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彷徨うもの 6
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鰐館のアキラの為の居間。
身体を休められるように、くつろげるように設えられた寝椅子にその身体を凭せ掛けてこれから訪れる客人を待っているところだ。
実は朝から一悶着あった。
セベクの腕の中でうとうととしていたとき、突然の冷たい気配に覚醒してみると、そこには白蛇王アポピスの姿が。
彼は、上体を起こしたセベクと睨みあっている。
ぼーっとしたまま二人の遣り取りを聞いてみると何やら揉めているようだ。
「……だから、何故もっと早く報せなんだか、と聞いている。」
普段、アキラが聞いたこともないような厳しい声が事態の深刻さを表している。
「毒抜きの為の人選を優先しただけだ……そのあとすぐに貴殿にも使いを出している。
昨日中に到着出来なかったのは申し訳なかったが……
? アキラ? 目醒めたのか? 」
「ん……おはよ……? アポピス? 」
「precious‼︎ 大丈夫ですか?
辛いところはない? 」
いつも優雅な物腰のアポピスにはみられない粗暴な動きで褥に近づいてきて、髪が乱れるのも気に留めずいきなりアキラを抱き締めた。
「報せを受けて……飛んできました。
心配しましたよ……
もう熱は下がったようですね……
よかった。」
悲愴な面持ちでいたアポピスが最後にやっと微笑んだ。
泣き笑いのような笑みは、いかに心痛めていたかを表している。
「ごめんね……心配かけて……
もう熱は無いと思うよ。怠くも無いし。」
「蠍に何かされたのかと……気が気でなかったですよ。」
「ヘデデトはそんな事しないよ。」
蠍王の名を口にしたときに、その顔を僅かに紅く染めたのを、アポピスは見逃さなかった。
玲瓏なアポピスの心の中でチリチリと嫉妬の焔が燃えあがる。
「アポピス……来てくれて嬉しい…… 」
長衣に包まれたアポピスの腕に抱かれて、しな垂れ掛かって上目遣いで見つめてくるアキラ。
その様子に機嫌を上昇させて、目を細めるアポピスに口づけを強請ると望みはすぐに叶えらる。
そのときセベクは、アキラのアポピスに対する扱いに舌を巻いた。
寝椅子から少し離れた卓にはセベクとアポピスが着いている。
揉め事の種にしかならないアビスとヘデデトは別室で待機させられているらしい。
一つところに一緒に居ると闘いが始まりそうな二人を一室に放り込んで大丈夫なのだろうか。
ネクべトの控え目な声が客人たちの入室を告げる。
ヴァジェトと共にやって来たネフェルテムを見て、アキラは相貌を崩して笑んだ。
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