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ふらりと側によって手を伸ばすと、すぐに引き寄せられる。
そのまま向き合う様に膝の上に乗せられて、ギュっと抱きしめられた。
久しぶりの有坂の体温に頭がくらくらしてしまう。
バクバクとすぐ耳元でうるさいほど心音が鳴っていて、堪らず自分も有坂の背に手を回して縋り付く。
全身が有坂の匂いでいっぱいになって、記憶が温もりを思い出していく。
夢中になってスンスンと鼻を擦り付けてその匂いを嗅いでいると、有坂がくすぐったそうに笑って俺の髪の毛に唇を落とした。
それからそっと顔を上向かされる。
「綺麗な色だ。もっとよく俺に見せてくれ」
言われるままにじっと有坂の目を覗き込む。
黒い瞳が食い入るように俺の瞳を見つめて、だけど不意に目元に口付けられた。
有坂は愛しむように何度も目蓋や目尻に唇を押し付けては、再び俺の目を覗き込む。
求めていた愛情はまるで麻薬のように身体に甘い響きをもたらして、髪の先まで蕩けてしまいそうな熱を生む。
「結城、会いたかった」
「ん…俺も――」
ふわふわとした頭でぼんやりと口を開く。
だけどその言葉で、急激に実感してくる。
この一週間どれだけ俺が有坂に会いたかったか。
どれだけこの日を待ち詫びていたのか。
どれほど有坂と離れるのが嫌で嫌で堪らなかったか。
鼻の奥がツンとしてきて、俺は慌てて目の前の胸に額を擦り付けた。
「も、もう離れるのは嫌だ。俺すごい頑張ったからな…っ」
「ああ、そうだな」
「一週間めちゃくちゃ苦しかったし、寂しかったし…もう無理だ…っ。もうこんなの絶対出来ないっ」
有坂がたくさん優しくしてくれるから、心がどんどん甘えてしまう。
グズりながらそう言うと、宥めるように熱い手のひらが俺の髪を撫でてくれる。
有坂が側にいる。
声だけじゃなくて、ちゃんと俺を見て、俺に触れてくれている。
ずっとずっと欲しかった温もりに気持ちが溢れて堪らない。
そっと顔をあげると、髪から滑り落ちた手が俺の頬に触れた。
頬に昇る熱は有坂の手の温度なのか、自分の体温なのかもう分からない。
とろりとした意識の中でお互いの目を見つめ合う。
そっと有坂の顔が近づいてきて、自然と俺は目蓋を閉じた。
唇と唇が近づき、お互いの吐息が重なるその瞬間――。
「有坂くん、マス。荷物を置いたら風呂に入るように。それから家の中でくれぐれも、破廉恥な行為はしないように」
けたたましいノックの連打と同時にサダ兄の声が部屋の外から飛んできた。
いまいち煮え切らない気持ちのまま仕方なく有坂と交代で風呂に入る。
風呂から出たらサダ兄と有坂がソファで話をしていて、慌ててその真ん中に割り込んで座った。
大好きな人二人に囲まれると、めちゃくちゃ幸せな気持ちで満たされていく。
「マス、髪がまだ濡れてる。俺が――」
サダ兄が何か言うより早く俺の首のタオルを取って、有坂が拭いてくれる。
わしゃわしゃとタオル越しに大きな手のひらに撫でつけられて、自然と表情が緩んでしまう。
有坂が帰ってきてくれたことが本当に嬉しい。
何か言いたげなサダ兄と物言わぬ有坂に挟まれながら、冬休み中の話をたくさん聞いてもらう。
それから有坂の旅館の話も尋問の如くサダ兄と一緒にたくさん聞き出す。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、話し足りないまま夜は更けていく。
「そろそろ寝ようか。もういい時間だ」
ホットココアを飲みながら話をしていたが、サダ兄の一声で皆が立ち上がる。
有坂はやっぱりサダ兄の部屋で寝るらしく、俺とは別の部屋だ。
「おやすみ、マス。いい夢を」
サダ兄がそう言って髪を撫でてくれたが、俺は正直全然納得していない。
なんでサダ兄と有坂が一緒に寝るところに俺は入れてくれないんだ。
「…おやすみ」
不貞腐れたようにそう返すと、サダ兄が困ったように眉を落とす。
元々そういうつもりで有坂が泊まったわけだから、今更仕方ないけど。
でもやっぱり微妙な気持ちだ。
「マス、いい子だから――」
「結城、今日はゆっくり寝て明日は少し遅いが初詣に行こう」
「――えっ?」
サダ兄が何か言った気がしたが、それより有坂の言葉にぱっと気持ちが浮き上がる。
有坂は俺の様子を見て取ると、柔らかく目を細めて俺の横を通り過ぎていく。
「おやすみ」
そう言って何気なくすれ違い際に、俺の耳に軽く唇を押し付けた。
ほんの一瞬のキスにドクリと心臓が大きく跳ねて、固まってしまう。
ふと見ると目の前で同じようにサダ兄も固まっていた。
その後有坂は忙しなくサダ兄の部屋に引っ張られていってしまった。
まだちょっと寂しい気持ちもあるけど、でも有坂が帰ってきてくれたから今日のところは満足だ。
それにまだ冬休みは残ってるし、これからの日はずっと有坂と一緒にいられる。
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