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「会長が最後なら、せっかくだしお別れ会と受験への激励会をしましょうか」
「――わっ、いいの?」
「はい。会長のおかげで僕は本当にこの一年間楽しかったですから」
水瀬の言葉に会長が嬉しそうにしているが、俺は首を捻る。
「なんだ?それ」
「あれ、ラインハルト様はそういうのお好きではありませんか?」
好きかどうかと聞かれても、やったことがない。
家族と誕生日会ならしたことはあるが、基本ぼっちだった俺にそういう経験はない。
「世話になった人と別れる時には、感謝の気持ちと今後への応援を兼ねて宴を開くんだ」
有坂が補足をいれてくれたが、そういや中学の卒業式の後にみんなで集まってどうのとかクラス内で盛り上がっていたのを思い出した。
何かあるのかとソワソワして待ってたのに、結局みんなチラチラ俺を見るだけでいつも通り何もなかった記憶しかない。
「そ、それって俺も参加していいのか?」
「当たり前だ。俺より余程結城の方が会長に世話になっているだろう」
「――うん」
有坂の言葉にじわりと胸が熱くなる。
何をするのか分からないけど、有坂と一緒にやる事なら絶対に楽しいはずだ。
有坂は俺の様子を見てどことなく目を細めてから、会長と水瀬に視線を向ける。
「俺はゲーム研究会に関しての知識が乏しい。買い出しの担当をするから、水瀬と結城はその他の企画を頼む」
「では僕とラインハルト様で軽く飾りつけをして、進行を決めましょうか」
「飾りつけ?進行?」
「はい。せっかくなので部内大会を開催しちゃいましょう」
「――おおっ」
なんかよく分からないけどめちゃくちゃ楽しそうだ。
それから水瀬の指示のもと同好会の部室を簡単に飾りつけして、総当たり戦のトーナメント表を作る。
送る立場なのに会長も一緒になって手伝っていたが、みんなで何か目的をもって作り上げるのは新鮮だった。
「ゲームは会長の好きなヤツでいいぞ」
この俺が他人に譲ってやるなんてそうそうない。
だが今日の主役が会長だってことは俺にも分かるし、それならきっと自分の好きなゲームじゃダメだ。
「ホント?じゃあ僕が子供の頃からやり続けてるゲームにしようかな。これなら結城君にも負けない自信があるよ」
「おー、それくらいのハンデがあってちょうどいいな」
「ふふ、今日こそは負けないよ」
ワイワイと雑談をしながら同好会の部室がほんの少しいつもと違う姿へ形を変えていく。
水瀬と一緒にホワイトボードにトーナメント表を書きながら、トクトクと速い心臓の音を感じて胸に手を当てる。
きっとこうやって俺が当たり前に輪の中に参加できているのは、全部有坂のおかげなんだ。
有坂がいるから俺は一人にならないし、有坂がいるから俺はいつだって楽しい気持ちになれる。
有坂への気持ちがどんどん強くなっていく。
「そういえば冬休み中にゼタスとの関係を考えられていましたが、どうなったのですか?」
「ああ、付き合ったぞ」
「――えっ」
何気なくそう返すと、水瀬の顔が驚愕に変わる。
別に俺が有坂を大好きな事は今に始まったことじゃないし、そう驚く事でもないだろ。
「ぼ、僕は反対だって言ったじゃないですかっ」
「お前が反対だろうが関係ねーよ。後にも先にも俺には有坂しかいねーし」
「そんなことはありません。なぜゼタスにそうも執着されるのか、僕には全く理解出来ません」
「俺には理解出来るからいいんだよ」
ぴしゃりとそう言ってやる。
何を言われようと俺には有坂しかいない。
もう有坂がいないと何も楽しめないし、それこそ有坂に会わないと何も始まらない。
一日が有坂から始まって有坂で終わるくらいじゃないと気が済まない。
水瀬はまだ何か言いたげだったが、会長がのほほんとした笑顔で話しかけてきてこの話は終わった。
しばらくして有坂がたくさんのお菓子や飲み物の袋を持って戻ってきて、それではと送別会兼激励会が始まる。
「え…えっとみなさん。今日は僕のためにわざわざこんな…うっ」
どうやら会長は涙脆いらしく、早々に泣き崩れたのでとりあえずお菓子に手を伸ばす。
が、有坂にガシッと手を掴まれた。
「結城、こういう時は話し終えてから乾杯と共に宴会を始めるんだ」
「えーっ、会長何言ってんだか分かんねーし話長い」
「う…っ、思えば僕が入学した当時は部活だったのに、いつのまにか人が少なくなり廃部になって…っ」
「では乾杯しましょうか」
水瀬がそう言って紙コップを持ち上げたから、それにならう。
有坂も無言でそれにならっていて、やっぱり話が長いと思ってんじゃねーか。
乾杯して、お菓子を食べつつゲーム大会を始める。
会長がチョイスしたのはパズルゲームで、総当たり戦にしたから全員と当たるようになっている。
といっても四人しかいないが、それでも俺は胸がドキドキするほど楽しかった。
「ゼタス、勝負ですっ。僕が勝ったら今日ラインハルト様を送る役目は頂きますね」
「ふざけるな。ゲームの勝敗如きで賭けられるほど、結城は安くない」
「なるほど、逃げるのですか」
「――いいだろう」
水瀬の言葉に有坂の目が鋭くなる。
気合いだけは十分だったが、まあそこは予想通りあっさりと有坂は水瀬に負けた。
フツーに考えてゲーム熟練者の水瀬に勝てるわけないだろ。
なんでゲーム下手くそなくせに乗ったんだ。
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