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進路指導室に寄ってさっき聞いたことを少し調べてから、有坂と一緒に帰ることにした。
調べたことを思い返しながら、ぼーっと有坂の隣を歩く。
「どうした。何か考えているのか」
「…っへ?あ、えっと…」
「進路の事か」
「うん。まあ…」
言いながらさっき調べてきたことを思い返す。
自分の進路のことを自分で調べるなんて、今までにしたことなかった。
高校は兄貴達が入ってたからって理由だけで決めたし、大学は有坂が一緒に通えるところを選んでくれた。
でもこうやって名刺も貰って、ちょっといいかもって思えるものを見つけた。
それはなんだか今までに感じたことのないようなワクワク感があるけど、でも調べれば調べるほど、それを目指すのに必要な過程があることに気付かされる。
「…あ、きょ、今日はここまででいい」
「――は?」
有坂が俺の家まで送ってくれようとしてたけど、駅まで着いてからそう伝える。
まだ日は明るいし、有坂に会う前はこの時間なら一人で帰ってた。
本当はまだ全然離れたくないし、家まで送ってもらいたいし、なんなら家に帰りたくない。
時間が許す限りずっと一緒にいたい。
でも有坂はこっちの大学に通うために自分で費用を出すって言ってたし、これ以上余計な金を使わせたらダメなんじゃないのか。
本当は俺が電車代も全部払って有坂が送ってくれるのが一番いいけど、有坂は俺にお金を出させたりはしない。
「何か予定があるのか」
「そ、そうじゃないけど…」
「じゃあいきなりどうした。もし何か遠慮しているのなら、俺が送りたいのだから気にする必要はない」
「…うん、分かった」
有坂がそう言うなら、やっぱり送ってもらうことにする。
一度断ってはみたけど、本当はまだ離れたくない。
有坂の事を考えたらもっと遠慮するべきなのかもしれないけど、でもやっぱり少しだって離れたくないし一緒にいたいんだ。
結局家まで送って貰って、母さんが有坂の分の夕飯も作るって言うからそれまで一緒に勉強することにした。
二階の自分の部屋に入ると、いつも通り有坂が俺の部屋を片付け始める。
まだかなってソワソワしてベッドの上で正座してたけど、もしかしたらこの時間って結構無駄なんじゃないのか。
有坂はいつも片付けから入るから、ちょっとでもそうならないように整理しといたほうが良かったんじゃないのか。
そこそこ綺麗になってきたタイミングで、ベッドから降りてテーブルに勉強道具を広げる。
有坂が片付けてくれてる間に飲み物やら何やらもちゃんと用意して、準備万端だ。
「結城」
さてこれから勉強始めようってところで、不意に有坂に呼ばれた。
カチカチとシャーペンの芯を出しながら有坂を見たら、ちょいちょいと手招きされる。
一体なんだ。
「なに」
呼ばれるまま有坂のところに四つん這いで行くと、不意に両手が伸びてくる。
グイと身体を引き寄せられて、対面するように膝の上に乗せられた。
「…っあ、有坂?」
いきなり近くなった距離に驚いたが、そのままギュッと抱きしめられる。
なんでいきなり可愛がってくれる気になったんだ。
いつも受験生だから、勉強しろってうるさいのに。
すぐ耳元で聞こえる有坂の息遣いに、ドキリと心臓が跳ね上がる。
「…10分だけ時間をくれ。少し結城と触れ合いたい」
「ど、どうしたんだよ」
聞いたけど、有坂は何も言わずに俺を力強く抱き締める。
10分といわず俺の時間なら一生分をあげるけど、でもこんな有坂は珍しい。
どことなく甘えるように鼻先を首筋に押し付けられて、ちょっとくすぐったい。
ふふ、と笑って身体を震わせたら、パクリと首筋に口付けられた。
「…っん」
強く吸い上げられる感覚。
ピリッとした鈍い痛みが訪れて、有坂に痕を付けられたことを知る。
一度唇が離れて終わったのかと思えば、今度は髪の後ろに回った手が襟足を持ち上げる。
「――っあ」
そのまま項にかぷりと噛みつかれた。
首の後ろとか普段触れられないところを甘く噛まれて、ゾクゾクと背筋が震えてしまう。
一度舌で撫でると、有坂はそこも同じように唇を押し当てて吸い上げる。
じわりと吸われた個所が熱くなって、また痕を付けられたことを知る。
まさか二ヵ所もキスマーク付けられたのか。
どっちも見えないところだし、有坂にされるなら何ヵ所付けられたって別にいい。
でもなんだか珍しい。
まるで俺の所有物だって深く身体に刻み込まれてるみたいだ。
めちゃくちゃ嬉しいけど、最近の有坂は珍しい事ばっかりだ。
それからすぐに顔を上向かされて、唇を奪われる。
すぐに深くなる口付けに、とろりと意識がまどろんでいく。
「…っは、益男」
有坂はいつにもまして口数が少なかったが、時たま切羽詰まったように俺の名前を呼んだ。
目を合わせて唇を重ねて、ぼんやりとした意識の中でされるがまま有坂を見つめる。
もう10分はとっくに過ぎているような気がするけど、いつになく余裕のない黒い瞳がどこか切なげに俺を見つめていた。
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