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バサッと有坂が手にしていたアルバムが床に落ちる。
伸びてきた手が俺の腰を引き寄せ、そのまま抱き締められた。
まるで逃がさないというようにしっかりと腰と後頭部に手を回されて、心臓がバクバクしてしまう。
煽ったのは俺だけど、煽られるの早すぎだ。
マジで寸前まで我慢していたような力強さで抱きしめられて、それだけ有坂に求められていたことを知る。
堪らない幸福感が身体いっぱいに広がり、無性に泣きたいような気持ちになる。
有坂に求められてる。
自分だけを見てくれてる。
ただそれだけでここ最近の不安が薄れて、麻薬のような幸福感が身体を支配する。
「…ああ、お前は本当に美しいな」
言いながら何度も唇を目蓋や頬に押し付けられた。
有坂にもっと夢中になってほしい。
俺が側にいないとダメになるくらい、俺だけを見て欲しい。
もう俺以外、全部捨てて欲しい。
ハッキリと黒い瞳を見つめることで応えると、焦ったように唇を重ねられた。
数度強めに唇を吸ってから、すぐに有坂の舌が口内へ入り込んでくる。
後頭部を支える手に力が入り、ぴったりと隙間なく唇を合わせられる。
やばい、気持ちいい。
ゾクゾクと背筋が甘く痺れて、思わず有坂の首に手を回す。
すぐ側にベッドがあるのに、構わずフローリングに押し倒されて長くて深いキスをされる。
少しでも反応した個所は舌先で執拗に攻め立てられ、いやいやと首を振っても構わず続けられる。
痺れそうなほど舌や唇を吸われ、飲み下せない唾液が口端から滑り落ちる。
いつものしつこくてねちっこいキスだ。
でもそれが堪らなく気持ちよくて、口内を嬲られる度に身体が震えてしまう。
酸欠で息が苦しくなって、頭が朦朧とする。
有坂もキスの合間に浅い呼吸を吐き出しては、何度も俺の唇を貪る。
しばらく奪われるようなキスに溺れていたが、不意にがばりと身体を離された。
身体に力が入らなくて、くたりとしたまま有坂の顔を見上げてしまう。
まるで発情期の動物みたいな、強い視線。
ビリビリと背筋に甘い感覚が走り抜けたが、有坂はフイと視線を逸らすと俺を離して立ち上がった。
「…っは、ま、待って」
どこへ行くんだ。
眩暈がしそうなほど頭がくらくらしていたが、縋るようにその手を掴む。
今は俺だけを見て欲しい。
勉強だとか他の事は全部忘れて欲しい。
俺以外、何も見えなくなって欲しい。
これで夢中になってくれないなら、もう俺に出来ることなんて思いつかない。
突き放されるのかと不安になったが、有坂は荒々しく一度息を吐きだした。
「少し待っていろ」
余裕なく命令口調でそう言って、俺の手を離す。
不安になりながら有坂を目で追うと、窓際へと歩いていく。
そのまま少し開いていた窓を閉めて、シャッとカーテンを引いた。
まだ午前中だ。
外ではミンミンと蝉が鳴いていて、カーテンを閉めても漏れる日差しは明るい。
何の意味があるのかと思ったが、ハッとする。
有坂の行動の意図に気付いて、一気に全身に熱が昇った。
煽ったのは俺だ。
だからそれがどういう意味なのか分かって、身体が強ばってしまう。
最後にカチャリと部屋の鍵を閉めてから戻ってくると、有坂は再び俺の上に覆いかぶさってきた。
すぐ側にベッドがあるのに、わざわざ移動する気はないらしい。
「あ、有坂――」
俺の顔に影が掛かる。
何か言おうと思ったが、構わず肩を押された。
「…す、すんの」
「ああ」
「で、でも女将さんが…」
「今日は夜まで帰ってこない」
ばっさりとそう言われた。
自分から誘ったくせに、どうしても怖気づいてしまう。
戸惑っていると、すぐ近くで黒い瞳に目を覗き込まれる。
「…結城、ダメか?したい。させてくれ」
珍しく有坂が少し懇願するような顔つきになる。
酷く渇望するような黒い瞳を向けられて、ゾクゾクとした感覚が指の先まで駆け抜けていく。
きっと今有坂は、俺の事しか考えてない。
気付けば応えるように手を伸ばしていて、容赦なく唇に噛みつかれた。
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