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彷徨うもの 22
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「!! 」
一瞬腰にかかった痛みの後、アキラは鞍上のヘデデトの膝の上に居た。
急上昇の風圧から護るようにしっかりと抱き締めたヘデデトは……嗤っている。
「ヘデデト、一体何を⁉︎ 」
「このまま……追っ手を振り切って……
連れて帰ろうか……? アキラ。」
周りを警戒して四方に視線を巡らす、その横顔はアキラの知らないヘデデトの顔だった。
“ 本気だ! ”
そう感じたアキラの全身の血が凍りつく。
「ば、馬鹿な事言わないで。
早く降ろして! お願い、ヘデデト!! 」
「我と共に行こうよ…… アキラ…… 」
突然の強風とそれに続く、怒号と罵声。
何事かと振り返った肩越しに、ナイフを抜いて走り出したアビスが見えた。
そしてゆっくりと “ 剣 ”を抜くセテフ。
皆が見上げるその先には、大鷹に乗ったヘデデトにアキラの細腰が掬い上げられている。
“ 西の砂漠の悪魔 ”が本性を現したかのような冷たい笑みを貼り付け、その鋭い眼光で地上の者たちを牽制している。
「!! アキラっ! 」
『シャーーッ…… ! 』
音も無く走り出したアポピスが吼える。
そして、その姿が徐々に白銀の本体へと変わっていく……
日の光を浴びてキラキラと輝く鱗が虹色の光を帯び、鎌首を擡げて巨大化しつつ大鷹を追う。
蠢く本体を太く、長く変化させながら本性に近づいていくアポピスは、実は超巨大な身体を持つ “ 妖獣 ”だ。
その本当の大きさを知るものはいない。
一説では、その全長は水晶宮⇔クシュ間に匹敵するという……
勿論、太さも比例してあるわけで、最大化したアポピスにすべてが踏み潰されてしまうだろう。
……その巨蛇が他の事を顧みず、理性をかなぐり捨てて、己の “ 雌 ”を追う。
アキラを戻すべきか逡巡して滞空する大鷹に向かってその身を伸ばしていく姿を、セベクをはじめ同じ蛇族のヴァジェトが呆然と見上げていた。
「馬鹿言ってるんじゃないよ!!
いい加減にしろッ!!! 」
アキラの拳がヘデデトのこめかみにヒットした。
さすがのヘデデトも予期していなかった骨の薄い場所への一撃に……軽い眩暈を覚える。
「いた〜ぁい〜 」
涙目でアキラを見ると……真っ赤になって怒っている。
今度はヘデデトの、頭に昇った血が一気に下がった。
そして、今自分が起こしてしまった騒動がこの後どのような結果をもたらすのか……冷静になった頭で考えて……ゾッとする。
顔を青ざめさせたヘデデトに気づいたアキラは表情を和らげて、おもむろに抱きついた。
「ヘデデト、よく聞いて。
下に降りたら全部僕の話に合わせて。
僕が頼んで上空から中洲を見せてもらったって言うから!わかった?
じゃ、行くね!
アポピス! 受け止めて!! 」
ヘデデトの手を振りほどき、空に身を躍らせるアキラ。
受け止めたくとも今のアポピスには “ 腕 ”が無い。
「precious! なんて無茶をするのだっ!! 」
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