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鶴見流星 修学旅行編2
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修学旅行行きてえな。でも、うち金ないしな。
修学旅行、朝日と一緒に行きたいけど、うち、福祉もらっているから無理かもな。
でも、次郎兄ちゃんに相談すればなんとかなるかもな。
夏休み中に、兄ちゃんに顔聞いてもらって、遊園地の屋台でバイトに明け暮れた。給料は日払いで手渡し。
中学生だし、福祉貰ってる問題でどうしても手渡しじゃないと困るわけ。
夏休みにいっぱいバイトして、どうにか15万円貯められた。
修学旅行費6万円、3万円は靴とか服買ったりした。残りの6万円は貯金しておく。家に置いておいたら、確実にオヤジに取られるから、次郎兄ちゃんに預かってもらうことにした。
夏休み明けに、担任に現金で修学旅行費を渡す。
これで俺も修学旅行にいける。
朝日と同じ班だといいなと思った。
担任に朝日と同じ班にしてくれと頼んだ。
9月末に修学旅行の班の発表があった。
朝日は、赤坂と姪浜という男子と同じ班。優等生グループに入れやがった。
俺は、相模と駒沢ってやつと同じ班。こいつら1学期、喧嘩して、朝日にぼこられた奴らじゃん。
なんで朝日と同じの班じゃねーの。
不満だった俺は担任を問い詰めた。
結局のとこ、1学期に謹慎処分食らった二人は一緒の班にできないんだってよ。
ちっ。
家帰るとよ、オヤジがまた酒飲んでる。
学校があるからどうにか俺は平静保ってる。
また、くそオヤジ、酔って、畳の上にあぐらかいて一人で怒鳴ってるの。また幻聴かよ。マジ狂ってる。
マジ、俺、この家庭環境嫌だ。
何回かオヤジを強制入院させたけど、すぐ出てきてさ、また酒飲みだす。
はじめ兄ちゃんが言った。
「親父にはもう何も言わなくていい。飲みたいだけ飲ませろ。そのうち、肝臓がいかれて死ぬ」
兄ちゃんも、もうオヤジのことは諦めて、酒を買う金を渡してる。
はじめ兄ちゃんに聞かれた。
「俺んちに来るか?」って。
断った。
オヤジは一人じゃなにもできないし。
俺、いなくなったらもっとバカなことしそうで。
勝手に死んでくれるのは構わないけど、放火したり近所に迷惑かけて事件起こされたら困るし。
一人にしたらそれこそ新聞に載るようなことしそうで。
夜中にオヤジが「バカヤロー、カス!!」って一人で叫んでいるの聞こえてくると、もういたたまれなくなって、ヘッドフォーンして音楽聞くんだよ。
そしたら、オヤジのだみ声とか罵る言葉聞こえないから。
この家にいたら普通の奴なら心折れるけど俺はまだ大丈夫。
希望があるから。きちんと高校行って、将来はバイクの整備士になる夢があるから。
できれば朝日と同じ高校に行きたい。
朝日とすっかり仲良くなったから、お昼は一緒に食べてるよ。
朝日って面白いし、話が合うしよ。
朝日、好き嫌いないのな。
朝日が給食食べてるの見るの楽しーよ。
ちょうどアイスクリームが特別に出た日は、これ朝日にあげたら喜ぶだろうなって思って。
「朝日、アイス好きだろ。俺のあげる」
「いいよ。だってこれ鶴見っちのだし」
「俺はいいよ。今日、アイス食いたくないし、昨日、家でたらふく食ったし」
もう食費も底つきそうで、冷凍庫に入ってたチョコレートアイスしか、家に食うもんなかったから、昨夜さ、アイス、夕飯代わりに、俺、全部食ったんだよ。
しばらくアイス食いたくない。
「ありがとう」
朝日がアイス食べてる姿、心が和む。癒される。
小っこい可愛いにゃんこに食べ物あげてるみたいな、ふわーって優しい気分になるんだよね。
朝日が、笑うとすごく可愛い。
クラスのどの女子よりもかわいい。
こいつ男なのに、なんでこんな可愛いんだ?
夏休み中は朝日とあまり遊べなかった。
朝日は塾だったし、俺はバイトしてたから。
二学期に入って、ますます朝日の会うのが楽しみ。
朝日と話してると楽しんだよ。
ふざけてヘッドロックしたりさ。
給食のスイーツを朝日にあげたりさ。
帰りにコンビニの前でたむろって、たわいもない話したりさ。
体育の時間は一緒に準備体操したりさ。
こないだの家庭実習の調理の時間で、一緒にパスタ作ったり。
休み時間、サッカーして遊んだり。
家の嫌なこととか全部忘れられる。
朝日は友だち思いで、まっすぐで、俺すごく好きだよ。
友だちとしてな。
*-------------------*
修学旅行前日の夜、
「明日から2泊3日で修学旅行行くから」ってオヤジに言った。
そしたら何も返ってこないの。
背中向けて、日本酒飲んでるの。オヤジは酔っぱらってぐでぐでになっている。
なんでこんな奴がオヤジなんだよってわびしくなる。
「流星、夏休みバイトしてたんだろ。金くれよー」
働きもせず、酒ばかり飲んで、家散らかすだけ散らかして、子供に金ばかりせびっている屑。
「金なら、はじめ兄ちゃんにたかれば」
「やくざに金せびれるかよ」
オヤジが空の酒の瓶を投げた。俺の後ろのふすまに当たって、ふすまがべりって破れた。
もうちょっとで頭に当たるとこだった.
去年、俺、頭の手術したから頭はやばいんだよ。
「お前の友達の真琴って女の子にウリやらせたら儲かりそうだな」
この屑野郎。
俺の友達にウリやらせろなんて言うんじゃねぇ。
カッときてオヤジの背中に蹴りを入れた。
とまらなくなって、オヤジの頭をガンガン踏みつけていると、隼人兄ちゃんがちょうど帰ってきて、「なにやってんだよ」と俺を止めた。
後で、隼人兄ちゃんに言われた。
「オヤジ殺したいのも分かるけど、流星には少年院に行って欲しくない。はじめ兄ちゃんが言う通り、飲みたいだけ酒飲ませて肝硬変でオヤジには死んでもらおう。もうあいつそんなに長生きしないよ」
「わかった」
「これから俺、はじめ兄ちゃんの家に行って金もらってくるから。流星も来い」
ふっと、朝日が母ちゃん刺したって話思い出した。
母ちゃん? 俺が物心ついたときには、もう家にいなかった。
兄ちゃん達から聞いたけど、オヤジに愛想つかして出て行ったんだってよ。
いまはどこでなにしているか知らない。
探そうと思えば調べられるらしいけど、俺ら、母ちゃんの気持ちもなんとなく分かるから、もうそっとしておいた方がいいと考え、探さないことにした。
幸せになっているといいなと思う。
*--------------------------*
修学旅行は京都と奈良。
一日目は、東大寺とか奈良の寺見てよ。
一日目で気が付いたんだけど、俺の班、他の二人は修学旅行不参加で俺しかいないの。なにそれ。
夕食の後、部屋で俺、あぐらかいて、一人でどうすればいいのよ。
これ、ぼっちってやつじゃね?
でも昨夜はオヤジと色々あって疲れたから、風呂入って布団敷いて、寝ちゃったよ。
一人の方が静かでいいな。オヤジの叫び声も暴れる音も聞こえないし。
次の日は、班で自由行動の日。
俺、一人よ。
個人行動じゃん。どうすればいいのよ。
ボッチで自由行動なんてつまんねー。
しかたないから朝日の班の後ろついていった。
赤坂が「ついてきてもいいけど、うちの班はお寺参りしかしないから」
つまんなそー。
朝日の腕をつかむ。朝日、さらっちゃえばいい。
「朝日、拉致ってく。お前は二人で寺巡りしてろや」
朝日は、え?って顔して俺のこと見てる。
ずるずる朝日をさらうように連れて行く。
後ろで赤坂と姪浜が困った顔してみてる。まじめ君たちが、ぎゃーぎゃー抗議しだす。先生に言うとか言わないとか。くだらね。
朝日は「やばいよ」って同じような困った顔。
「寺まわりしても仕方ねーじゃん。それに、朝日、京都が地元なんだろ。観光地の寺回ってもつまんないだろ」
それからすげー面白かった。
朝日と鴨川行ったり、電車乗って動物園行ったり、コンビニでパン買って公園で食べたり、アイス食ったり。
新京極ってとこのアーケードぶらぶらしてたらさ、背後から「ハザマくーん」って声がするの。
振り返ったら、ブレザーの制服着た中学生男子が二人いた。うちの中学、学ランだから、明らかに他校。
「やっぱ、ハザマ君だあ。元気そうだね」って駆け寄ってきて。
この二人も真面目君だけど、赤坂と姪浜より砕けた感じで成績は普通の中学生といった感じの男子。
「匠君とショウちゃん」朝日は感涙極まって、ぐすってしてるの。
京都府立の小学校の同級生だったらしい。
三十分ぐらい、そいつらと話してるの。
すごく楽しそうで、見ていてちょっとうらやましかった。
俺、全然話に入れないし。
朝日はスマホとか持ってないから、俺のラインを朝日の友達と交換した。
「じゃあ、ラインするよー。鶴見君、はざま君、さよならー」
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