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悪魔の恋情、死神の慕情 60
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「……ヘデデト? 」
湯槽の中でセテフの膝に抱かれて、その胸に頬を寄せて凭れかかっていたアキラが、目を開けて顔を上げた。
すぐにセテフの唇が降りてくる。
「ラー……目が醒めたかい? 」
セテフの口づけは優しく……そして激しくなっていく。
……されるがままになっていたアキラが身じろいで唇を離す。
「ラー……? 」
「セティお願い……
皆のところへ連れて行って。」
「可愛いラーのお強請りだから、聞いてあげたいけど……この状態でその様な事を言う? 」
「おねがい……今夜はずっとセティのそばにいるから……。」
上目遣いで見つめてくる瞳が潤んでいる。
「しょうがない子だね…… 」
頤に手を添え、唇を奪う。
“今は……ここまでで許してあげる ”
「ヘデデトが啼いてる…… 」
ゆったりとしたガウンのような寝間着を羽織り、まだ生乾きの髪のまま現れたセベクの応接室。
その床に蹲ったままのヘデデトの元に駆け寄ると抱き起こして、抱き締めた。
「どうしたの?ヘデデト……
誰かにいじめられた? 」
「アキラ……我は…… 」
顔をあげたヘデデトは、再び顔を歪ませた。
ポロポロと涙が零れ落ちる。
「セベクに何か言われたの? 」
「違う……。
アキラ……我はアキラに謝らなければ…… 」
「何馬鹿な事、言ってるの…… 」
ギュッと抱き締めて頬にキスしてやる。
「ヘデデトの泣き虫さん。
またお城を留守にして大丈夫なの?
僕は会えて嬉しいけどね。」
アキラがにこりと笑う。
「アキラ……身体は?
こんなに動きまわって……寝てなくていいの? お熱は大丈夫? 」
「んーーっと、汗をかいたら下がったみたい……身体も楽だよ。」
そこに気を効かせた老女が、皆に飲み物とヘデデトが持参した果実を氷水につけたもの……を持って現れた。
「アキラ……約束した果実。
持ってきたよ。
今、皮を剥くね。」
茘枝に似た果実にスリットを入れ、上下に揺すって器用に皮を取り除いていく。
剥けた実から種をとってアキラの口に放り込んでやる……
蠍王の……ヘデデトのこんな姿を誰が想像しただろうか?
床にペタリと座り込んだふたりが、さながらままごとの夫婦のように仲睦まじく過ごしている。
「ヘデデト、この果実すごく美味しい。
わざわざ採りに行ってくれたの?
ありがとう。」
果汁でベタベタになった唇でヘデデトに口づける。
その様を冷たい眼差しで見つめている夫、セテフ。
セベクも黙ってはいるが、心中穏やかでは無い。
アビスは叔父の、表面には現れない澆薄な怒りに怖気を震う。
「ラー……そろそろ寝所に戻ろう。
いくら熱が下がったとはいえ、無理はいけないよ。」
優しげな笑みを浮かべるセテフの胸の中は煮えくりかえっている。
今の言葉とは裏腹に、閨に連れ込まれたアキラはこの後……。
セテフに抱き上げられたアキラが退室していくさなか、ヘデデトに声をかけた。
「大好きな僕の蠍さん……また明日ね。」
セベクとアビス。
三人で残されたヘデデトが青年形態をとった。
ゆっくりと振り返ったヘデデトは最早、先ほどまでの彼ではない。
暗紅色の瞳は冷酷な光を宿し、口角は皮肉に曲がっている。
「鰐王殿、こたびの一件、我に任せてもらえないだろうか? 」
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