アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
キセキ黒(死ネタ)
-
『流石皆さんですね……』
今日は2月14、バレンタインです。
ここはバスケで有名な帝光中学、なので一群である皆さんにとって、バレンタインはチョコが貰えて当然なのです。
え?僕?
ふふ、忘れたんですか?
僕は影が薄いんですよ。試合に出てること、一群にいること。
いや…それ以前に僕がバスケ部にいることすら、知ってる人は全然いないと思います。
いやぁ、流石、モデルの黄瀬君ですね?学校の前に無関係者が待ち伏せてます。
下駄箱?原型をとどめてるチョコは無いんじゃないですか?
あー、無理やり押し込んで…(´・_・`)
赤司君も主将ですからね。
他のキセキよりは貰ってます。
断り方が紳士的すぎて逆に惚れさせてますよあの人。
紫原君は、貰ってすぐに食べてますね。
あれじゃあ色んな女の子に勘違いされても仕方ないです。
緑間君あたふたあたふた手を動かしてます…いい加減慣れましょうよ…
青峰君は………あぁ、可愛い子からしか貰ってないですね。
酷いです。断られた子が可哀想です。
「黒ちんは?くれないの?」
『いや、チョコって女の子が男の子にあげるんですよね?僕は用意してませんよ…』
「えっ?俺男からもチョコ来たっすけど…。ってか、好きな人にあげればどっちでもいいんじゃないすか?」
「俺はっ別に…欲しくなんてない…のだよ……」
「別に俺ぁテツから貰えりゃいいんだけどよ?」
「テツヤ…くれないのかい?」
どうしましょう。用意なんてしてません。
でも皆さんにはいつもいつも、お世話になってます。
あげなければ失礼ですね…
………あぁ!
市販ですがチョコがあったかもしれません!
確か鞄に………おぉ!ありました!
帰りにでも渡せればいいですが…
放課後、渡すタイミングを計ってしばらくそわそわしてしまいました。
後々考えると凄く恥ずかしいです…
『皆さん!し、市販でよければチョコあるのですが…あの…』
「あー…テツ、俺はこっちのがいい」
……と、
口ずけをされました。青峰君に。
キセキの皆さんの前でです。
『なっ………』
「峰ちんズルイー」
「青峰っち!うらむぜ一生っすよ!」
「なっ、なっ、何をしてるのだよっ」
「大輝、テツヤから離れろ。そのまま池に落ちろ。」
『な、なにするん…ですかぁっ』
「お前反応可愛いすぎか。別にいいだろ?まさかファーストキスじゃあるまいし」
あぁ、もう本当…この人は……
僕がキスをしたことあると、どう考えればなるんでしょう?
『アホ峰くん…((ボソッ』
………あれ?この沈黙はどうすればいいのでしょう?
沈黙を破ったのは赤司君でした。ただ…
「真太郎、ハサミをよこせ。大輝を殺す」
やめて下さい。というか、ここ道路のど真ん中ですよ?
周りにどんな目で見られるか…!
「黒ちーん俺もいいっしょ?」
『は?何言ってるんですか?』
僕は紫原君にイグナイトを打ちます。
倒れそうになった紫原君を黄瀬くんが支えます。
わいわいと近所迷惑な騒ぎがしばらくそこで続いた。
…こんな…、こんな楽しい日々が、長く続けばいいのに。
……僕は最近、部活に行っていません。
僕は最近、赤司くんに部活に出ろと言われ、何も言わずに逃げてしまいました。
僕は最近、赤司くんに部活に来ないなら辞めろと言われました。
…僕は最近、部活を辞めました。
キセキの皆は僕を問い詰めます。
なぜ、あれだけ楽しそうにしていたのに辞めてしまったのか?
と。
僕は小さい頃からの持病がありました。
体が少しずつ、言うことを聞かなくなるそうです。
体に異変が起こるのはまだまだ先の話だと医者に言われていました。
…ですがなぜでしょう?
足が気づいたら動かなくなっているんです。
試合途中では、足が動くよう集中しているので、気付かれることはありませんが。
それでも、試合でいきなり動かなくなる事がありました。
もう、隠す事はできない。
そう思いました。
…ばれてしまったら…、きっと優しいあの人達のことです。…同情されてしまう。
そんなのは、嫌だ。
今まで同じ場所で戦ってきた。それなのに、可哀想な人、勝てなくても仕方がない。
…そんな風には思われたくない。
だから僕は皆さんから離れようと、苦心ながらに決意しました。
……
もう、足は動かなくなりました。
片手も、左腕が動かなくなりました。
体を自分の力で起こすのが難しくなりました。
僕はあと少しで死にます。
。。。。。。。。。。。。
テツヤが部活を辞めた。
まさかあのテツヤが辞めるなんて夢にも思っていなかった。
テツヤなら出来る、また部活に戻ってくる。そう、高望みしてしまっていた。
なぜ、部活を辞めたか。
それは僕はもちろん、大輝や真太郎、凉太や敦が聞いても、答えることは無かった。
僕らはテツヤが大好きだった。
…どうにか戻ってきてくれないかと色々な策を考えているとき、ふと携帯が着信音を奏でた。
『赤司君…黒子、です。』
テツヤからの電話だった。
「今更辞めた奴が何の用だ。」
冷たく言う。
自分でもどうしてこんなことを言ったのかわからなかった。
戻ってきて欲しかったのではないのか。
今まで自分が育ってきた環境と己のクセに腹が立った。
……ただ、テツヤはすみません、と謝った。
『僕…は、何があってもキセキの皆さんには知られ…たくないと思ってました。でも…』
でも?
一体、何を知られたくなかった、と?
一緒にいた僕らに知られたくなかったこと?
『僕はもう…生きられ…ない…って…聞いたら…っ、どうしても…皆さん、の声が聞きたくなって…しまって…』
ぽつりぽつりとテツヤは話し出した。
『お願い、です。電話越しの声だけでも…聞かせて下さ…っ』
テツヤが…死ぬ?
テツヤはそれを知っていて…
部活を辞めて…理由も言わなかったのか?
「そこで…待ってろ。すぐにそこに行く。」
『え?赤司く…』
黒子がいい終わるのを待たずに電話を切った。
大輝と真太郎と凉太と敦を連れて行こう。きっと言えばわかってくれる。
ガラッ!
「テツヤ!」
「テツ!」
「黒子!」
「黒子っち!」
「黒ちん!」
テツヤのいる病室に入るとそこには…
まるで動かない、動くことないテツヤがいた。
「テツ…ヤ?」
『みな…さん…?……ありがとう…、ございます…っ僕なんかのために来てくださって…』
「僕なんかとか…言うんじゃねぇよ…!…俺らは…なにも知らないで1人で悩ませて…っ」
大輝がテツヤを抱きしめた。
いつもならテツヤは体をよじってよけるだろうが今は…全く動かない。
『あぉ…峰く…っふっぁあ…』
テツヤが泣き出した。
右手だけが使えるのだろうか。
必死に顔を隠そうとしている。
けれど…
僕達にとってその行為は…ただただ、テツヤが欲しい、テツヤにいなくならないでほしい、テツヤに生きていてほしい…
そう思わせる事にしかならなかった。
「黒…ちん!なんでいってくれなかったの!俺は…俺達は…バスケだけの仲間だったの?俺は…黒ちんが大好きなのに…っ黒ちん…行かないでよ…」
そんな敦の言葉が僕達の平常心を狂わせた。
「くろ…黒子っち!ぁあぁぁあ、いやっすよ、俺は…俺は…黒子っちがずっと好きだったんスから!」
凉太が叫ぶと、テツヤは右手でイグナイトを凉太の腹に当てた。
それは弱々しく、涼太の身体が揺らぐこともなかった。
「黒子っちぃ…ぁぁぅ…っ」
凉太がテツヤの右手を握った。
それにともなって、敦は動かない左手を握った。
今、テツヤは大輝に抱きしめられ、右手を凉太に、左手を敦に握られている状態だ。真太郎はぽろぽろと泣き出していた。
…ああ。こんな感覚久しぶりだ。
苦しい、とはこういうもの、だったな。
僕の頬に水が伝った。
。。。。。。。。。。。
僕が赤司君に電話をすると、僕の病室にキセキの皆さんが集まってしまいました。
…ダメですね。折角秘密にしようと退部までしたのに。
最後の最後に折れてしまいました。
どうしても目頭が熱くなってくる。
キセキの皆さんが泣き出してしまいまって、僕の目からも涙が溢れた。
やめてくださいよ。僕はそんなつもりで呼んだんじゃないんです。
ただ、皆さんの声が聞きたかっただけなんです。
最後の命も、最後の瞬間まで、
皆さんのことを思っていたい。
『泣かな…いで下さ…いよぉ…僕はきっと…死んでも…皆さんの影で居続けますから…。今まで本当に…あり…がとうござい、ます。
皆さん、大好きですよ。
さようなら。』
あぁ。眠くなって来ました。
少しずつぼやけていくみなさんの顔を眺める。
これが死、なのでしょうか?
…まだ生きたかったです。
まだみんなとバスケしたかったです。
まだ夢も叶ってないです。
まだ世界を見てません。
まだキセキの将来を見てません。
まだ、なんですよ。
なにもかも、まだまだまだ!
どうして僕は…死ぬのでしょう?
僕は何かしましたか?
ねぇ?神様…
まだ心残りがあるんです…
死にたくない…
いやだ…いやだ…
さよなら、なんてしたくないのに。
どうして僕は………...
いつもこうなんでしょう。
僕の終わりなんてこんなもんですか?
…皆さんに看取られただけで幸せって思わなきゃだめですよね。
HAPPYエンドかBADエンドかなんて、僕の気分次第、ですか。
では誰もが望む幸せを願いましょうか。
影の僕が望む幸せな終わり。
それはやはりキセキの皆さんの影であること。
いつも通りですね。
それでは笑顔でいきましょうか。
…さようなら。
僕の望んだ未来。
。。。。。。。。。。
黒こっちがさようならって言った。
本当は嫌なはずなのに。
また俺らに無理した言葉を見せた。
黒こっちの目からはまだ、涙が流れ続けていて。
そして…笑顔を見せた。
そのすぐ後に、ピーーーと高い音が鳴った。
医者が直ぐ来たけど…
「ご臨終です」
ってだけだった。
黒こっちの笑顔、良い笑顔だなぁって思った。
でも同時に死にたく無かったんだろうなって、嫌だっただろうなって色んな感情がぐちゃぐちゃ出てきて……、
俺らキセキは皆泣いた。
…死なないで、死なないで、そう言い続けた。
でも黒こっちの葬式は驚くほど早く始まって、驚くほど早く終わってしまった。
止まることなく時間は進む。
そんな中で俺らは黒こっちの存在を忘れることは無かった。
これから先、ずっと黒こっちを好きで居続けると思う。
俺らのたった一人の影の事を。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 20