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----side有坂『親友から恋人へ』
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「――あッ、ふぁ…ッ、も…出来な…ッ」
「結城、結城…ッく」
相手の体内にこれでもかというほど熱を吐き出す。
今まで身体を重ねられなかった分を全て埋めるように、熱を注ぎこんでは目の前の蒼い瞳を堪能する。
結城が限界だと分かってはいるが、快感を覚えたばかりの身体はとても素直で従順だ。
言葉では否定してもその身体は厭らしく俺の自身に吸い付いては離さず、まるでまだ快感が欲しいと強請っているようだ。
こんな姿を見せられたら男として堪らない。
気付いた時は意識を失う様に結城はベッドに沈み込んでいて、さすがにやり過ぎた事に気付く。
情けないほど理性が飛んで、結城を思うままに抱き潰していた。
後処理をしてから、ベッドの縁に腰をかけ結城の髪を撫でる。
中に吐き出したものを掻きだそうとも服を着替えさせようとも、結城は全く起きずぐっすりと規則正しい寝息を立てていた。
よほど無理をさせたんだろう。
乾いた涙の跡を指先でなぞりながら、愛しさに堪らなく心が震えた。
結城は待てとは言ったが、それでも最後まで嫌だとは言わなかった。
前に身体を重ねようとした時はあれほど嫌だと言われたが、恐らく結城なりに俺の事を気遣ってくれたんだろう。
『…っだから俺と、親友じゃなく恋人になろう』
涙ながらに告白してくれた姿はとても美しく、思い出しても胸が熱くなる。
どれほどその言葉を願っていただろう。
胸に込み上げるものと同時に目頭が熱くなったが、無意識に甘えるように手に頬を擦り付けられて、クスリと表情が緩む。
大切に守っていきたいと思う。
同性で同年齢であるのに、どうしてこうも庇護欲を駆り立てられるのか。
『――あの子はずっと友達が出来なくてね』
結城の家に泊まった日。
お兄さんの部屋で世話になった夜に聞かされた話は、それは普通の男子高校生とはかけ離れた結城の話だった。
外見の美しさ故に周りの者に一目置かれていることは分かっていたし、俺が初めて出来た友人だと結城が以前零していたのも知っている。
だがそれは遊園地での結城の態度を見る限り、本人が周りを受け入れることを拒絶しているのではという気持ちもあった。
お兄さんから聞いた話は想像以上に酷なもので、結城の言葉が全てまかり通り、誰も意見をせず取り繕った人間関係しか築いてこれなかったという話だった。
誰も本音をぶつけてこない世界。
いや、相手にとってはそれが本音なのかもしれないが、本人からしたら全てがまかり通るなどなんて気持ちの悪い世界だろう。
『普通の人から見たらなんて贅沢な、優遇された悩みだと思うだろうね。あの子の悩みを年端もいかない高校生が理解してあげるのは難しい。もちろん君に押し付けるわけじゃないけど、ただ知っていてほしくてね』
学校という同じ年齢、同じ立場の子供が集団行動を強いられる場所で、自分一人が異様に気遣われ遠巻きにされ続けるなんて、本人はどれほど孤独感を覚えていただろう。
最初の出会いから俺達は誤解の連続だったが、そもそも互いの対人関係での価値観が違い過ぎるのだから、擦れ違いも必然だったのだろう。
『本人も色々と思う事はあるだろうが、君の事をあれだけ好きなのに恋人関係にならない一番の理由は、きっと失うのが怖いからだろうね』
『失う?』
『男同士の恋人関係は問題も多いだろう。それで周囲から有坂くんが反対され嫌気がさしたり、自分から離れていくような不安は一つだって欲しくないんだろうね』
『それはつまり――』
『恋人や親友という関係よりも、ずっと君と一緒にいたいと思っているんだ』
心臓が酷く高鳴ったのを覚えている。
恋人になることと親友である事は大きな違いだと俺は思っていたが、結城の気持ちはそういう感情だけに縛られるものではなかった。
結城の身の上を分かっていながら、分かったつもりになっていたのだと知った時、別れも告げず結城を一人にさせたことを後悔した。
普通の人ならば寂しいと思いながら仕方ないと割り切れる二週間も、結城にとってはどれほど苦しい思いをしただろう。
何度も俺に会いに来ようとしていたと聞いて、酷く胸が痛んだ。
ずっと孤独を抱えていた結城にとって俺が離れることは、また一人になるかもしれないという不安と恐怖心との戦いでもあったのだろう。
様々な気持ちでがんじがらめになりながら、それでも俺と恋人になる未来を選択してくれた。
それを知ってしまったらなんて愛しいのだろうと、二人きりになったら触れずには、愛せずにはいられなかった。
その結果抱き潰すということに繋がってしまったわけだが、反省はあるが心はこの上なく満たされていた。
「起きたか」
「…ん、起きた」
「おはよう」
翌日の昼近く。
余程疲れていたのだろう、結城は朝から全く起きなかったが、俺も起こすことはせず走り込みへ行き、掃除や洗濯、新学期の準備をしながら午前中を安閑と過ごしていた。
ベッドで上体を起こしたままぼんやりと寝ぼけ眼な結城に近寄ると、額に口付けを落とす。
寝起きでまだ頭が回っていないらしく、小さく首を傾けて結城は俺を見上げる。
「有坂がいる…」
「俺の家だからな。良く寝ていたな。顔を洗っておいで」
「…うん」
そう言って起き上がろうとしたが、ふにゃりと力なくベッドから結城は滑り落ちる。
「どうした。何をしている」
「…なんかめちゃくちゃ腰が痛い」
「昨日のせいか。すまない、無理をさせたな」
抱き上げながら謝罪すると、昨夜の事を思い出したのか結城の顔がカッと赤く染まる。
「あ…っ、有坂…あ、アレはやりすぎだっ」
「自覚はある。だがあまりに結城が魅力的で抗えなかった。怒っているか?」
機嫌を伺いながら手に心地良い金色の髪を梳くと、結城は俺を見つめてギュッと唇を引き結ぶ。
「…俺が有坂に怒るわけないだろ」
「そうか。怒っていなくてよかった」
「俺が魅力的なのはしょーがないけどさ…で、でも次はちょっと手加減しろよな」
「分かった」
次はないと言われなかったことに安堵する。
自分の魅力を十分に理解している目の前の愛しい人は、謙遜はしないが照れたように目を逸らす。
胸を焦がすような愛しさが込み上げて、その両頬に手を伸ばすと自分の方へと視線を向けさせる。
「結城」
蒼く美しい双眸をじっと見つめる。
俺の行動にハッとしたように結城が目を見開いたが、構わず言葉を続けた。
「恋人として、これからもよろしく頼む」
親友から恋人へ。
ずっとすれ違い続けていた関係が、ようやく同じものへと重なった。
俺の言葉に結城は一度呆然と目を瞬いたが、次の瞬間には花開くような笑顔を見せる。
「――うん。浮気したら絶対許さないからな。もう一生俺だけしか見るなよ」
そう冗談めかしく笑いながら言って見せる姿に、どうしようもなく心を奪われる。
浮気などこんな愛しい存在が側にいてありえない。
もうすぐ冬休みも終わる。
時期に新学期がやってくる。
また忙しない日々が始まるが、残り僅かな休日を俺達は大事に過ごしていた。
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