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人形の話
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つがいである人形を抱いて眠って、いい夢をみて。笑わない身体は心地良くて。
与えられた夢の中でだけ俺は愛を知って。ただその愛だけを信じてここまでやってきたのだ。
嘲りの無い身体。俺を拒絶しない身体。恐れる必要のない身体。人間じゃないから俺を馬鹿にしない、俺を触ってくれる相手、怖がらなくていい相手。向けられなかった愛情の不足を補ってくれる物。
俺を守ってくれるもの。
俺を理解してくれるもの。
僕が愛した、この世で一番美しい愛情の矛先。
僕の中の掛け違えの無い愛着が満たされる場所。
僕の持ちえる尊さから成る、唯一の救い。
僕の求める愛情の形に対する唯一の理解者。
愛情の天敵である、蔑みや軽蔑とは無縁の賜物。
狂おしいまでに求めることの出来る対象。
愛の道化に付き合ってくれる相手。
僕が望んでいるものはこれら全てだった。
人形相手ならば自分の欲深さに気後れしなくていい。
悲しくなって眠る自分の横にいてくれる存在。
一緒に踊れば遠くへ行き。
その間、恐れも恐怖も心に満ちず。
この世の何よりも美しい、と率直な感想を伝えても迷惑がらないだろう。
僕が必要とする時以外、感情を理解しようとしない。
僕の領域に無闇に入り込んで来たりなどしない。
彼を相手に苦しまなくていいことは僕にとって何よりもの救いだった。
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