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彷徨うもの 8
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アキラの左手がネフェルテムの、一切損なわれていない右頬に触れる。
ふいに、今まで傷に触れていた唇が離されて、一度顔を引いたアキラが微笑みを浮かべた。
「ネフェルテム…… 」
悪戯っ子のような笑みを浮かべてアキラは再び顔を寄せる。
その唇はネフェルテムのそれに重ねられた。
三人の夫達の息を呑む気配がする。
ネフェルテムの身体は硬直した。
アキラの腕がネフェルテムの首に絡まり、引き寄せた頭をしっかりと抱いて “ 食む ”
ネフェルテムの唇を、口角を、自らの唇で愛でて、その舌で歯列を割る。
その、ネフェルテムと比べると子供のような舌で彼の二股に分かれた舌を絡め取ると強く吸って……唇を離した。
「だから……浮気しちゃ駄目だよ? 」
ネフェルテムの耳朶をペロリと舐め、サッと身体を離した。
次の瞬間。
「セティ、僕疲れちゃった。
あっちの部屋に連れて行ってくれる? 」
初めからずっと、腕組みをしたまま厳しい顔で壁に凭れていたセテフが、僅かに表情を和らげて近づいてくる。
目の前のご馳走を取り上げられたような、何とも情けない顔をしたネフェルテムを押し退けるようにして、セテフはアキラを抱き上げた。
身体に負担がかからないように姫抱きして寝所へと向かう。
「また明日ね。」
ひらひらと手を振るアキラの後を、衣擦れと髪を引き摺る音を残してアポピスが追う。
「ラー……私はあのチビにあそこまでしてやる必要は無かったと思うがね…… 」
セテフの横顔は少し厳しい。
「私もそう思いますよ……precious 」
後ろに続くアポピスの表情はもっと硬い。
彼は……怒っている。
「うん……僕も少しからかいが過ぎたと思うよ。
ちょっとヤバかったかなぁ……? 」
ははは……と元気なく笑うアキラの様子からは、見た目以上に疲弊しているさまが見てとれる。
それほどになるまであのチビを気遣ってやったという事に、セテフは憤っていた。
居合わせた夫達にはちゃんと解っている。
アキラが戯れにネフェルテムを弄んだわけではない事を。
非公式だが、ネフェルテムを夫として認めて、彼の不安を取り除いてやった。
その心遣いに……悋気する。
「アキラはかなり疲れている。
今宵は夜這いは許さないぞ。」
「鰐王様…… 」
心の中を見透かされたようで、バツの悪い顔をしたネフェルテムが言葉を続けようとする。
「暫く滞在するのだろう?
今宵はゆっくり眠らせてやれ……
と、言っても……
はたしてあの二人が大人しくしているかどうか……だな。」
ニヤリと、からかいを含んだ笑みを浮かべネフェルテムに向かって退出を促すジェスチャーを送る。
それに従うネフェルテムの複雑な心境を読んでいたものは、本人を含めて誰もいなかった。
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