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彷徨うもの 19
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あまりの衝撃に、側近達の顎が外れかけた。
……開いた口が塞がらない……
まず、天女殿に対しての態度。
誰にも見せぬ、話させぬ……と言わんばかりの強烈な独占欲。
この可憐さでは無理もないが。
次は天女殿に対する口調。
……主が少年体をとっている事は前回の随行者から聞いて知っている。
最初は天女殿を怯えさせない様に……との配慮だったという。
だが今は……主はその姿を利用してべったりと ” 甘えて ”いる。
そして、側近達が一番驚愕した事。
主は、天女殿からの一撃を甘受して……悦んでいるのだ。
「ヘデデト? 一体どういう事? 」
「あの〜 えーっと…… 」
めったに無い事だが、アキラのこめかみに青筋が浮いている。
「 “ 退位 ”ってなに?
なに考えてるの?
ちょっと、そこに座りなさい。」
「我は座っているよ? 」
「膝立てて座ってなんて行儀の悪い。
ちゃんと座りなさい! 」
ヘデデトは長い脚を組みなおして胡座をかいた。
アキラは本当は正座させたかったが……
今日のところはこれで我慢することにする。
「アキラ……怒ってるの? 」
アキラの様子がいつもと違う事に気がついたヘデデトが恐る恐る尋ねてくる。
「当たり前でしょう⁉︎
統治者が国を放り出すって、なに考えてんの‼︎
まったく、信じられない!! 」
「我はアキラも喜ぶと思って…… 」
「お馬鹿ーっ!!! 」
ふたりの遣り取りを側近達が手に汗を握って見つめている。
『お妃様。もっと言ってやって下さい!』
これが全員の総意だ。
「ヘデデトは砂漠の蠍人国の王様なんでしょう?
王が自分の都合で、それもぼ、僕と一緒に居たいからなんて理由でおっ放り出すなんて、あ・り・え・な・い!! 」
「じゃあ、じゃあアキラが一緒に来てくれるっていうの⁈ 」
必死の形相のヘデデトが膝立ちになり、アキラの腕に取り付いた。
アキラが溜息をつく。
「ヘデデト……年の近いアビスだって、ちゃんと軍のお仕事をしてる。
セティと交代でアヌビスに帰っても不平不満なんて言わないよ?
ずっと年下のアペデマクだって勉強や鍛錬を頑張ってるって、僕の夫として恥ずかしくないよう頑張るって言ってたよ?
……確かに離ればなれは悲しいけど、我慢しよ? ね? 」
アキラを見つめる暗紅色の瞳がみるみる潤んでくる。
大粒の涙が目尻に溜まり、ヘデデトはしゃくりあげだした。
「やはり……アキラも、我を……厭うのか……? 」
アキラの金色の眉がひそめられる。
「もう……ヘデデトったら……
そんなはず無いじゃん…… 」
一気に怒りが引いたアキラは、自分よりふた周りは大きなヘデデトを、その胸に抱き締めた。
漸く背中に届く手で、赤児をあやす様に優しく撫でてやる。
「大好きな僕の蠍さん……
きつく言い過ぎたね? ごめんね?
ヘデデトは一緒に居たかっただけなんだよね? 」
アキラの眦から瑠璃玻璃の雫が零れ落ちる。
そのまま、泣き笑いの表情でヘデデトの頬に触れ、唇を押しつけた。
「何か……考えるから、退位は取り消して?
それに今起きている事件?が落ち着いたらヘデデトのお国にも行けると思う……
蠍の国の地下宮殿って凄いのでしょう?」
今までと違う、気分が高揚する話題に差し替える……アキラの話術は宰相らを唸らせた。
「わかった。退位は取り消すよ。
アキラが来たときは王としてもてなす……
ゴタゴタはすぐに片付けてあげるからね。」
アキラの唇がヘデデトのそれに重ねられる。
このまま繋がりかねないふたり……
昼下がりの甘いひと刻にまたまた目を丸くする宰相達であった。
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