アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
俺が俺である為に。3
-
「お忙しい中、すいません。僕、『りゅー』と言います。こちらに『ちー』ちゃ───さんという方はいらっしゃいますか?」
人目を引く根本まで染まった茶髪に筋肉が引き締まった体つき。七分丈の淡いオレンジのパンツに紺のパーカーから覗く白色のシャツには俺にはないセンスと自信が感じられた。
彼を一通り眺めると俺の冷静な思考は現実味を帯びて帰ってきた。いきなりの自己紹介と質問、丁寧であればいいってもんじゃない。
でも、さっき変な事言ってなかったか?
「…え。待てよ、───」
「あっあっあっ…!りゅーくん!?何で此処に!?」
ドタドタと品のない足音と共に玄関に顔を出す姉は目の前の奴らしき名前を口にする。
「貴方が、ちーちゃん…?ですか?」
「ああっ!いや…違うっ!私は姉の梨佳子、″ちーちゃん″はこっち!私はちょっと自分の部屋に用事があるから、よろしくねー。ちーちゃん♡」
背中を押され、無理矢理″りゅーくん″の胸の中に押し込められる。彼はバランスを崩した俺を受け止めただけなのだろうが、姉の事だ。意図的にやったとしか思えない。
「ちょっ…」
男の胸板に飛び込んだ感覚が分かるだろうか。俺は身長的に普通よりちょっと下で相手は平均より絶対高い。腕にスッポリ入る感覚…心地よい。
はっ…!何言ってんだ!俺!
「わ、悪────っ!!!」
「…抱きやすい。」
咄嗟に突き放そうとするが、それが出来なかった。そのまま、俺の背中に腕を回して自分の胸に再度押し付けたのだ。
「は、離せよ!いきなり何してんだよっ!」
俺は持てる力で身体を捩ると、締め付けていた拘束力が緩み、脱出する。彼の顔が少し寂しそうに見えたが、気のせいだ。
「あっ、ごめんなさい。つい…」
「つい…じゃねぇーよ!男相手にするんじゃねぇ!お前なら、いくらでも相手とかいるだろ……う。」
″相手とかいるだろう。″
そうだ…こんな見た目の良い奴がモテない訳がないし、彼女とかすぐ出来そうだし、それに…。
それに?
その言葉の続きは?
俺に紡ぎだせるのか?
その言葉を思っていいのか。
何故、俺は震えが止まらない?
「だ、大丈夫ですか?顔色が悪いですけど…」
また触れてこようとする奴に、言葉に出来ない嫌悪感が全身を巡る。
「触るな!気持ち悪い!」
添えられそうな手を弾き、俺はそのまま後ろを振り返り玄関を後にした。彼の顔を伺うように逃げる傍ら、少しだけ顔を見た。
彼の表情は悲しげで何処か諦めを感じさせる笑みを浮かべていた。頭から離れられそうにない、綺麗な顔立ちで。
俺は…可笑しくなったのだろうか。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 3