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急展開 side深雪
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翌日、友達と遊んだ帰りに電車に乗っていると電話がかかって来た。相崎さんだった。俺は嬉しい反面驚きが強く、なんで電話を?と思い画面を見つめることしかできない。そもそも電車内だし。
次の駅で電車を降りて折り返すと相崎さんはすぐに電話に出た。
『あー深雪ちゃん!今から会わない?渋谷でいちと飯食ってるんだけど』
「いち…?あ、壱哉さんですか?」
『そうそう、ギターの!駅前まで来てくれたら迎えいくからさ』
「じゃあ…近くにいるんで行きます」
今いるのは恵比寿のホームだからすぐだ。こんな機会二度とないかもしれない。断るわけない。
渋谷に着くと、細身で少し髪の長い男の人がこっちに手を振っていた。相崎さんだった。
「深雪ちゃん!わざわざありがとう」
「呼んでもらって嬉しいです」
「失恋した痛み俺が慰めてやるからなあ」
「バカにしないでください」
カラカラと笑う相崎さんの隣を歩きながら駅近くのビルの中にある店に入った。
そこはバーのような店だったが、ドアには「CLOSED」の看板がかかっていた。
「深雪ちゃん来たぞー」
「急にごめんね、深雪くん」
壱哉さんは申し訳なさそうにそう言った。ステージの上ではあまり喋らない彼だが、とても優しそうだ。
「いえ、全然。えーと、ここって…?」
「俺の弟の店。あれ?秀太は?」
「トイレ。すぐ帰って来るよ」
弟いたんだ。当たり前だけどステージでは家族の話とか全くしないから知らなかった。それを知れただけでも収穫だ。
「あれっ、女の子がいる。男呼んだんじゃなかったのかよ」
「えっ?あ、相崎さん?」
カウンターの奥から出て来たのは相崎さんそっくりの男の人。
「秀太、深雪くんっていう男の子だから」
「あ、俺たち一卵性の双子なんだよ。髪色も服の趣味も一緒だからマジで間違われんだよね」
酒らしきものを飲みながらうんざりしたように言う。
「てかさぁ、俺たちどっちも相崎だから名前で呼んでよ。名前わかる?」
「流石にわかりますよ。翔太さん」
「おーさすがファンだな。深雪ちゃんのことライブハウスでちょくちょく見るけど、俺らのこといつから見てくれてんの?」
「一昨年からです」
「えっ!一昨年って言ったらほぼ結成当時だよね?」
壱哉さんが驚きながら嬉しそうに言った。喜ばれると少し恥ずかしくなってしまう。
「他のバンドとの対バン見た時好きになって…」
「ずっと好きでいてくれてんの深雪ちゃんくらいじゃねぇかな〜。素直に嬉しすぎる」
そう言われて俺まで嬉しくなる。くすぐったい気持ちになりなんと言っていいのかわからない。
「深雪くんだっけ?何か飲む?」
秀太さんが気を使ってくれた。俺はウーロン茶を頼んだ。
バンドの話や最近あったことを話しているうちに翔太さんはすっかり酔っ払っていた。
「みゆ、みゆ」
カウンターからソファに移動した翔太さんが俺に手招きして呼ぶ。
「みゆって俺ですか?」
「お前以外に誰がいんだよ」
「翔太飲み過ぎ」
「いちは飲まなすぎ。黙って飲んでろ」
俺が隣に座ると酒で頬を赤くした翔太さんが眉間にしわを寄せ俺の顔をじっと見つめる。
意識したことなかったけど顔が整ってる。切れ長の目に高い鼻。いわゆる塩顔というやつだ。
「…みゆ、まつ毛なげえなあ」
「よく言われます。女顔だし嫌なんですよ」
「何で。いいじゃん。俺みゆの顔好きだわ」
「えっ、んむ」
キスされた。え?キスだよな?これ。
頭が真っ白になって、秀太さんと壱哉さんの話し声が遠のいていく。2人は俺がキスされたことに気づいていないようだ。
「…なー、マジでタイプなんだけど」
「俺、男ですけど…」
「だから何?」
「えーと…」
どうしたらいいんだろう?バンドとしては何よりも好きだ。でも恋愛ってなったら…考えたこともなかった。わからない。
「俺の顔好き?」
真面目な顔でまっすぐ俺を見つめる。その視線が痛いほど刺さる。
「まぁ…顔は間違いなく好きです」
「じゃあ付き合って。絶対後悔させないから」
「…俺ノーマルなんですけど…」
「俺だってそうだよ。でも今フリーだろ?他に好きなやつ出来たら振っていいから」
「…俺嫉妬深いですけどそれでもいいなら」
「本当に?」
「こっちが聞きたいですよ。明日になったら忘れてるとか勘弁してください」
こんな酔っ払いの話、間に受けていいのだろうか。
「平気平気。俺どんなに酔っても記憶だけはしっかりしてるからさあ」
本当かな…。
ふとスマホを見るともう日付が変わっていた。
「翔太さん。俺そろそろ帰ります」
「家どこ」
「品川です」
「俺もその辺だから送ってく。なぁ、俺ら帰る」
翔太さんが2人に声をかけると気をつけてね、と言って手を振ってくれた。
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