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文化祭の企画に進路相談、それから謎の有坂のリベンジまで加わって、新学期早々めちゃくちゃ忙しい一日を過ごす。
放課後は当然受験勉強だ。
ちなみに有坂は一日きっかり30分そのゲームをやっていたらしく、30分程度で強くなるのかよと思ったけど一年近くやってたおかげかそれなりに出来るようになっていた。
他のゲームは安定の下手くそだけど。
だけどこれだとまだ不安って事で、リベンジの日までは俺が特訓することにした。
まあ今は部活もやってないし、受験勉強の気晴らしにはもってこいって感じだ。
「――えっ、もう時間?」
「もちろん水瀬に負けるつもりはないが、この時期にゲームに根を詰めて学業に支障をきたすわけにはいかない」
「でも30分しかやってねーぞ。ゲームは2時間までだろっ」
「受験生は30分も気晴らしすれば十分だ」
有坂はリベンジ前だろうと安定だ。
後夜祭に俺を賭けてる事忘れてんじゃねーだろうな。
と思ったけど、有坂は忘れてない。
てか忘れてたらゲームやらないやつがわざわざ買ってまでコツコツ一年間も同じ作業しない。
チューと同じく案外ねちっこくしつこく根に持つタイプなのかもしれない。
「…は、ハルヤン」
声を掛けたけど、俺の50メートルくらい先をスッと通り過ぎていった。
一生懸命勇気をだして声をかけたのに無視された。
ちなみにハルヤンとは全然仲直りしてない。
というか目すら合わせて貰えない。
話しかけようと思ってもいつも女と話してるし、壁からコソコソ覗いてタイミングを伺ってるけど難しい。
遠くから声を掛けるのだけで精いっぱいだ。
今までは黙ってたって寄ってきてたのに、こんなに無視するなんてあんまりだ。
本気でもう俺の事はどうでもいいと思ってるのか。
「…それだけ俺が、ハルヤンに悪い事したのか」
廊下の片隅でぽつりと呟く。
こんなに無視されるとは思ってなかったから、日に日に気持ちが落ち込んでいく。
理由は分からなくてもともかくこっちから話しかければ、またすぐ前みたいに戻れるんじゃないかって思ってた。
だけどきっとそれで許されるのは、家族とか、有坂とか、俺の事を大好きな人だけなんだ。
いや、もしかしたらそれもちょっと違うのかもしれない。
「…あ、あの日は確か、有坂とお祭りに行けなくて…だから俺は自分の事でいっぱいいっぱいで――」
思い返しながら、必死に理由を探す。
自分の悪いところを探すとかなんだか泣きたくなったけど、でもきっといつもの考えの俺じゃダメなんだ。
有坂の事でも気付いたけど、間違ってた事をそのままにしていいわけじゃないんだ。
ちゃんと理由を探して、これからどうするか考えないといけない。
今のままの俺じゃ、きっとハルヤンは許してくれない。
文化祭までの日々が近づいていく。
手間が無いようにしたとはいえ、それでも文化祭が近づけばそれぞれが手分けして内装やら仕入れ業務をしたりと忙しくなってくる。
それでもみんな文句言わずに楽しそうにやっていて、一応俺が言いだしたことだからちょっとだけ安心した。
「結城、次のHRは文化祭の準備抜けて、前に言ってた進路指導説明会の方参加していいから」
担任に声を掛けられて、コクリと頷く。
この俺がわりとこの日は楽しみにしていた。
もしかしたら有坂のためになれる何かを見つけられるかもしれない。
有坂の事を間違ったって気付いたあの日から、結局有坂のために何も出来てなかった。
だけどこの進路指導説明会で何かを見つけられたら、少しは変わるかもしれない。
進路のことなんて本気でどうでもいいと思ってたのに、今は有坂のために出来ることを探すので必死だ。
「有坂、行ってくる。何か見つけられたらいいけど…」
「ああ」
文化祭準備は有坂と一緒に会計の仕事を担当していたから、書類を置いて立ち上がる。
会計担当とかクソ面倒だけど、まあ俺がやろうって言いだしたことだから仕方なくやってやることにした。
でも有坂が一緒にやるって立候補してくれたから、そうなったら話は別でめちゃくちゃ楽しくやってる。
担任が入り口で待ってるからすぐに行こうとしたけど、ふと有坂が俺の手首を掴んだ。
「結城」
「ん?なに」
「…あまり焦らずとも、やりたいことはお前のペースでゆっくり決めていけばいい」
「えっ、なんだよいきなり」
受験シーズンだから勉強とか進路とかどうのこうの言ってたのは有坂の方だ。
今から進路指導説明会とかギリギリすぎるくらいなのに、いきなりどうしたんだ。
「でも俺、やりたいこと決めたいんだ。有坂のためにもなるかもしれないし」
そう言ったら、有坂がハッとしたように目を見開く。
少し押し黙ってから、そっと俺の手を離した。
「俺の事は気にしなくていい。…だが、そうだな。余計な事を言ってしまった。お前が自分で考えられる道が一番良い」
「どうしたんだよ」
珍しく何か戸惑った様子の有坂にちょっと驚いたけど、担任が入り口で急かすから慌てて足を向けた。
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