻っている。
とりあえずは…… 」
ヴァジェトが口をはさむ。
「お話の最中、申し訳ございません。
今は……ネフェルテムが到着するまでは対処療法しか出来ないのです。」
「ああ……ラー…… 」
再びアキラの側に取り付くと髪を梳いて額に口づけた。
「かわいそうに……私のラー……
早く目覚めて私に笑いかけておくれ…… 」
「起きてるよ。」
金色の睫毛に縁取られた瞼がゆっくりと開かれ、蒼い瞳がセテフを見つめる。
少し離れた場所に居たヘデデトがギョっとして、瞬時に少年体に変化した。
「ラー、いつから? 」
喜びか、戸惑いか。
複雑な表情の皆をさて置き、セテフが口づけようと覆い被さってきた。
「この騒ぎで目が覚めないなんて……それって既に死体でしょ? 」
「なんて事言うの ⁈ アキラっ ‼︎ 」
大声で叫んだヘデデトが褥に飛び付いて、再び大泣きし始める。
「アキラ、アキラ、アキラ、アキラ…… 」
「ヘデデト⁈ 来てくれたの? 」
「アキラ、アキラ……心配したよ?
生きた心地がしなかった……
我は……ずっと、アキラの側に居たい。」
ヘデデトはアキラの身体に掛けられた上掛けを握り締めて、ぐずぐずと泣いている。
「無茶ばっかり言って……
そ・れ・よ・り ‼︎
僕、前の時に皆に言ったよね?
僕が熱を出したりした時は伝染る病気かもしれないから過剰な接触はしたら駄目って ‼︎ 」
「ラー……私はラーの為なら伝染るのも構わない。
心配なのだよ……愛しいラー…… 」
壮絶な男の色気を振り捲いてセテフの顔が近づいてくる。
「だから、駄目だったらぁ…… 」
「アキラ、アキラ……もう離れてなんか居られない‼︎
我も中洲に住む! 」
ヘデデトの爆弾宣言に皆は呆気に取られた。
後日、退位云々の一件を知ってますます呆れ果てる事になるのだが。
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