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愛しいひと… 33
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アキラの異常な状態を報告されたヘデデトは、すぐにデンウェンとともにクシュへとって返した。
自分たちの身体の限界も、周りに与える影響も何もかも無視して、蛇竜が空を翔けるのはこれで2度目だ。
最大級の竜と、普段の倍……6mはあろうかという大蠍が中洲に降り立ったとき、空は暗雲に包まれ稲妻が走っていた。
ふたつの異形が一瞬でヒトガタをとり、アキラの寝所へ駆け込んでいく。
そこでアキラは2人の雄に抱き締められて、安らかな寝顔を浮かべていた。
この【閨】で何が行われていたか……新たに駆けつけてきた2人の雄が即座に気づいたのは必然。
眉を顰め、何事か言わんとしたヘデデトに、黙るように合図を送るとセベクは2人を居室の外に誘った。
セベクの私室で語られた、アキラの悲痛な言葉の数々にヘデデトとデンウェンは絶句した。
思えば、彼らがアキラの【夫君】になったのは他の主要な夫たちよりもかなり後だった。
……底抜けに明るくて、天然なアキラしか知らないが……何事にも最初というものはあるわけで、アキラなりの葛藤もあったのかもしれないとヘデデトは思いを巡らす。
はじめての雄はセベクだった……と聞く。
天から墜ちてきたアキラを褥に引き摺り込んで……
「押さえつけて……無理矢理犯したのか?」
今にも切りかかってきそうな殺気で、ギラギラと燃える目で、地の底を這うような声でヘデデトが、セベクに相対している。
「貴殿が、何を仰っているのか分かりかねる」
「アキラがここに墜ちてきた日の事を言っている。泣きじゃくるあれを組み敷いて無理矢理拓いたのか?と聞いているのだ」
セベクは溜息をついた。
「あいつははじめから【諦観】していた……というか……どう言えばいいのだろう……」
セベクは一度、言葉を切って考え込んだ。
「元々の性格なのか……処世なのか……
怖がっていただろうが……抗わなかった。
繋がるのには2夜かかったさ……
それ程、小さく硬かった……そんなアキラに無理矢理突っ込んだら……裂けてしまう!」
冗談じゃないとセベクも高揚した。
「思えば最初から……ここで生きていく為の術として割り切っていたのかもしれない……本能で感じ取っていたのだろう」
その不安が一気に噴き出した……そんなアキラの悲痛な叫びを思い出してセベクは身を震わせる。
「我は暫くアキラとともにいることにする」
機嫌を損ねた恋人を宥める為に抱く……
そういった単純な事ではないということが雄たちを焦らせた。
「よろしくお願いいたす」
その頃。
セベクがヘデデトとデンウェンを伴って退室して行った後、ふたりきりの褥でセテフはどうすれば己の愛が、一点の曇りも無い真実の愛だと信じさせる事が出来るのかと葛藤していた。
泣き腫らした瞼に口づけて抱き締めてやる。
「愛しいラー……」
そうしていると不思議な程、心穏やかになってきた。
発情期のジャッカルが閨で雌とともに居るというのにだ。
特別な、本当に特別な己の雌……
「ラー……私とともに……」
セテフの、アキラの耳許での囁きは当の本人にも聞かれること無く……消えていった。
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