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毎日この時間、この人の声で映画サークルの活動が始まる。
朝からよくやるなと思うが自分もそれを目当てのためにわざわざ教育学部の俺がドイツ語の講義を受けているためあまり卑下はできない。
目当てはこの映画サークルが好きということではなく
このサークルで撮影を担当している相良廉(さがられん)
という人を見るため。
なぜかと言われると少し困ってしまうが強いて言うなれば
この大学に入学した日のことだった。
期待に胸を馳せ大学生活を謳歌しようとする新入生の群れを1つ年上のあの人がまるで自分が入学生のような瞳で嬉しそうにカメラを構えて写真を撮っていた姿があった。
あの人が撮る写真はどんな写真なんだろうか。
そう気になるとこの感情は止められず視線は彼を追い続けた。
あんなに幸せそうに撮る夢中な姿に人としての魅力を感じたのだ。
自分には持っていないものを持ってるのだと。
あの人の名前を知ったのはサークルの新歓で配られたチラシに書いてあったのをみた。
ダメだと思いつつあの笑顔を一度だけ自分の携帯電話に収めたことがある。
映画サークルに入れば何か関われるかもしれないと思ったのだがあまり積極性のないこの性格じゃ無理だろうと諦めた結果、盗撮というなんとも情けないことをしてしまった。
何度も勝手にとってしまったのだからと消そうとしたが彼が笑っている写真を見ると消すのも失礼なのではと決めあぐねていた。
そんなくだらないことを考えていたら彼を遠くから見つめるだけで大学2年生の夏を迎えようとしていた。
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