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「結城くんてモテるでしょ。彼女絶対いると思ってたぁ」
「いや、いないけど」
「やばいー。お肌スベスベ、髪ツヤツヤ。何かしてるの?」
「えーと…」
「芸能界入ったりしないの?絶対すぐ有名になれるよー」
きゃいきゃいと年上女子に持て囃される。
どう見ても相手は高校生じゃなく、見た感じお金持ってそうなお姉サマ方だ。
ハルヤンの交友関係がマジで謎すぎる。
「まーまー、マッスー女子慣れしてないからさ、お手柔らかにしてやって」
「え、そうなの!?」
「そうそう、貴重でしょ」
「やだ、箱入り王子可愛いー。ハルヤンとは大違いじゃーん」
「なんかそれ酷くない?」
ハルヤンの返しに賑やかな笑いが起きる。
こういう場に相当慣れているらしいハルヤンがうまい感じに場を盛り上げているが、生まれてこの方一度も合コンとかしたことのない俺はちょっと気後れしてしまう。
おまけにいつの間に来たのか他の男達も参加していて、最初から全部計画的だった事を改めて実感する。
とはいえいつもは鬱陶しくドモリながら気遣われまくる俺だが、相手が年上だとそうでもないらしい。
年上女性は同年代の女子とは違って割と積極的に話しかけてくれる。
ひょっとして俺には年上が合ってるのか。
「マッスーてもっとコミュ障発動してんのかと思ったら、案外フツーに話とかノッてくるんだね」
「は?俺だって空気くらい読むわ」
「へえ、別に女嫌いってわけじゃないんだ」
正直相手が年上じゃなきゃ分かんねーけど。
女子が揃ってやたら長いトイレに行ってる間に、ハルヤンとどうでもいい雑談をする。
つーか何言ってんだコイツ。
女が嫌いな男なんかいないだろ。
「有坂有坂言ってるから、てっきり」
「そんな言ってねーわ」
「なるほど、本人は自覚ナシか。…なんかちょっと俺分かってきたかも」
「は?」
テーブルに頬杖付いて、ハルヤンがニヤニヤと俺を見つめる。
勝手になんか悟ってるが、その顔腹立つからやめろ。
ふと店内に掛かっている時計を見ると、そろそろ日暮れ時だった。
なんだかんだ長居してたが、有坂もそろそろ部活終わった頃か。
今日で夏大も終わったし、これからはもう少し俺に時間を作ってくれるかもしれない。
家に遊びに行くって約束もまだ果たせてないし、別に家じゃなくてもいいからもっと一緒にいたい。
学校で一緒に昼飯食うだけじゃ全然足りない。
本当はもっとアイツの時間を独占しまくりたい。
「でもこのままいくとお互いに可哀想なことになるかもね」
「――え?」
突然落ちてきたハルヤンの声で顔を上げる。
ちょうど女子達が戻ってきたのが見えて、それに合わせてハルヤンが席を立ち上がった。
「まあもうすぐ夏休みだし、有坂も少しは時間取れるんじゃない?一度ゆっくりキミ達は話ししたほうがいいと思うよ」
突然のハルヤンの言葉にキョトンとする。
いきなり何言ってんだコイツは。
「あ、マッスー帰るってさ。王子タイムは終わりな」
「ええー、嘘ぉ。これからじゃないの?せめて連絡先交換しない?」
「そういうのは春屋事務所通してねー」
「ぷ、なにそれ」
なんか勝手に帰らされる方向になってるが、今度は一体どういうつもりだ。
ハルヤンが俺を気遣うわけがないから、絶対何か裏がある。
「おい、どういうことだよ」
ハルヤンに店の入り口まで送られながら、その服をクイと引っ張る。
「あれ、もしかして本気で彼女作りたかった?」
「いや、別に」
「でしょ?ぶっちゃけマッスーみたいなイケメンは最初だけいてくれるのが一番いいんだよね。あんまり長居されると女子全部持ってかれるから逆に困るし」
「清々しいくらい最低だな」
つまり俺はうまいこと客寄せパンダにされたわけか。
「それより有坂からそろそろ電話掛かってくるんじゃない?合コン連れてった事バレたら、それこそ俺がまためんどい事に――」
ハルヤンが言ってる途中で、俺の携帯が音を立てた。
有坂だ。
着信音変えてあるから見なくてもすぐに分かる。
光の速さで画面をタップすると、携帯を耳に当てた。
「――有坂っ。部活終わったのか?今日の試合惜しかったけど俺めっちゃ興奮しながら応援してて…」
一気に言いたいことが溢れて返事がくるより先に捲し立てていたが、不意に横からハルヤンのじとっとした視線を感じた。
なんか文句でもあるのかと目を細めたが、さらっと手を振って店に戻っていった。
有坂とゆっくり話し合った方がいいとか意味深なことを言われたが、相変わらずハルヤンは最低なこと以外よく分からん。
『今学校でミーティングを終えたところだ。今日は遠いところまですまなかったな』
「いや、大丈夫。有坂の応援が出来て良かった」
『少し会えないか。結城の顔が見たい』
突然の誘いに驚く。
会いたいと思っていたのが、こんなに早く実現するとは。
「俺も会いたい。学校か?今すぐ行く」
『いや、家にいてくれ。あまり遅い時間帯に外出させるわけにはいかない』
遅い時間帯ってまだ18時なんだけど。
俺は小学生か。
おまけに今は初夏だから、まだ全然明るい時間帯だ。
「俺まだ外にいるからどっかで落ち合ってもいいけど」
『あまり暗くなって親御さんに心配を掛けさせるわけにはいかない。家にいてくれ』
「…あ、そー?」
別に男だし親もそこまで過保護じゃないが、一体どんな家庭で育ったらそんな堅実な性格になれるんだ。
ハルヤンも言ってたが、さすがはレトロ男子。
とはいえ俺も暗くなるのは勘弁だから、有坂のその気遣いに有り難く甘えることにした。
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