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他の奴に触れさせるな――って、それどう考えても嫉妬だよな。
不意に昨日抱きしめられた時に感じた違和感が蘇ってくる。
あれ?とは思ったが、さっきまでめちゃくちゃ怖かった有坂の目は驚くほど優しげに変わっている。
「…わ、分かった」
とりあえずもう怒ってはいないらしいし、ここは素直に頷いておく。
絶対コイツは怒らせちゃいけない類の人種だ。
「その…今回のことは色々助かった。話聞いてくれてありがとな」
「いや、また何かあったら言ってくれ」
「おー。もう騙されないに越したことはないけどな。でも有坂の気持ちが聞けたし、そこは結果オーライかな」
そう言ってニッと笑顔を向ける。
なにはともあれ、有坂が俺を大切に思っていると言ってくれた。
俺と同じ気持ちでいてくれてるんだって分かって、むず痒くもどうしようもなく嬉しい気持ちが込み上げてくる。
今回は有坂に迷惑掛けた感があるが、いずれは俺も有坂の力になりたい。
互いに協力し、信頼し合えるような親友関係を築いていきたい。
「有坂も何か困った時は俺に言えよ。次は俺もお前の力になりた――」
言葉の途中で、それが遮られる。
頬に触れていた有坂の手がするりと俺の顎を伝い、指先がそっと唇に触れた。
優しくふに、と押されてその感触にバクリと心臓が跳ねる。
おいおいおい、待て待て。
やっぱりなんかおかしくねーか。
友達ってフツーここまでするか!?
「お、おい有坂…」
「――やはりお前は綺麗だな」
「え?」
唐突に言われた言葉に驚く。
そりゃ俺の顔が綺麗なことなんか分かり切っちゃいるが、まさか有坂にまでそれを言われるとは思わなかった。
いや、そういえば最初の時にも目が綺麗だとか言われたな。
「その青い瞳にはどうしても目を奪われる。昨夜は不用意に抱きしめてしまってすまなかった」
「――え?」
「驚いていただろう」
そう言われて思い出す。
いや確かにめっちゃビビったけど。
むしろそれでハルヤンに再現VTRしてこの流れになったわけだけど。
「そりゃ…いきなりすぎて驚いたけど。今も驚いたし…」
「結城は同性との付き合いはないと言っていたし、お前の気持ちを知っているにしても少し不躾だったな。反省する」
同性もなにも異性とも付き合ってきちゃいないけどな。
俺の友人関係の付き合いは後にも先にも有坂だけだ。
なるほど、つまりあれか。
俺の見た目が綺麗すぎて友達だけどついスキンシップしちゃったみたいな感じか。
ひょっとしてこれが噂の愛されキャラってやつか。
「ああ、別にいいよ。それくらい」
何気なくそう答える。
ちゃんと友達として大切に思ってくれているなら、それくらいなんてことはない。
なにせ他の奴はぽーっとして会話も出来ないわけだから、多少のスキンシップくらいバッチコイだ。
むしろ友人関係ってスキンシップなしには成立しないだろ。
「俺は有坂に触れられるなら嬉しい」
笑顔でそう返すと、その瞳がどこか熱を持ったような気がした。
「おい、仲直りしてやるよ」
放課後、性懲りもなく俺に話しかけに来たハルヤンに腕組みしながら言ってやる。
「わお、清々しいくらい上から目線だね」
「有坂に『自分を貶めた相手を許し、再び分かり合うのは中々出来ることじゃない。むしろそれが出来る結城の心の広さには感心している』って褒められた」
「ぶ、なにそれありちゃんのモノマネ上手すぎない?」
「伊達に有坂を観察し続けてないからな」
「ストーカーかな?」
なんか言ってるが構わずフフンと鼻を鳴らしてみせる。
これがお互いに信頼関係を築いている友人の為せる技ってやつだ。
友人詐欺師のハルヤンには一生分からないだろう。
「それにしてもありちゃん真面目すぎんでしょ。さすがこの新時代に絶滅危惧種の昭和男子」
「だからといってハルヤンと仲良くするつもりはねーけどな。有坂の手前そうしといてやるだけだ」
コイツと関わったらまた騙される可能性がある。
ジトリと睨みながらそう言ってやったが、ハルヤンは全く応えてなさそうな笑顔をへらっと俺に向けた。
「許してくれるなんて有難き幸せー。じゃあさ、次の日曜暇?」
「…おい、だから有坂の手前そう言ってるだけで、お前と仲良くする気はさらさらねーって――」
「有坂の試合一緒に見に行かない?」
「えっ」
それは行く。
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