アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
93
-
心臓がバクバクいってる。
言葉を口にする度に、もっと有坂が好きで堪らなくなる。
自然と表情が緩んで、幸せな気持ちになる。
「好きだ。好き。有坂、大好き」
たくさん伝えたくなる。
俺の気持ちを分かって欲しくてたまらない。
有坂はどこか呆然としたように俺を見つめていたが、不意にその視線が強くなる。
耳に触れていた手を落として、俺の手をギュッと強く握った。
「俺も好きだ」
――バクリ、と心臓が驚くほど大きく跳ねる。
「結城が好きだ。愛している」
黒い瞳が真っ直ぐに俺を見つめる。
望んでいた以上の言葉が返ってきてちょっと驚いたけど、でもめちゃくちゃ嬉しくてくすぐったい。
握られた手を俺も両手で握り返したら、どうしようもなく幸せで笑顔が零れた。
「うん。いっぱい愛してくれ」
「ああ」
「それでずっと一緒にいたい。俺だけ見ていてほしいし、有坂が暇なときはいっぱい遊んでほしい」
「ああ、もちろんだ」
「そ、それからもう突き放すのは禁止な。話しかけるなって言うのも絶対ダメな」
「二度とそんな事は言わない」
どこまでも俺の言葉を肯定してくれる有坂に、気持ちが浮き上がっていく。
有坂と同じ気持ちでいるんだと知ったら、嬉しくて堪らない。
ぽーっと夢うつつな気持ちで目の前の瞳を見つめていたら、有坂は眩しげに俺に目を細める。
静かに一度目を伏せてから、もう一度俺を見つめた。
「俺がずっとお前の親友でいる。もう不安にはさせない。だから安心してくれ」
――あれ?
有坂の言葉にぱちりと瞬きをする。
夢から覚めたみたいな気持ちになって少し固まっていると、有坂はふと何かに気付いたように俺の背後へと視線を向けた。
「あっ、いたいた。結城くーん、有坂くん」
遠くから賑やかなクラスメイトの声が聞こえてくる。
せっかく二人っきりの楽しい時間だったのに、どうやら奴らに見つかったらしい。
有坂はベンチから立ち上がると、そのまま俺の手を引く。
行きたくない。
まだ有坂と二人きりでいたい。
ちょっと不満な顔を見せたら、高くなった視線の先で黒い瞳が愛しげに揺れる。
「もう離れたりはしない。俺と一緒に楽しんでは貰えないか」
優しいその言葉に、ふるりと気持ちが湧き立つ。
有坂がそばにいてくれるなら、誰がいたって絶対楽しいに決まってる。
「――うん」
満面の笑顔でそう返して、俺は立ち上がった。
「ゆ、結城君。お化け屋敷入らない?」
「おー、いいぞ」
「結城君は怖いのも大丈夫なんだぁ」
「あんなの作り物だろ」
「えーっ、さすがだなぁ。カッコいい」
得意げに返してやったら、口々にきゃいきゃいと褒められる。
有坂が隣でクスリと笑って、俺も楽しくなる。
有坂が一緒にいれば他の奴らとの会話も不思議と楽しめた。
同じような話の内容も午前中はつまらなかったのに、嘘みたいだ。
数人のグループでお化け屋敷に入る。
高い声をあげて有坂に縋りついた朝宮さんを見て、慌てて二人の間に割って入る。
「ちょっと結城くん、有坂くんと朝宮さんの邪魔しちゃダメだよー」
周りはひやかしで俺がやっていると思ったらしくクスクスと笑われたが、こっちは至って本気だ。
有坂には指一本触れさせねえ。
いきなり出てくるお化けより人に飛びついてくる女子の方に驚いたり、真顔で驚いている有坂にクラスメイトと笑ったり、有坂が一緒にいると思うと不思議と何でも楽しめた。
お化け屋敷を出たら他のアトラクションをみんなで遊んで、あっという間に空はオレンジ色になっていく。
クラスメイトとはいつの間にか最初よりも会話が出来るようになっていて、とはいえまだみんな俺に気を遣ってばっかだけど、でもそれぞれモブにも性格があることに気付いた。
話すと真っ赤な顔でモジモジしてるくせに、他の女子にツッコまれて焦ったように口調を変えるやつ。
俺のことをチヤホヤするけど、会話の流れで冗談言えるやつ。
人の顔をじっと見てるだけで、やたら鼻息荒い奴。
今まで周りはみんな同じに見えてたけど、どうやらそんなことはないらしい。
「…そうか。初めからこうしていればよかったんだな」
「え?」
「ああいや、なんでもない。今日は結城と一緒に来れて良かった」
すぐ隣で落ちてくる有坂の言葉に嬉しくなる。
途中までめちゃくちゃもう嫌だって自暴自棄になってたけど、でもちゃんと有坂と話をしてよかった。
有坂がずっと俺と一緒にいてくれる。
その言葉だけで、俺のここ最近モヤモヤしていた気持ちはスッと軽くなった。
有坂が好きだ。
好きで、好きで堪らない。
ずっと一緒にいたい。
もっとたくさん触って欲しい。
――ふと、ベンチでの会話が蘇ってくる。
有坂は俺にずっと親友でいると言っていた。
きっとそれは、俺の好きの意味が有坂に伝わってないからだ。
俺が友達として有坂を好きだって言ったと思ってる。
有坂がずっと親友でいてくれるのはもちろん嬉しい。
俺も有坂とずっと親友でいたいと思ってる。
思ってるけど――。
どうやら俺の悩みゴトは、まだまだ尽きそうにない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
100 / 275