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真っ白な外観の大型ホテルに着くと、それぞれがまずは部屋の中に荷物を置きに行く。
部屋割りは五人一組。
俺と有坂、あとは同じクラスのモブ三人だ。
夕食や風呂は班ごとに時間が決められているから、事前に決められたスケジュールに沿って行動しないといけない。
部屋を開けると中は和室で、畳のいい香りがした。
「ふーん、まあこんなもんか」
室内は高級ホテルのスウィートルームとかじゃなく、どこにでもある普通のホテルの一室だ。
奥に窓があって、その手前にテーブルと椅子。
あとは畳部屋で、入り口脇には洗面所と備え付けのトイレと風呂があるくらいだ。
何でもない部屋だが、それでも窓の外に広がる自然はどこまでも続いていて、改めて見ても地元では見れない圧巻の広さだ。
夕食はビュッフェ形式で、吹き抜けの広い会場での食事。
パッと見てもサーモンやジンギスカン、ザンギに魚介類とご当地の料理が豊富に揃っている。
「結城、それしか食わないのか」
「え?うん。あんまり皿いっぱいにするの好きじゃないんだ」
高校生ってこともあって、どいつもこいつもビュッフェをいいことにえげつない量を皿に盛っているが、見た目がまずそうで食う気失せる。
それに食事中に席を何度も立つのは好きじゃない。
「お前はもう少し肉を付けた方がいい。持ってきてやるから待っていろ」
そう言って有坂が席を立つ。
別に小食じゃないし人並には食うけど、確かにがっつり運動してる奴に比べたら小食に見えるかもしれない。
とはいえ味はちゃんと美味しくて、そこそこ満足しながら部屋へ帰る。
夕食の後は風呂だ。
そーいやサダ兄に友達が出来ないって子供の頃嘆いたら、男同士の友情を深めるには一緒に風呂に入って裸の付き合いをしろって言われたのを思い出した。
一緒に風呂に行くまでの関係になるのがまず無理で実践できなかったが、有坂との仲を更に深めるには絶好のチャンスなんじゃないか。
うまくいけば部活も同好会も弓道も捨てて、俺を取ってくれる可能性まである。
「…なあ、王子の裸拝めるとか俺らの班やばくね?」
「バカ、俺も思ってたけど口に出すんじゃねーよっ。汚らわしい目で王子を見んなっ」
「分かってるけどお前だって鼻息荒いじゃねーかっ」
なんかコソコソバカ話をしているモブを放っておいて、有坂と一緒に脱衣所へ入る。
裸の付き合いに一体どんな効能があるのか分からないが、ワクワクしながら自分用のシャンプーやトリートメント、ボディソープ、その他美容グッズを用意する。
慣れないものを使って肌荒れでも起こしたら大変だと、旅行先では絶対にその場の物を使わないよう母さんに子供の頃から言われている。
あれこれしてると、さくっと脱いだらしい有坂が先にのしのしと浴場へ歩いていく。
遠くでクラスメイトの声が飛んできた。
「ちょ、有坂お前堂々としすぎだろっ」
「なんだ?男同士何か隠すものがあるのか」
「で…でけェ。完全にマウント取られた…っ」
ギャーギャー話している声が聞こえて、焦って俺も追いかける。
一緒に行きたかったのに置いてかれた。
慌てて大浴場に入ると、ふわっと熱い湯気の感覚と一緒にヒノキの香りがした。
見れば外には真っ白な色の露天風呂もある。
すぐに有坂に追いつくと、気付いたように有坂の視線が俺へと滑る。
なぜかギクリとしたように眉間に皺が寄った。
「…エロい」
「は?」
「ああいや、さすがに目に毒だ」
「えっ」
そう言ってすぐに自分の肩に掛けていたタオルを、サッと俺の腰に巻く。
今なんか有坂から世にも珍しい単語が出てきたような気がするが、そんなことより男同士なら隠すものはないとかさっき言ってなかったか。
二人で並んで身体や頭を洗ってから、ヒノキの風呂へ入る。
もちろん風呂も隣で入って、視線を合わせては微笑みあう。
少ししたら露天風呂に移動して、今度は有坂と一緒にのんびり星空を見上げながら湯に浸かる。
ミルク風呂の香りとマイナスイオン全開の大自然で、今日一日の疲れがゆっくりと癒されていく。
どうしよう、めちゃくちゃ幸せだ。
裸で仁王立ちして牛乳瓶飲んでる有坂をチラチラ横目に見ながら、備え付けの浴衣に着替えてドライヤーで髪を乾かす。
楽しすぎてちょっと長湯してしまったせいで、まだ身体から熱が抜けない。
ていうか有坂最初から最後まで堂々としすぎだろ。
俺の方が目のやり場に困る。
「ちゃんと水分は取ったか?顔が赤いな」
しばらくしたら浴衣に着替えた有坂が来て、手の甲をぴたりと俺の頬に当てる。
有坂の和服姿は、去年の夏の有坂旅館ぶりだ。
ホテルの浴衣だろうとすごく様になっていて、近くで顔を覗き込まれると余計に体温が上がる。
「う、うん。大丈夫。枕投げもしたいし頑張る」
「…は?枕投げ?」
なぜか有坂が不思議そうにしていたが、そう。
俺の目的はまだ果たされてない。
メインディッシュはここからだ。
さて、これから就寝時間までは自由時間だ。
部屋に戻ったら布団が敷いてあって、とりあえず寝る場所を決めることにする。
図々しくも俺の隣を提示してきたモブが別のモブに叩かれていたが、何があろうともちろん俺は有坂の隣で寝る。
五人部屋だから対面するように二、三と布団が敷かれていて、二人分の布団の方に問答無用で有坂を引っ張った。
そんなわけで寝る場所も決まったし、ここから先の流れは間違いなく枕投げだ。
自分用の枕をしっかりと抱えて、いつ始まるのかソワソワしながら待ってしまう。
俺は枕投げ初心者だからどういうタイミングで始まるのとか分からないし、いつ始まっても困らないようとりあえず周りの様子を観察する。
「どーする?怖い話でもするか?どうせ女子トークとかお前ネタないだろ」
「いやいや今日は王子がいるんだから、女子に関しては色々聞けるチャンスだろ」
「バカ、お前そんな失礼なフリして王子に嫌われたらどーすんだよ」
「た、確かに…じゃあ何よ。枕投げでもするか?」
ピクリと耳が反応した。
やるのか。
ついにくるのか。
「――ぷっ、いやいや枕投げとか小学生じゃねーんだから今時やんねーだろ」
「だよなぁ。ネタで言っただけだって」
「つまんねーこと言うなよなぁ」
あはは、と笑い合っているが俺は雷に打たれたような衝撃を受けていた。
嘘だろ。
まさかやらないのか。
愕然としていたら、不意に俺の横を何かがすっ飛んでいった。
気付けば目の前のクラスメイトの顔に枕が直撃している。
何だ今の、目にも止まらぬ豪速球――いや、豪速枕だった。
「ちょっ、いきなり何すんだよ有坂っ」
「ふむ、枕投げをバカにしているようだがその程度避けられないとはな」
「――なにっ」
有坂の煽りで、クラスメイトが枕を投げ返す。
有坂がキャッチし、再び弾丸のような枕投げを披露する。
さすがは野球部、枕投げ上級者すぎる。
気付けば俺にまで枕が飛んできて、そうなれば白熱して俺もやり返す。
自然な流れで枕投げ大会が始まって、俺の夢の一つがついに達成した。
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