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ちょうど休日に入って、有坂に会えないまま時間が過ぎていく。
朝からずっと食事中もトイレも携帯をガン見してるけど何も届かない。
有坂に謝りたい気持ちはあるけど、あんなこと言った後で許して貰えるか自信がない。
モヤモヤしながら午前中を過ごしていたが、それでもやっぱり有坂と仲直りしたい。
また俺に触って、たくさん可愛がってほしい。
ちょっとだけしつこくてねちっこいキスもまたいっぱいしてほしい。
怒られるかもしれないし、また酷い事言われるかもしれない。
だけど心配してくれたことを思えば、まだ間に合うかもしれない。
砕けた心を奮い立たせて、めちゃくちゃ勇気を振り絞って有坂に電話を掛けた。
――が。
出ない。
呼び出し音が鳴り続けるだけで、有坂は出てくれない。
心臓がバクバクと嫌な音を立てて、愕然としてしまう。
どうしよう。
これは本気で有坂に嫌われたかもしれない。
こんな気持ちになるなら電話なんか掛けない方が良かった。
まだ悩んでた方がマシだった。
もう手遅れなんだって人生に絶望してベッドに沈み込んでたら、有坂じゃなくハルヤンから電話が来た。
何かと思えばバイトの連絡で、そういや今日シフト入ってるの忘れてた。
仕方なく行ってやることにして、支度をして喫茶店へ向かう。
この数日間の出来事を全部ハルヤンにぶちまける気持ちで行ったが、喫茶店に着くとどうやら様子がいつもと違う。
「結城先輩っ。今日は来られないのかと思っていました」
「えっ、誰だお前」
目の前になんかキラキラした奴が現れた。
と思ったが、よく見たら水瀬だ。
いつものもっさい髪型は爽やかに掻き上げられていて、眼鏡は無くセンスの良いキレカジ系コーデを着こなしている。
どこからどう見てもただのイケメンだ。
「あ、すみません。今仕事中で趣味が知られてしまうとマズいので」
「仕事中?」
水瀬が耳打ちしてきたが、言われてみればカメラや照明機材、メイク道具などを持ち合わせた数人のスタッフらしき人がいる。
そういや撮影で喫茶店使いたいとか言ってたな。
つーかちゃんと苗字で呼べるなら最初っからそっちで呼べ。
「と言っても大掛かりな撮影ではなく、僕の日常のワンシーンを撮るという企画なんです。そう時間は掛かりませんので」
「ふーん。まあ頑張れよ」
「はいっ」
昨日は少し寂しそうな顔を見せていたが、水瀬はいつも通り従順な返事をして戻っていく。
周りのスタッフが何か言いたげに俺を見ていたが、特に話しかけられたり勧誘されることはなかった。
俺の事はこっちの業界じゃもう知れ渡ってるらしいし、水瀬の事務所ならハルヤンの顔も利いてるんだろう。
「モデルが来て王子が来てってさー、これでこの喫茶店がいよいよ流行るビジョンが見えてきたんだけど」
嫌そうな顔をしてハルヤンが店奥から顔を出す。
ちなみに営業は普通にしていて、撮影は客の許可を得て店の一角で行っている。
「別に店的には儲かった方がいいだろ」
「忙しくなったらシフト増えてありちゃんと遊ぶ機会減るかもね」
悪戯に有坂の名前を出されて、ギシリと固まる。
いつもなら笑い飛ばしてやる心の広さもあるが、今は全然笑えない。
俺の様子にあれ?とハルヤンが顔を覗き込んでくる。
「もしかしてまたヘラってる?」
「…ハルヤン、聞いてくれっ」
すぐにでも涙が込み上げてきてギュッと唇を噛みしめたら、めちゃくちゃメンドそうな顔をされた。
なんだよその反応は。
もっと心の底から俺の心配しろ。
「それよりさ、あれって水瀬と一緒にドラマ出てた俳優じゃなかったっけ。あっちは最近人気のアイドルグループの子だし。やっぱ一般人の女子と違ってめちゃくちゃ可愛いよなー」
「はぁ?」
ハルヤンが俺の話を遮って指を差してるが、それよりってなんだ。
俺の話より大事なものなんてこの世にねーんだよ。
仕方なく言われた先を見てみれば、水瀬の他に男女の見たことある芸能人が来ていて、和気あいあいと話してる。
ちょっとした撮影とは言ってたが、ゲスト枠もあるらしい。
だがゲストにしては見るからに親しげで、楽しそうに小突いたり冗談とか言い合ってる。
「…もしかして水瀬って友達いたのか?」
「は?そりゃ芸能人だし大勢いるでしょ。水瀬はマッスーと違って社交性あるしね」
「――えっ」
衝撃の事実だ。
てっきりゲーム趣味の合う友達がいなくて、ぼっちで苦しんでるのかと思ってた。
オタクの友達はいなくても普通の友達は大勢いるとか、完全に裏切られた気分だ。
「まあこの業界マッスーくらい飛びぬけてない限りイケメンや美女なんてゴロゴロいるし、結局社交性ないと生きていけないからね」
「へー、つまり俺が一番すごいってことか」
「そうだね。ありちゃんとうまくいってないみたいだけど一番すごいね」
「だからその話を聞いてくれって言ってんだろっ」
もう俺にはハルヤンが最後の頼みなのに、いちいちイジってくんな。
ハルヤンは俺の様子にクスリと笑ってから、カウンターへ頬杖をつく。
「分かった分かった。聞いてあげ――」
「結城先輩、ちょっといいですか」
いいところで水瀬の声が飛んできた。
見れば芸能人を引き連れて俺のところへ来たが、今は仕事が忙しいんだから邪魔すんな。
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