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『えーっ、有坂君の元カノ!?うっそぉ、ショックー』
「そうだろ。俺も超ショックだった」
『彼女はなんかやばいくらい可愛いって聞いてたけど、元カノは割とフツーなんだね』
「えっ、やばいくらい可愛い?」
『前に有坂君に彼女がどんな子か聞いたら、そんなニュアンスで言ってたけど…結城君知ってるんじゃないの?』
なんだそれ、初耳だ。
一体どんな風に有坂は俺のことを言ってたんだろう。
朝宮さんの言葉にちょっとだけ凹んでた気持ちが回復する。
なんで俺が朝宮さんと電話をしているのかというと、ハルヤンが全く使い物にならないから、怒りとモヤモヤが収まらない俺は朝宮さんとこの悲劇を共有することにした。
連絡先は修学旅行の時に同じ班だったから知っていたし、昼に盗み見してた時に田舎女の写真を撮って送ってやった。
『ていうかこの写真めっちゃ寄り添ってるけど、何これ。まさか有坂君とヨリ戻したいとか思ってる?』
「単に仕事手伝ってただけだけど…分かんねーな。有坂を頼ってまた働きにきたみたいだし」
『はあ?男頼りに来るとか絶対怪しいじゃん。ていうかこれ彼女さん知ってるのかな。バレたら絶対ヤバいよね』
朝宮さんの言葉にウンウンと頷く。
そうなんだよ。だから俺はヤバイムカついてるわけだ。
やっぱり朝宮さんは分かってる。
『んー、まあでもそれで修羅場になって別れてくれたら私にもチャンスがあるのかな。でもそうなると、現状優先順位は元カノさんになっちゃうなぁ』
「…っは?おい、何ひでー事言ってんだよ。有坂のためを思ってるなら、彼女と別れてくれたらとかそういう事言うなよなっ」
『もー、結城君。もちろん有坂君のためになるのが一番って思ってるけど、でもうまくいってないなら当たり前だけど付け込みたいよ』
なんなんだ。
元カノに関しては味方だと思ったらやっぱり敵だった。
ていうか女子怖すぎだろ。
修学旅行中はあんなに儚げな感じだったのに、自分にも分があるって気付いたら容赦ない。
『ま、それに有坂君が見た目で選ばないっていうのはよく分かったから、私にもまだまだ出来ることがあるなって』
「えっ」
なんか今さりげなく朝宮さん、田舎女に対してひでーこと言ったような。
つーか無駄にやる気だすんじゃねえ。
『とりあえず結城君は、その元カノさんと有坂くんがこれ以上いい感じにならないように邪魔してよね』
「えっ?あ、うん」
『もー、大丈夫?しっかりしてよね』
なぜか最終的に朝宮さんのペースに乗せられて終わった。
愚痴った分はちょっとスッキリしたけど、代わりにモヤモヤが増したような。
結局スッキリしないままで、縁側の縁でスマホを見つめて今日何度目かのため息を吐く。
とはいえ何をしたって気が紛れるだけで、結局は有坂と話さないとダメなのは分かってる。
だけど話したって過去は変えられない。
田舎女と付き合ってた事が無かったことにはならない。
受け入れるしかないんだろうけど、受け入れたくない。
大好きな人が自分以外を大好きだった事実なんて、マジで知りたくなかった。
ゴロンと縁側に横になって、モクモクとした入道雲を見つめる。
それに有坂父には人間関係を学べ、みたいなこと言われたけど、俺の場合は容姿で周りがまともな反応をしてくれないだけで、性格自体に問題なんかない。
実際接客の仕事は出来てるし、有坂父だって俺の動きは褒めてくれたはずだ。
女将さんが田舎女から何か学べって言ってたような気がするけど、でもアイツから学ぶものなんてせいぜい同じようにドジらないことくらいだ。
「マス、お友達が来てくれてるわよ」
不意に上機嫌な母さんに呼ばれて、がばっと身体を起こす。
有坂だ。
有坂が来てくれた。
俺が返事を返してないから、心配してきてくれたのか。
まだ気持ちは全然晴れてないし有坂がどんな言い訳してくるのか分からないけど、それでもやっぱり話したいし、何より会いたい。
ダッシュで入り口まで行って、ドキドキしながら扉を開ける。
そこにいた人物に目を見開いた。
「あ、あの…益男さん。お休み中すみません」
そこには真っ赤な顔をしてモジモジと俯く、田舎女がいた。
「…何しに来たんだよ」
一気に気持ちが急降下する。
まさか有坂と喧嘩中の俺のことを笑いにきたのか。
それとも有坂を返して、とか言いに来たのか。
あの話を聞くまではハイハイ言うこと聞く女版水瀬くらいにしか思ってなかったのに、もう今はそうとは思えない。
一気にイラつく気持ちが込み上げたが、目の前の田舎女はソワソワしながら鞄から何かを取り出す。
「ま、益男さん、あ、あの。この間図書館で就職の勉強してた時、ノートが見たいと言ったでしょう?…その、あの時はノート綺麗じゃないから、恥ずかしくて断っちゃって――」
何かと思えばそんなことあったな。
あんなこともうすっかり忘れてた。
「そ、それで…もし良かったら、代わりに参考書を持ってきたので良かったら見てください。あ、あとノートも一応綺麗に書き直したので、そっちも見たいのでしたら…その…」
ゴニョゴニョと語尾を小さくしながら、鞄から取り出したそれを差し出される。
結局ノートを見せるのは抵抗があるらしい。
別にあの時はちょっと思っただけで、有坂が同じ大学にさえ行ってくれればそんなのはもうどうでもいい。
「いらねーよ。余計な事すんな」
そう言ってフイと顔を背ける。
田舎女がビクリとしたように、俺の態度に目を丸くした。
「…えっ、あれ?あ、あの。私何か怒らせるようなことを――」
何か言ってたが、言葉の途中でバタンと扉を閉める。
アイツは嫌いだ。
もう二度と顔も見たくない。
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