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うつら、うつらと頭が揺れる。
昨日の夜はなんだか興奮して寝付けなかった。
理由は決まってる。
有坂が俺を友達として認めてくれて、俺のために時間を作ってくれるとまで言ってくれた。
これからアイツとの時間をたくさん過ごせるのかと思えば、ワクワクしてなかなか眠れなかった。
学校に行くのが楽しみだと思えるなんて初めてかもしれない。
今日だって朝練から戻ってきた有坂に挨拶をしようとしたら、向こうから気付いて挨拶してくれた。
本当は休み時間も移動教室も全部一緒にいたいが、アイツはちょくちょく人が訪ねてくる上に気付けばいなくなっている事がほとんどだ。
最初は少し話せるだけでいいと思ってたのに、仲が深まれば深まるほどもっと一緒にいたいと思ってしまう。
とはいえ昼休みを一緒にいてくれるだけだって過去の俺から見れば幸せなことだから、休み時間くらいは我慢するけど。
カクリと頭が落ちる。
やばい、マジで眠い。
俺の授業態度はかなりいい方だと思うが、最近興奮することが多すぎてここにきて一気に眠気が来てしまった。
トロンと目蓋が落ちて、じわじわと意識が遠のいていく。
「そこっ、何を寝ている」
――ビュッと空気を切り裂くような音が聞こえたあと、カンと小気味のいい音が鳴った。
気付けば俺の隣の席の奴にチョークが直撃していた。
危ねーな、なんだ今の。
「あれ?わりー、外した。意外に当たんねーなぁ」
呑気な数学教師の声が聞こえたが、まさか俺にチョーク投げたわけじゃねーだろうな。
まあこの俺にそんなことをしてくる奴はいないだろうと思っていたが、ありえないことに授業後に呼び出し食らって注意された。
別にテストは高得点取ってるんだからいーだろうが。
「おい、寝不足なのか。何か悩みがあるわけじゃないだろうな」
教室に戻ると有坂が待っていてくれた。
ちょうど昼休みだったから、もう絶対先に飯を食いに行ったと思ってた。
悩みなんかめちゃくちゃあるが、そんなことよりじーんと胸が熱くなる。
今日も安定の仏頂面だが俺の心配をしてくれていたらしい。
もうこんなの絶対に親友だろ。
「ああいや、大丈夫。まさかちょっとうたた寝したくらいで注意されるとは思わなかったけど」
「期末テストが近いからな。教師の目が厳しくなるのは当然だろう」
「あー、そっか。もうそんな時期か」
気付けばあっという間の一学期だった。
いや一学期どころか高校生活自体があっという間で、マジでなんの楽しい思い出も残ってない。
俺にとっては有坂に出会ってから今日に至るまでの一週間の方がよっぽど刺激的で、むしろここから高校生活が始まったと言っても過言じゃない。
これから少しずつ、有坂との高校生活の思い出が増えていけばいいなと思う。
「そういえば有坂、夏大はいつなんだ?」
「期末テストを終えてからだ」
「へー。テスト終わったらすぐ大会とか大変だな」
「追試者は試合に出してもらえないからな。部内でも成績の悪い者は死活問題となっている」
二人で部室に向かいながら有坂の言葉を聞く。
まあそりゃ学校側としては弱小野球部より学業の方を優先するわな。
「結城は寝ていたが勉強は大丈夫なのか」
不意に隣から落ちてきた言葉にパチリと瞬きをする。
コイツほんとに俺のことなんも知らねーんだな。
「成績なら俺学年トップだけど」
「何?」
ものすごく意外、という目で見られた。
失礼な奴だなとは思うが、こういうやり取りも友人関係の醍醐味だ。
そう思えば自然と表情が緩む。
「有坂は?勉強教えてやろーか」
「人に教えるほど余裕があるのか」
「あるよ。つーか一緒に勉強したい。ダメか?」
友人とテスト勉強とかめちゃくちゃ憧れだ。
有坂は少し悩んだような顔をしたが、ふと何かに気付いたように俺を見下ろした。
「分かった。余裕があるなら頼んでもいいか」
「――えっ、マジで。全然いいっ」
「そうか。助かる」
相変わらず淡々とした返事だが、俺にとっては十分だった。
まさかあれほど憧れてた友人とのテスト勉強が、こんなにあっさり実現するとは。
しかも更に会話を進めれば有坂の家は学校のすぐ近くらしく、ありえないことに明日の放課後にでも有坂の家でやろうという話になった。
おいおい、急展開すぎんだろ。
予想外に飛躍した約束にテンションが爆上がりする。
当然だが俺は友人の家に遊びに行くのだって初めてだ。
やばい。こんなの楽しみすぎて今日も絶対眠れない。
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