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「結城、帰るのか」
その日の放課後。
HRが終わったら隣から有坂に声を掛けられた。
顔を見れば昨日めちゃくちゃキスしてエロいことされた記憶を思い出してしまう。
でもハルヤンいわく、俺はまだ最後までしてないらしい。
有坂が何も言わないから気付かなかったけど、あのハルヤンの言い方だと俺は相当有坂に悪いことをしてしまった気がする。
「…いや、まだ帰らないけど。有坂は暇じゃないのか?」
「部活がある。今日はゲーム同好会に行くのか?」
「ゲー研じゃなくて、ハルヤンと一緒にバイトするんだ」
そう言ったら有坂の顔が難しい顔つきに変わる
あれ、この顔はあんまりよく思ってない顔だ。
「金が必要なのか」
「いーや?暇だからちょっと付き合ってやるかなって」
「…そうか。帰りは遅くなるのか」
当たり前のように有坂は俺の帰りを心配してくれる。
いっぱい愛してくれるって言ってたし、大事にされてる気がしてくすぐったくなる。
「今日は見に行くだけだから大丈夫。遅くなるなら有坂に連絡するな」
「ああ。何時でも構わないから電話してくれ」
話しながら有坂と二人で廊下に出る。
どうやらハルヤンのクラスはまだ終わってないらしいが、この俺が待つとかありえない。
そんなわけで有坂を部室まで見送ることにした。
少しでも長く、有坂と一緒にいたい。
「俺が結城に送られるのは初めてだな」
有坂もどことなくくすぐったそうな表情を見せて、二人で廊下を歩きながら視線を絡ませる。
有坂が俺だけを見てくれていることが堪らなく幸せで、昨日みたいにいっぱい触ってほしくなる。
「…あ、あのさ。昨日の…その、アレのことなんだけど」
ちらちらと有坂の顔を見ながら口を開く。
この手の話題に関しては、やっぱりちょっと気まずい。
妙な恥ずかしさで顔に熱が昇っていく。
「アレとはなんだ」
全く分かってない有坂が真顔で返してきたが、いや察しろよ。
かなり言いづらいんだよ。
童貞舐めんな。
「だ、だからアレだよっ。俺にエロいことしただろっ」
興奮してちょっと大きな声で言ってから、ハッと口を噤む。
こんなこと周りに聞かれたら絶対ヤバい。
慌てて周りを見たが、遠くで俺達を見てきゃいきゃい騒いでる女子がいるくらいだ。
バレてないことにホッとしたが、そう思うってことはやっぱりこの関係がおかしいからなんだよな。
「ああ、した。なんだ、もし不快だったならすぐに言ってくれ」
「あ…いや、そーじゃなくて――」
慌てて訂正するが、なんで有坂はそんなに普通なんだろう。
常識人だからヤバイ事してるって自覚は絶対あるはずだけど、そんな素振りを全く見せない。
俺はこんな必死にしどろもどろその話題を出してるのに、悟り開いてるレベルに堂々としてる。
まだ俺たちの関係に関してはどうしたらいいのか答えは出ない。
でも俺はやっぱり有坂が大好きだし、それにエロいことされてもキスされても不快だなんてちっとも思わなかった。
それにハルヤンに言われて授業中ずっと考えてたけど、昨日のはやっぱり俺が間違ってたんだ。
俺は有坂に悪いことをした。
ハルヤンの言葉はさすが有坂相談してるだけあって、物凄い説得力だった。
少し迷ってから、俺は遠慮がちに口を開く。
カッと耳まで熱くなるのを感じた。
「…あ、有坂。次は最後までしよう」
「――え?」
「も、もし次があるならだけど。き、昨日は俺だけして…ごめんなさい」
有坂の顔は見れないが、間違いなく隣で息を詰めたのが分かった。
たぶん俺の言葉に驚いてるんだろうけど、俺だって男だ。
ムラムラしてる時の辛さは分かる。
「…結城が構わないのならもちろん次もある。だが俺は結城を大切にしたい。気持ちは嬉しいが、焦らなくてもいい」
「あ、焦ってるとかじゃねーよっ。も、もう決めたし絶対最後までするからな」
断られると変に意地になる。
強気にそう言ってみせると、有坂はじっと俺の瞳を覗き込んだ。
それから愛しむように手の甲を頬に押し付ける。
「結城の気持ちは分かった。嬉しい。必ず優しくするから安心してくれ」
「えっ?うん。めちゃくちゃ優しくしてくれ」
「ああ」
もともと有坂は優しいけど、なぜか改めて言われた。
まあ別に優しいのはどれだけ過剰でも困らないからいいんだけど。
ハルヤンに連れられて行ったバイト先は、ただの喫茶店だった。
駅近だけどちょっと古ぼけたそこは客とかいなそうな雰囲気だ。
ハルヤンの紹介だからどんなヤバイ奴が出てくるのかと思えば、優しそうなじいさんマスターが経営していてちょっとホッとする。
「ここ俺が去年からずっとやってるバイト先なんだよね」
「えっ、ハルヤン詐欺師以外にちゃんと働いてたのか?」
「人聞きの悪いこと言わないで貰えるかな?」
いや事実だろ。
一体どんな仕事内容かと思えばただの店番で、しかも今日は平日だし誰もいなくてめちゃくちゃ暇だ。
なるほど、だから誰でも出来る仕事って言ってたのか。
「マスターが足骨折しちゃってさ、治るまで働ける人探してたんだよね」
「へー」
「マッスー暇そうだしいいかなって」
「本当にそれだけか?」
「それだけだよ」
マジかよ。
絶対何か裏があると思ってたのに。
しかもそのじいさんマスターも話してみればおっとりした良い人で、同じバイトにしても有坂母とは大違いだ。
完全に趣味で経営してるらしく、来る人も常連ばかりみたいな話を聞いた。
これなら有坂が遊んでくれない日にたまにハルヤンとバイトするくらい、全然いいかもしれない。
有坂の話を誰かにしたくて堪らなくていつもハルヤンにしてるけど、ここなら有坂相談も大いに捗る。
本当ならこの想いを全世界の人に演説してやりたいところだが、まあハルヤンで我慢してやろう。
とはいえ学校終わりにバイトするんじゃ冬も近くなったこの時期、さすがに暗くなるし平日は無理だ。
なんて思っていたら、帰りはなぜかハルヤンが家まで送ってくれた。
おい、なんだいきなり。
マジでどうしたんだ。
「ひょっとしてお前俺の事好きになったのか?」
帰り道に何気なくハルヤンに聞いてみると、え?とハルヤンは呑気な顔して俺を見つめる。
それからじっと俺の顔を見つめて、口を開いた。
「んー、セックスもキスもわりとしてみたいけど付き合うのはヘラいから無理だわ。ごめんね」
「誰も告ってねーよ」
「あ、違った?」
なんでこの俺が告ってねーのに振られないといけないんだ。
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