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彷徨うもの 49
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アキラの夫たちの中で、その笑顔を拝む事が難しい御仁……
白蛇王アポピスと並んでそう評されるのはこの亀族の長、アペシュだ。
強靭な鰐族が恐れる獰猛さ。
おっとりとした陸亀種の多い亀族の中で一際異彩を放つ彼は、実はアキラを溺愛していた。
一応、妻帯者ゆえに名目のみの夫……という事になっているが、一度身体を繋げかけた事もあるし、第一……妻、ターメラから『早く契ってしまえ 』とせっつかれている。
目を細めてシリスの膝に居るアキラを見つめていて、突然手を差し伸べられて……アペシュは一瞬、面食らった。
「アキラ殿? 」
しかし。それからのアペシュの行動は早かった。
アキラの腋の下に手を差し込んで、持ち上げる。
痛くないように細心の注意を払って、薄い身体を掴む手に力を籠める。
そして、己の膝に座所を移したアキラから思わぬ贈り物が与えられた……
対面で太腿に跨るアキラの手が、筋肉の浮き上がった肩にかかる。
そのまま膝立ちしたアキラが口づけたのはアペシュの薄い唇。
シリスやトートが目を見張る。
「アペシュさん、ありがとう。
それから……いつもグランマ……いえ、ターメラさんにお世話になりっぱなしで 」
「アキラ殿……あれは喜んであなたの側にいるのですよ。
許されるなら……私もあなたの側に侍りたい…… 」
優美な所作でアキラの手の甲に口づける。
そのまま唇がアキラの手の上を滑っていき、指の股で止まった。
そこをアペシュの舌がチロチロと嘗める。
アキラはあの……水辺でのひとときを思い出して身を震わせた。
アペシュの唇の、舌の、その手による愛撫を思い出して、身の内の焔をふたたび熾し、逞しい胸に頬を寄せる……
優しい目をしたアペシュが改めてアキラを抱き直すと頤を持ち上げて尋ねてきた。
「アキラ殿……お疲れではあるまいか?
夫たちはあと数人……
本来の謁見は始まってもおりませぬ。
この後は……私がお抱き参らせようか? 」
確かにこののちは名目のみの夫が続く。
だが、巧みに席次を配されたアペデマクやネフェルテムも控えている。
「す、少し疲れたけど大丈夫……
次はムネビスさんに挨拶します 」
頷いたアペシュが立ち上がって、向かい側に座るミノタウロスに足を向ける。
その離れぎわ、アキラからもたらされた言葉はアペシュを狂喜させ、混乱させた。
「今度、高台の僕の館に遊びに来て?
夕餉を一緒に……ね? 」
目の下をほんのり朱く染めたアキラが見上げている。
艶を含んだ婀娜っぽい眼差し。
アキラの唇がアペシュのそれを捉えて、そして離れていく……
「ムネビスさん、いつも牛乳をありがとう 」
凄く助かってます……と続けて頬に口づける。
お返しにペロリと舐められてくすぐったさに身を捩っていると、見つめる視線とパタリと目が合った。
アペデマクが凝視している……
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