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ずるりとズボンを下げられると、自分でも顔を隠したくなるほど下着がぐしゃぐしゃだった。
漏らしたみたいに、ボクサーパンツにがっつり染みが広がっている。
「…っあ、み、見んな…ッ」
「無理を言うな。全て見せてくれ」
やっぱり有坂ってむっつりだ。
興奮した様子でガン見されて、ぶわっと顔に熱が昇る。
そのまま下着も脱がされると、大きな身体が俺に覆いかぶさってきた。
いつもみたいに唇を奪われて、深くて長いキスをされる。
こうなるともう頭が真っ白で、有坂の首に手を回して自分からもキスを強請ってしまう。
頭の芯が蕩けそうなほどめちゃくちゃ気持ち良くて、されるがままに身体を委ねる。
有坂に触れられるところ、全てが気持ち良くて堪らない。
だけど夢中になって求められるたびに、なぜだかグズって泣き出したい気持ちになる。
有坂が一緒にいてくれる。
これから先も、ずっと一緒にいてくれる。
俺が求めていたことが現実になって幸せで堪らないはずなのに、だけど同じくらい胸がジクジクと痛む。
――もし。
もしも俺が、有坂と離れることを選んだら。
そしたら有坂は、色んなものを失わなくて済む。
やりたいことを全てやれて、家族とも縁を切らずに済む。
そう思ってしまった瞬間、目の前が真っ暗になりそうな恐怖が訪れる。
誰もそんなこと強要はしてないのに、不安になって堪らず有坂にしがみ付く。
「…っ有坂、好き。大好き…っ」
「ッ結城」
必死に気持ちを伝えると、焦ったように黒い瞳が色を変える。
堅いソレを俺の中に捻じ込んで、これ以上ない程奥深くまで押し入れられる。
「――っあ、あッ、ぁあ…ッ」
「…っはぁ、っく、愛している…っ。益男、愛している――」
きっと俺達は本当に両思いで、お互いにどうしようもなく大好きなんだ。
ぴたりと身体を寄せ合って、余裕なく相手を求める。
嫌な事や怖い事を全部を打ち消すように、有坂の愛情を貰ってはひたすら快感に溺れる。
酷く甘くて、熱くて、もうドロドロに溶けてしまいそうだった。
だけどどれだけ深い愛情を貰っても、覚えてしまった胸の痛みが完全に消えることはなかった。
「結城、珍しいな。お前が起きているなんて」
「…あ、うん。なんか寝れなくて」
情事後、シャワーを浴びた有坂が部屋へ戻ってくる。
とっくに俺が寝ていると思っていたらしく、また驚いた顔をされた。
今日は珍しい有坂の顔ばかり見てる気がするけど、きっとそれだけ俺が珍しい事をしているからだ。
ちなみに俺の事は先にシャワーを浴びさせてくれて、足腰が立たない俺を抱きかかえながら懇切丁寧に身体を洗ってくれた。
こんなところでも、有坂はいつも俺を優先してくれてる。
「どうした。今日は色々あって疲れているはずだろう」
「そうなんだけど。…なんでだろ」
「やはり何か悩みゴトがあるのか」
そう言われたけど、この悩みはまだちょっと有坂には話せない。
別に有坂を信用してないからじゃない。
きっと俺がもしこの悩みを打ち明けたとしても、有坂は優しいから俺を取ってくれる。
気にしなくていいと、心配しなくていいってたくさん言って髪を撫でてくれる。
有坂は俺の事が大好きだから、絶対にそう言うだろうっていう自信が今はある。
「あー…えっと、夏休みがもう終わっちゃうからかな」
そう返したら、有坂が優しげに目を細めて俺の隣に腰掛ける。
ベッドが沈み込んで、ふわりと風呂上がりのいい香りがした。
「夏休みを終えたら、本格的に受験シーズンが始まってしまうな」
「…うん。有坂とあんまり遊べなくなっちゃう」
「それも大学に行くまでの辛抱だ。同じ大学にさえ行ければ、いくらだって共に過ごす時間はある」
「うん。そうだな」
――じゃあもし、同じ大学に行かなかったら?
そうしたら有坂と一緒の時間はほとんどなくなる。
間違いなく今みたいな生活は出来ないし、それどころか長期休みか、頑張っても月に一回くらいしか会えない。
そんなのは絶対に耐えられない。
だけど俺がそれに耐えさえすれば、有坂は何も失うことはない。
例え離れたとしても、有坂が俺の事をそう簡単に忘れたりしないことはもう分かってる。
有坂はそんな奴じゃないし、何より信じるってもう決めた。
でも有坂がいなくなったら、俺はこっちで一人ぼっちだ。
こんなに優しい温もりも、熱くて深い愛情も知ってしまったのに、また一人ぼっちになってしまう。
想像するだけで足の先から、凍り付くような冷たさが這い上がってくる。
「…あ、有坂」
「なんだ」
思わず名前を呼ぶと、隣で髪を拭いていた有坂が俺に視線を向ける。
目が合ったら、ギュッと心臓が詰まって顔が熱くなる。
やっぱり有坂が側にいないなんて、考えられない。
俺は有坂の側で、ずっとドキドキしながら甘えていたい。
「あ…あのさ、有坂の一番大切なものってなに?」
なんとなくそう聞いてみる。
有坂のことだから、どうせまたド真面目にどれが一番だとか順位を付けて比較するものではない、とかなんとか言ってきそうだけど。
そんな答えを予想していたら、切れ長の瞳がふわりと優しく細められる。
タオルから手を離して、愛しげに頬を撫でられた。
「結城が一番大切だ。何よりも、誰よりもお前のことを想っている」
弓道でも、家族でも、旅館でもない。
しっかりと迷いなく答えてくれた言葉に、ズキリとまた胸が軋んだ。
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