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愛しいひと… 7
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翼のあるもの達は……
あるものは他の夫の依頼を受け、その領地へ飛び、あるものは今だアキラの状態を知らされず、あるものは千々に乱れる心を隠し大空を舞っていた。
トートもアビスの依頼を受けてアヌビスへ向かって行く。
そんななか……
デンウェンはずっと、自分を責めていた。
昨夜、アキラとまぐわったのは4人。
セベクと自分、そして鬣犬2人だ。
常より激しく抱いた自覚がある。
いくら媚薬に侵されていたとはいえ、あの艶やかさ、そして淫らにくねる肢体……
自制などきくはずも無い。
愛しい伴侶に溺れて貪り喰った……
その結果……アキラは今……死に瀕している。
「……っ、ちい姫!」
ヘデデトのたっての頼みで、デンウェンは今、西の砂漠のあるオアシスの外れ……
以前ヘデデトを迎えに来た、あの場所を訪れていた。
『デンウェン殿、お願い申す。
アキラが目覚めたら、あの果実の汁を飲ませてやりたい……
茘枝の実るオアシス、場所はご存知でしょう?』
とにかく最短時間で行き来するために急いで果実を捥いでいく。
そうして、今朝少しだけ垣間見た弱々しい姿を思い出して胸が掻き毟られる思いをする……デンウェンだった。
ホルの場合は最悪だった。
あまりにもシリスに近すぎる為、連絡されることも叶わず、漸く陽が暮れてから、三夜目の宴に出席する為に中洲を訪れて……はじめて事の次第を告げられた。
自分の一切、あずかり知らぬ所で、アキラは傷つき、重篤な状態が続いているという。
ほんの少しだけ……と、招き入れられた寝所で、何時ぞやの発熱した時よりずっと顔色の悪いアキラを見て、思わず駆け寄りその頬に触れて……まるで死人のような冷たさにショックを受けてしまったホルは弱々しく立ち上がった。
数日まえ……
自分の腕の中でほんのりと頬を染めていた様が思い出される。
『喪われるかもしれぬ』
クヌムはそう言った。
沈痛な顔つきのヘデデト……
狂乱の淵に呑まれ、暴走したセテフ。
セベクなど傍に居ることすら耐えられないのか自室に篭っているという。
見聞きする事、すべてが考えを悪い方へと押しやっていく。
いたたまれなくなったホルは足早にその場を後にした。
小鳥のさえずりと蔀の隙間から射し込む陽の光……
早朝の風の匂いがして、アキラは半覚醒の状態から醒めつつあった。
頭にあてられたクッションの下、回されたセテフの腕がピクリと動く。
「セ……ティ……?」
「ラー……目醒めたのかい?」
身体を反転させて、上体を被せるように上から見下ろすセテフ。
そこでアキラは昨夜と違う感触に気づいて自分の身体を覆っているものを見た。
中洲では見たことのない【羽毛布団】に包まれている。
確か以前アヌビスで使ったことがある……
「気づいたのかい?
トート殿に運んでもらったのだよ。
身体を冷やさないように……」
漆黒の瞳が見つめている。
…… “ 愛している ”と、唇が動いた。
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