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彷徨うもの 56
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今宵のアキラの装いは昼の謁見の時とは違い、裳裾をひいていない普段着に近いデザインだ。
だが、その布は透けるほど薄く下に重ねていなければ、乳首まで透けて見えるだろう。
青の濃淡で織られた帯は腰回りに幾重にも巻かれていて、ただでさえ細いウエストを際立たせている。
そして帯飾りは……
金の繊細なチェーンが編み込まれた豪華なもの。
それがアキラの腰を一回りしている。
勿論イムテップの作品だ。
最近、アキラの装飾品や小物などを専門に創造しているイムテップが一族を連れて中洲に引っ越して来た。
中洲の、鰐人の居住区の彼らの住まない高台に、それなりの土地を与えられて工房を立ち上げたのだ。
ここでイムテップ自身はアキラのためだけに、その身を飾る品を造り続ける事になる。
それは、こののち彼が没した後も続き……
献上すべき主はもう……遠に失われていてもその子々孫々、遥か12000年先の未来まで続いている……
そのイムテップが早速呼び出される事になる。
支度に手間取って遅れて入場したアキラは、端の方に位置取っていた鬣犬グループの物珍しさに気を引かれて寄り道していたが、今だ全体像は把握していなかった。
珍しくアキラが歩くのに任せて、後ろをついて歩く鰐王とアヌビスの軍団長。
目の前のアキラは辺りをキョロキョロと見回していて……何かに気づいたようだ。
白獅子族のグループの方に一直線に駆けていくとマヘスの元に近づいた。
「こんばんは、マヘスさん。
皆さんもいらっしゃい…… 」
今宵の酒宴は先ほどの謁見とは違い、夫たちだけではなくその一行も出席を許されていた。
さすがに先程の鬣犬のグループはリーダー自体の数が多く各人が従者を一人連れているくらいだったが、白獅子族ではマヘスの連れてきた側近の他に見事な毛並みの白ライオンまで連れている。
「ご機嫌よう、アキラ殿。
鰐王殿の宴は相変わらず素晴らしいですね。
この通り、くつろがせていただいています…… 」
話し声に気づいたのか、マヘスの膝に頭を乗せて横たわっていた白ライオンが頭をもたげる。
…………
アキラは、今目の当たりにしているこの生き物は存在自体が “ 奇跡 ”だと思った……
それほど神々しい姿。
鬣が無いことから “ 彼女 ”なのだろう。
純白の被毛とルビーのような瞳、それは “ 彼女 ”が完璧なアルビノ体である事を表している。
「なんて綺麗な…… 」
アキラが膝をついて近づくと、身を起こして座った “ 彼女 ”が顔を寄せてきて……上気した頬をペロリと舐める。
ペロペロと納得するまで舐めた後、ゴロゴロと喉を鳴らしてアキラの頸筋に鼻先を押しつけた。
しなやかな筋肉を包む素晴らしい手触りの被毛を撫でて……うっとりとする。
「アキラ殿。駄目ですよ。
“ それ ”は差し上げられません。
……彼女の名はアーサディ、私の番です 」
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