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彷徨うもの 20
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鰐館の来賓用の居室。
真夜中に集まった5つの影。
彼らは今、砂漠の地下に住む者の言葉で話している。
『アキラ様。真、得難い姫じゃ……。』
『お姿もお美しく、機知に富む……
何よりも王がべた惚れですな。』
『あの王が……人の話に耳を傾けるなど……あり得なかった事。』
『お優しゅうございましたなぁ。』
爺は思わず涙を浮かべる。
『いやいや……お怒りの時のお顔も中々。
儂も叱られたい…… 』
『これ…… 』
『それよりも、あの王の涙を拝めるとは。』
『愛しておられるのですよ。
そして、姫もヘデデト様の事を愛して下さっている……。』
『これはぜひともお迎えせねば。』
『色々難しい問題があると、伺いましたぞ。』
5人は互いの顔を見合わせた。
宰相が “ ふふ ”と笑う。
『儂にお任せあれ…… 。』
翌朝のアキラの寝所。
昼前には発ってしまうヘデデトと最後の時間を過ごしているアキラは、しっかりと抱き締めて離そうとしない彼の腕を解き、手箱を引き寄せた。
向きなおって……箱をヘデデトに渡す。
「どうしたの? これは何……? 」
全裸のままのアキラが微笑んで……
褥の上に座っている。
「これはもともと僕の物じゃ無い。
僕と一緒に落ちてきた荷物の中から拾い上げた物。
今はもういない人の持ち物だった物だけど……作動確認はしてあるし……前のデータは消去してあるから。」
開けようとしないヘデデトに、業を煮やして手を伸ばすと、蓋を開けて布に包まれた
二つの物を取り出した。
平べったい方の布をクルクルと取って、中から出てきた銀色の板を差し出す。
「これ、スマホって言うの。
離ればなれの間、ヘデデトに貸してあげる。」
「ほら! 」
アキラの指がその表面を滑り、差し出された銀色の板の中には……小さなアキラが居た。
ニッコリと笑った小さなアキラが『ヘデデト、大好き……愛してる。』と言う。
吃驚仰天したヘデデトが “ スマホ ”を取り落としそうになった。
「危ない、危ない……
落としたりして壊れたら、もう見れなくなるよ。
取り扱いには気をつけてね? 」
それからの限りある時間の中で、アキラは操作の仕方とソーラー充電器の使い方。
そしてムービーを撮り、カメラを撮って、その見方を教えて最後に囁いた。
「絶対他の旦那様には内緒。
ヘデデト……今回は特別だからね?
わかった? 」
『ヘデデトは特別。』
……都合の良いように言葉を解釈してニヤけるヘデデトに一抹の不安を抱えたアキラは、それを無理矢理押さえ込んで褐色の背中に腕を回した。
出立目前、侍女達による仕度を終えたふたりは最後の甘いひと刻を味わっていた。
一言二言、耳許で囁いたアキラをその腕から解放し、卓の上の文箱から何かを取り出したアキラが、再び戻って来たのをまた抱き締める。
「これも皆には内緒……
まだ試作品だから、イムテップと僕しか知らないよ。」
透明の……メダル型をした水晶の中に金色の糸のような物が閉じ込めてある……ペンダントトップ。
それは革紐に取り付けられていた。
「これは中に僕の髪の毛が入っているの。
抜け落ちた髪では無く僕自らが抜いたもの。
だから血と肉に繋がっていたものだよ。
僕の “ 分身 ”だよ? 」
ヘデデトの瞳が潤んできた。
「僕の “ 姿 ”と “ 分身 ”……
これで暫くは我慢できるね? 」
頷いたヘデデトの目からは大粒の涙が溢れ落ちた。
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